中学生になる前に、快適な子ども部屋をつくろう!【その3】
前回、教育クリエイターの陰山英男先生に、わが家の子ども部屋をチェックしていただきましたが、今回は陰山先生の考える小中学生の「理想の子ども部屋」について聞きます。
理想の子ども部屋とは、ひとりでいても落ち着く空間であること
――子ども部屋をつくるタイミングはいつごろが良いのでしょうか。
陰山先生:小学校低学年のうちは、リビングの一部を子ども部屋として使うリビング学習をおすすめしています。親が子どもの学習相談にのれるうちは、このスタイルで良いと思いますが、たとえば、中学入試のために、親が学習状況を管理しなくなった時期などが、子ども部屋を作るひとつのタイミングになると思います。
――子ども部屋をつくる際に注意することはどんなことでしょう。
陰山先生:いちばん大事なのは、 そこにひとりでいても落ち着く空間であること。あまりにも快適にしてしまうと、子ども部屋から出てこなくなってしまうことも考えられますから、“適度に居心地の良い部屋”ということになります。
――“適度に居心地のよい部屋”とはどんな部屋でしょうか。
陰山先生:まず、“音”が大事です。有害な音ではなく、良質な音が入ってくる環境が望ましいですね。わたしは、いま滋賀県に住んでいますが、部屋の中にいても、セミの鳴き声や鈴虫の鳴き声が聞こえてきて、とても心地良いです。
都心部にお住まいの方は、虫の鳴き声を聞く環境ではないかもしれませんが、たとえば、音が反響してしまうような子ども部屋は、心地良いとはいえません。部屋の中のものが極端に少ないと、音が反響して、高域な刺激的な音になってしまいます。そんなときは、本棚を置くなどして、音が反響しないようにすると良いでしょう。もしこれから家を建てるというご家庭では、吸音材を使用するのもおすすめです。
解放感や広がりを感じさせる工夫を
――ものが少なすぎるのも良くないとは意外でした。ほかに気をつけることはありますか?
陰山先生:“抜け感”でしょうか。どうしても勉強は疲れるものですから、子どもたちが、ある種の解放感や広がりを感じられると良いと思います。それには、部屋に窓があるといちばん良いのですが、窓がない場合には、壁に貼るものや棚に置くものを工夫することで“抜け感”をつくることができます。
――色づかいも気をつけたほうがいいのでしょうか。
陰山先生:そうですね。壁の色は、真っ白よりも、やや赤みや黄みがかった暖色系が良いと思います。集中を促すためには水色などの寒色系が良いといわれていますが、なんとなく冷たい感じがしますよね。集中力をつける前に、まずは子どもが心地良いと感じることを優先させるべきだと思います。
――ポスターやステッカーなどを貼るのはどうでしょう。
陰山先生:壁にかざるものも、ひとつ間違えると圧迫感が出てしまい、気持ちが雑然としてきます。おすすめなのは、“心地よく知的であるもの”。以前、シアトルを訪れた際、宇宙や古代の地球のようすなどが描かれた地図を見つけて、すごく良いなと思いました。知的で、デザイン的にもとても優れていました。見たことや行ったことのない風景や場所は、子どもたちに将来の夢をいだかせ、未来を広げてくれます。
しかし日本では、残念ながらそういったインテリア性が高いものが少ないので、「リビング学習用ウォールステッカー」を監修しました。こちらも参考にしてみてください。
※リビング学習用ウォールステッカー
――子どもたちが夢を持てるようなアイテム選びが重要ということですね。子ども部屋の必須アイテムである机を選ぶ際の注意点はありますか?
陰山先生:机は横長がおすすめです。奥行のある机だと、奥のものをとろうとして姿勢がくずれてしまいますが、横に手を伸ばす分にはそれほどくずれることはありません。学習に集中するためには姿勢がくずれないことが大事ですから。
――なるほど、わたしたち親世代は、奥行きのある学習机が主流でしたが、横長の机も増えてきていますね。
陰山先生:横長だと、机を棚のように使うこともできます。部屋の配置を考えると、横長のほうが、デッドスペースが少なく、空間の有効活用ができるんです。広さを感じられるということは、子どもが心地良く感じられるということにもつながります。同じ木目でも、濃い色だと重く感じてしまうので、ナチュラル系の淡い色が良くと思います。
――ほかに子ども部屋に必要なものはありますか?
陰山先生:時計ですね。子どもがなにかの作業をするときに、どれだけ時間がかかるのかを把握することは、とても重要です。たとえば、本を読むのに5時間かけてしまったらほかのことができませんよね。かといって30分では短かすぎる。じゃあ、1時間と時間を決めて読もうというときに、近くの時計を見て時間を管理します。これは集中力を高める訓練にもなります。ストップウォッチ機能がついているとなお良いですね。
質の良い睡眠が、元気な子を育てる
――勉強や読書の際は、照明器具も大事でしょうか。
陰山先生:照明はとても重要です。これは、子ども部屋だけでなく、ほかの部屋にも共通することなのですが、照明の色が変えられるといいですね。学習するときは、脳を目覚めさせ、活動的にしてくれる昼光色(青白いすっきりとした光)や昼白色(白い自然な光)が良いでしょう。そして、就寝前やリラックスしたいときは、電球色(暖かみのあるオレンジ色の光)で、睡眠の質を落とさないようにします。
わたしも自宅では、仕事中は昼光色、仕事が終わったら電球色に切り替えられるように、ひと部屋に2種類の照明器具をつけています。
これから購入されるなら、小さいLEDの球をいくつも並べた「多灯式LEDライト」がおすすめです。広範囲をムラなく照らしてくれるため、目が疲れにくく、集中することができます。
――照明は睡眠の質にも影響するんですね。良い睡眠は子どもの成長に必要だと聞きますが……。
陰山先生:わたしの実体験からも、睡眠の質が子どもの学力に大きく関わるといえます。しっかり睡眠がとれている子どもは、基本的に元気で、成長しても好奇心を失わず、さまざまなことにチャレンジすることができます。
――睡眠の質は、ベッドも関係してきますよね?
陰山先生:子どものベッドを選ぶ際は、形にこだわるよりもスプリングで選んでほしいと思います。一つひとつが独立したポケットコイルタイプは、体を点で支えるので、自然な体勢で眠ることができます。睡眠は、食事とともに学力を支える源です。睡眠の質を高めるために、ベッドも慎重に選ぶことをおすすめします。
子ども部屋のおもな機能は、「勉強することと眠ることの2つ」と陰山先生はおっしゃいます。集中して勉強し、質のよい睡眠をとるために、音や壁の色、知的アイテムの導入、照明にいたるまでさまざまなアイデアを教えていただきました。
みなさんも、いちばん気になるところから試してみてはいかがでしょうか。