子どもが机に向かうのが楽しくなる!「親子手帳」の魅力を知ろう!
勉強嫌いだった子どもが自ら机に向かうようになると評判の「子ども手帳」。最近では、さらに進化した「親子手帳」を始める親子が多いよう。その魅力を2児の父親でもある、「子ども手帳」「親子手帳」の発案者・石田勝紀さんに聞きました。
自ら勉強する子になる「子ども手帳」
――「親子手帳」ってどういうものですか?
「親子手帳」は、前身である「子ども手帳」をずっと使っているママさんから生まれたアイデアです。「子ども手帳」とシステムは同じで、ママさんのコメントが直筆で入るだけの違いです。それだけでさらに良い結果が得られるので、今回、「みるみる絆が深まる親子手帳」という本にまとめました。
――では、「子ども手帳」について教えてください。
「子ども手帳」は簡単にいうと、「勉強しなさい」と言われなくても、やるべきことが手帳に書いてあるので、子どもが自主的にそれをやりたくなるという仕組みを採り入れたものです。もともとうちの子どもたちとのやり取りの中で、偶然生まれたものなんです。
上の子が小学校2年生、下の子が幼稚園の年中のとき、上の子が毎日嫌そうに宿題のプリントをやっているのを見て「これは教育になっていない」と思ったのがきっかけです。180度ひっくり返して、勉強したいと思って自ら机に向かうようになることを願ってつくりました。
まず子ども2人を文房具屋に連れて行って、好きな手帳をそれぞれ選んでもらいました。まだ、小学生と幼稚園ですから自分の手帳を持つなんてはじめてのこと。「大人みたいに手帳が使える!」と、喜びましたね。
「子ども手帳」は子ども自身に、プリントや宿題などやるべきことを書いてもらいます。家の手伝いなども入れても良いでしょう。できたことを赤線で消して、ポイントを加算していくだけのシンプルなものです。ポイントのルールについては最初に親子で内容を話し合って決めてください。あとから変更するのはトラブルの元になるので、最初に決めることが大事です。わが家はプリントや宿題は1ポイント、手伝いは2ポイント、学校のテストで100点とったらボーナスポイントを3ポイント、そろばんの検定試験に合格したら5ポイントなどと決めました。
そんな感じで始めた「子ども手帳」ですが、その日から面白い現象が起こりました。1枚でもやるのを嫌がっていたプリント ですが、2枚3枚とすすんでやり出したんです。「いや1枚でいい、1枚でいいよ」と言っても、もっとやる。どんどん前向きにやるんですよ。ポイントが欲しいからがんばるんですよね。
――それは最初だけということはないですか? 嫌がっていた勉強でも続くのでしょうか?
人間は不思議なもので、3週間経つと習慣化されるんですよ。歯磨きと同じ、やるのが当たり前になってしまう。努力しないでもやれるものになるんです。気をつけないといけないのは休みの日です。週末も3分でもいいから勉強をやることが大切。手帳にも忘れず書き込みます。途切れず継続すれば、習慣は続きます。
「子ども手帳」で金銭感覚も身につく
――貯まったポイントはどうするのですか?
わが家はそれまでおこづかいをあげていなかったので、貯まったポイントはおこづかいにしました。1ポイント1円です。
お金に換えると聞くと「お金で釣るんですか?」と、抵抗を感じる人も多いと思います。
でも続けるうちに面白いことがわかりました。自分で稼いだものなので、お金を大切にするようになり、無駄遣いをしなくなったんです。お金の価値が実感できるようになるんですよね。
――勉強の習慣だけでなく、金銭感覚も身につくということですか?
そうですね。「子ども手帳」を実践しているお母さんが報告してくれた興味深いエピソードがあります。それまでは無駄遣いをしていたお子さんが200円のガチャガチャ(カプセルトイ)を買うかどうか悩んだ末、「200ポイント貯めるの大変なんだよね」と、買わなかったそうです。これってすごいことで、価値の等価交換をしているんです。働いている大人と同じようにお金の価値をわかっているので、お金を大切にするんですね。
――まだお金には触れさせたくないという家庭の場合はどうしたらいいですか?
「子ども手帳」はたくさんのお子さんが実践していますが、家庭によって教育方針はさまざまです。なので、わたしは無理にお金にしなくていいと思っています。ポイントだけで終わってもいいですし、ポイントすらなくて赤線で消し込みするだけで”見える化”することでモチベーションがあがるので、どのように使っても自由です。
――評判の「子ども手帳」ですが、ほかに良い点はありますか?
