Case 41 だまっていたら、わからない/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~
ひと声かければいい場面で、ただだまってまわりの人を押している人の姿を見て、首をかしげてしまった満員電車です。
なんでひと声かけないのかな
先日、ラッシュで身動きがとれないほどすし詰めの電車に乗ったとき、気になる光景をふたつ、目にしました。
ひとつは電車から降りられない人です。開いたドアの前で動かない人をどかそうと、からだ全体で押しているうちにホームから乗客が乗りはじめてしまいました。その人は結局、みな乗り終わったあとにあらためて人を押しのけて無言で降りて行きました。
ふたつめは、その電車に乗ってからのこと。駅に着くと、となりの人がわたしを無言で押しはじめたのです。押されてもぎゅうぎゅう詰めで動けないので、わたしはその人に聞きました。
「降りますか?」
すると答えは、
「降りられるのかなあ?」
わたしがドアのほうに立つ人に「降りる人がいます」と声をかけると、みな少しずつ場所をあけてくれて、その人は無言で降りて行きました。
二人とも若い女性(大学生から20代前半でしょうか)で、恥ずかしくて声を出せないわけでなく、降りたいとまわりに伝えてどいてもらうことを思いつかないように見えました。「降ります」で済むのに無言で他人を押すだけ。他人どうしがよりストレスなく同じ場所を共有するための行動が、スマホ世代にはピンときていないのではないかと心配になりました。
つながる相手はスマホのなか、それ以外は関係ない人?
いままでも「ユカの事件簿」では、知らない人からの電話がこわい、待ちあわせ場所を決めない、5W1HのないLINEを送ってくる……など、ケータイ・スマホ世代の娘のユカ周辺の常識とわたしの常識のギャップをとり上げてきました。どれもが半分笑い話のようですが、ユカ世代の常識の延長に、目の前の相手に対して自分の口で意志を伝えないふるまいがあるようにわたしには思えるのです。
ユカ世代は、電車など公共の空間でも目の前の人よりスマホのなかのほうにつながりを感じていて、目の前の相手はコミュニケーションの対象外になりがちなのかもしれません。今回はスマホを使えないほどの混雑でしたが、もし使える状況ならば、目の前の人に「降ります」と言わない彼女たちも、Twitterには「前の人が動かなくて電車を降りられない!」と気軽につぶやくにちがいありません。
そう考えると、わたしの質問「降りますか?」の答えになっていない「降りられるのかなあ?」という返事も、ツイートっぽいですね。だれに向けて発していたのでしょう……。
SNSの外側で
さて、近年は子どもの安全のため「知らない大人からあいさつされても返事をしないように」と教えるむきもあるくらいで、子どもが自分と関係のない他者と対話する機会は減り、SNSなどで仲間とだけやりとりすることが増えています。あらためて公共の場でのコミュニケーションについて、家庭や学校で意識して教えることが大切になるでしょう。普通に生活していれば身につくはず、という過信は禁物のようです。
しかし、スマホで育った子どもたちは、
「知らない人に声かけるのとかマジ無理。声じゃなくてスマホでメッセージを送りたい」
と言い出しそうではありませんか? そのうち、目の前の相手に、メールアドレスやLINEのIDを知らなくてもメッセージを送れる機能がスマホに付いて、声をかけるかわりにそれを使うのが主流になったりして……。
そんな未来にそなえて、わたしもつねにスマホの最新機種を使えるようにして、高齢者になったとき「おばあさん、座る?」というメッセージを逃さないようにしなくては。
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