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21世紀型能力は、これからの時代を生き抜くための必須アイテム!?/知っておきたい教育用語のトリセツ【第2回】

21世紀型能力は、これからの時代を生き抜くための必須アイテム!?/知っておきたい教育用語のトリセツ【第2回】

21世紀型能力は、基礎力・思考力・実践力の3層構造になっています。日本の教育改革で目標とされている能力について解説します。

前回、大学入試制度改革をはじめとする、日本の教育改革が進められようとしているということを紹介しました。今回は、その改革で目標とされている21世紀型能力について解説します。

21世紀型能力とは?
これからの社会で求められる資質や能力のこと。日本の教育が目ざす「生きる力」をはぐくむための具体的な方向性として、21世紀に求められる人間の資質・能力を定義したもの。国立教育政策研究所が2013年に整理し、発表しました。これからの学校教育ではぐくむ力の目標とされており、小中学校でも21世紀型能力養成のための取り組みが始まっています。

読み書き計算+情報=基礎力

21世紀型能力とは、グローバル化やICT(情報通信技術)化が今後いっそう進むことを見すえて、将来をになう子どもたちが、生き抜いていくために必要な力、つまり「生きる力」に必要な能力を整理したものです。

21世紀型能力は、基礎力・思考力・実践力の3層構造になっています。

図にあるように、21世紀型能力の土台となるのは、「基礎力」です。昔から「読み書き」や「計算力」といった基本的な学力を身につけることが、学校教育の役割だとされてきました。これは今でも変わりませんが、21世紀型能力では情報を使いこなす力も含めているのが特徴です。

小中学校でタブレットを使った学習が少しずつ広がってきていますが、みなさんの学校ではどうですか? これには、ICTを使い、情報を使いこなす力をやしなうという側面もあるのです。

国立教育政策研究所『教育課程の編成に関する基礎的研究 報告書7「資質や能力の包括的育成に向けた教育課程の基準の原理」』(2014年)

みんなでより良い答えや新しいアイデアを考える力=思考力

一生懸命勉強して、いくらいろいろな知識や技術を身につけても、それだけでは社会では生かせません。身につけた知識や技術をもとにしながら考えること、つまり思考力を育てることが重要です。

思考力は、さまざまな課題を解決するための中心となる能力です。ここでいう思考力とは、一人ひとりが自分の考えを持ちながら他の人と話し合い、考えを比較・吟味してまとめ、より良い答えや新しいアイデアを考え、さらに次に学ぶべきことを見つける力までが含まれています。

考えたことを協力しながら実行する力=実践力

「絵にかいたもち」という言葉がありますが、考えたことは、実行されなければ意味がありません。

とくにこれからは、環境問題やエネルギーの問題、人口問題など、国をまたいでみなで協力しながら解決しなくてはならない課題がたくさんあります。日常生活や社会、環境の中に問題を見つけ出し、自分の知識を総動員して、社会にとって価値のある答えを導くことができる人を育成しなくてはなりません。

そのためには、知識を基盤として考えたことを実践までつなげる力、つまり実践力が必要なのです。これら3つの力は、それぞれがバラバラではなく、関連しながら高め合っていくことができます。

これからの教育のキーワードは探究型の学習

21世紀型能力を身につけるために今、小中学校で導入されはじめているのが探究型の学習です。探求型学習とは、先生が一方的に教えるのではなく、生徒がみんなで協力しながら主体的に学ぶ学習のこと。その中で、自分で考え、表現することを大切にします。

たとえば、低学年であれば、秋を見つけようという授業のテーマにからめて、実際に外に出て季節の変化など、自分の気づきを表現する活動を行なう。高学年では地域のことを調べるだけでなく、自分たちの住んでいる町をもっとよくするために何をすればいいか意見を出し合う、というような授業が探求型の学習の例です。

最近は、パソコンやタブレットを使って調べ学習をすることもあります。そのような授業を通して、基礎力、思考力、実践力をやしなっているのです。21世紀型能力を子どもたちが身につけられるよう、学校教育も進化していくことが求められているのです。

わたしたち親世代は、学んだ知識を当てはめて問題を解くという教育を受けてきました。しかし、今のように変化の激しい社会では、学んだ知識を使って解ける問題は少なく、その知識を使って新しい答えをつくり出す力が必要だということです。

子どもたちがこのような力を身につけるために、家庭でも子ども自身が考える機会をたくさん作りたいですね。

21世紀型能力のポイント

  • 「基礎力」(言語スキル・数量スキル・情報スキル)をもとにしながら、「思考力」を駆使して問題を発見し、自分なりに解決策を見いだし、みなで協力しながら持続可能な未来を作る「実践力」につなげる能力。
  • 人とのかかわりの中で課題を解決できる力など、社会の中で生きる力を育てることをより重視しているのが特徴。

 

参照:

国立教育政策研究所  社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程編成の基本原理
https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/Houkokusho-5.pdf
『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(中曽根陽子著、晶文社)第2章 21世紀型能力は必須アイテム

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中曽根陽子

中曽根陽子

中曽根陽子

教育ジャーナリスト

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイトhttp://www.waiwainet.com/

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