Case 38 トラブルは 相手に言わず SNS/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~
謝るだけでなく、文句を言うのも面と向かわずSNS。前回と同じ言葉で言います。なぜTwitterで? みんな読むのに。
SNSを使って、そっぽを向いてケンカを売る
前回、わたしに直接でなく、Twitterでなんとなく謝ってくるユカのエピソードを書きました。
これはまるでそっぽを向いてひとりごとを言うような謝り方ですが、このところSNSがらみで起こる事件を見ていると、腹を立てたその場では相手とやりあわずSNSで不平不満を公開するという、そっぽを向いてケンカ売っているようなパターンが目につきます。
不満を持つ相手に向かって発信してSNS上でケンカをするという行動とはちがいます。あくまで自分のフォロワーやその他大勢に向けて自分の意見を発信したものという態度で、「お前にいってねーし」とばかりに、批判する相手の反応に対して責任のがれしているのが、そっぽを向いてケンカを売っている状態です。
相手と対話してみる段階をふまず、まず自分のまわりで騒ぎを大きくする大人たちを子どもはどう見るのでしょう。これが大人の作法と思われないことを祈ります。
「聞こえよがし」にうってつけのSNS
相手に直接意見するのは、うまく伝わって問題解決すればいいですが、反論されたり嫌がられたりとなにかと面倒がともなうものです。学校や会社など、はっきりした力関係があれば、弱い立場のほうは意見したくてもあとあとを考えてあきらめてしまうこともあるでしょう。そのストレス解消に、不平不満をネットに書きこみたくなる気持ちは理解できなくもありません。
一方で、悪口、不満、問題提起、それらを伝えるべき相手ではなく、不特定多数が見るSNSに書いてしまうという行動には、じかに相手に言うのは避けたいけれど、自分の不満を相手に知らせてしまいたい気持ちがあるように思えます。
「聞こえよがし」という言葉があるくらい、昔からよくあるやり方ではありますが、この言葉にいいニュアンスはありません。
匿名でも発信できる、「あなたに言ったんじゃない」と言い逃れできる、同調する人が出てくる、反論を受けつけないですむ。そんなSNSは、たしかに聞こえよがし向きのツールです。うまくいけば、その不満や問題がどこからか相手に伝わり、相手が変わってくれて、自分が表に立つことなく解決されるかもしれません。
でもトラブルを避けて、他力本願的に自分の意見が通るのを待つのはどうなのでしょう。
他力本願では子どもは成長できない
SNSにより、わたしたちは個人で世界へと問題提起したり、広く助けを求めたりできる力を手に入れました。同時に、面と向かわずSNSに書くという方法を安易にとれるようにもなりました。
子どもたちは、昔にくらべ意見や感情が直接ぶつかることに敏感になっています。でも、人とぶつからない楽な解決法としてSNSで聞こえよがしの文句を流すことばかり選んでいると、リアルとSNSの行動がねじれてしまい、ふたつの顔で相手と付き合うことになってしまいます。
なによりほんとうに問題解決したいときに、これは頼りになる方法とは言えません。他力本願は、大きく言えば自分の人生を他人まかせにすることなのです。
子どもたちには、SNSから離れ、他人に直接意見を伝え、生の反応を感じ、相手とやりとりして、自分で問題解決する経験が必要です。
もしお子さんが親子関係の不平不満をこっそりSNSでグチっているようすなら、いちどひざを突き合わせて
「なにが不満でどうすれば解決すると思うか、ここでわたしにプレゼンしてごらん」
と誘ってみてはどうでしょうか。他人相手にはハードルが高い生の議論を体験させるのも、SNS時代の親の役割なのかもしれません。
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