続けているうちに、もうひとつ予想外の現象がありました。これも多くのお子さんに起こっているものですが、最初はポイントのためにやっていたのに、いつしかやること自体が楽しくなるんです。
最初のうちは、心理学的用語でいうと”外発的動機付け”といって、報酬を外から与えられることによってやる気が出ます。反対が内発、これは自分の好奇心。好奇心を持ってやるようになる。教育学的にも内発的が良いとされていますよね。「子ども手帳」の場合は、ポイントを貯めるためとはいえ、毎日やっているからできるようになり、それをほめられますよね。勉強を続けることでテストの点数も上がります。そうすると勉強自体が面白くなりだすんですよ。こうなったらポイントを換金するのをやめて、おこづかい制にしても良いでしょう。
中学生以上になってくると、中間・期末テストというゴールが設定されるから毎日のポイントすらいらなくなります。「子ども手帳」の項目を赤で消すことが、テストの点数アップにつながるので、ポイントという報酬はいらないんです。
親子関係がより良いものになる「親子手帳」
――「子ども手帳」がどう進化して「親子手帳」ができたのでしょうか?
「子ども手帳」に簡単なコメントを書いてあげたら、さらに一生懸命やるようになったという、働いているお母さんからのレポートがきっかけです。
勉強を習慣化させるために始めた手帳が、もしかしたら親子関係をもっと強くしていくものになるのではと思ったんです。とくに働いていると子どもと接する時間が短いから、子どもに対して理由のわからない罪悪感を持つ人が多い。それをなくすために、1週間に1度でもいいのでコメントを入れるようにしてはどうだろうかと。コメントを入れてもらうところまでの仕組みを作って、みなさんに実践してもらいました。
その結果、親のコメントがある手帳とない手帳では、子どものモチベーションが驚くほど違いました。毎日顔を合わせているのに、不思議ですよね。ちょこっと書き込む1行ぐらいの短いメッセージ、それを楽しみにするいじらしさが子どもにはあるんです。
――どんなことを書き込めば良いでしょうか?
これは注意していただきたいのですが、書き込むコメントは、ポジティブな内容だけにしてほしいです。子どもが書いてもらってうれしいことを書く。そうすると親は子どもの良いところを探そうとします。勉強やってない、部屋を散らかすなど、今まで悪いところしか見ていなかったとしても、そうすると視点が変わりますよね。物事をプラス、肯定的に見られるわけです。親がそうなると子どもも変わります。親子関係がより良いものになる、そんな効果もあったんです。
――続かない場合は何か対処法がありますか?
お子さんがモチベーションを上げる環境を整えてください。たとえば、シールが好きで集めている子には、できたらシールを貼るようにすると良いでしょう。「親子手帳」は、親子で楽しんでやるのがキーワードですから、お子さんの好みに合わせてルールを決めてください。
設定する項目に無理があっても達成できず長続きしません。まずは、できない「プリント5枚」よりも、できる「プリント1枚」でいいんですよ。できるようになったら、お子さんが自分で「もっとやりたい」と言い出すでしょう。あとは目標を設定してあげるのも効果があります。中学生になると中間・期末テストがありますが、小学生なら、たとえば漢字ドリルなら漢字検定を目標にするなど、親子で話し合って決めてください。目に見える目標を設定すると人間はがんばれるものなのです。
――どのタイミングで始めるのがベストですか?
とくにベストのタイミングはありません。やりたいと思ったときに始めてください。ただ、年齢的なことでいえば、字が書けるようになったら始めてOK。あとは、自分でポイントを計算するので足し算も必要ですね。見ていると、上の子がやったら下の子も「ぼくも! わたしも!」と始めるケースが多いようです。兄弟で、点数などを競い合ったりして楽しんでやっていますね。
お母さんに手帳をつける習慣がない場合は、親子でいっしょに始める人も多いようです。自分の分と子どもの分を2冊買って帰る。そういった意味でも親子で共通の話題が持てて、会話がはずむと思います。
――発売されたばかりの「みるみる絆が深まる親子手帳」はどんな本ですか?
「親子手帳」は、仕組み自体はシンプルなのに、なぜか成果が出る。そのあたりの仕組みと気をつけるべき細かいノウハウや、みなさんの実例を紹介しているので、これから始めてみようと思う方の参考になるのではないでしょうか。
小学校から高校3年生までは、生活の大半が勉強です。だから、勉強は面白くないと惰性でやるよりも、楽しんでやった方が、将来に対して希望が生まれます。「親子手帳」が、その第一歩になればうれしいですね。
(まとめ 内藤真左子)