中学生の歯科矯正体験記【第1回】歯科矯正は、いつから始めるのが正解!?
娘(中1)が小学生のころ、4月の歯科検診で毎年指摘されていたのが歯列の乱れ。右の前歯が1本、わずかに前に出ているのです。本人が気にしなければそのままで良い気もしますが、周りに歯列矯正を始めた友だちが増えてきた5年生ごろから、「矯正、いつから始めるの?」とわたしに聞いてくるようになりました。
毎年診てくれている主治医の歯医者さんからは、
「矯正をするなら、永久歯が生えそろう12歳前後からでいいと思うよ」
と言われていました。
その理由は、子どもの場合は歯の生え替わりやあごの成長過程によって、矯正が必要かどうか変わってくる可能性があるためだそう。
そして、「子どもの矯正は、いつから始めてもゴールは14歳。矯正歯科に行けばすぐに矯正を勧められると思うけど、一度装置をつけると、調節料が毎月5千円ぐらいかかる」そうです。
矯正歯科は何を基準にさがせばいい?
娘の場合は、残り1本の乳歯がグラついてきた中1の1学期の終業式の日に、主治医の歯医者さんに矯正の相談に行きました。先生は虫歯の有無をチェックしたあと「矯正治療は一般の歯科医もできるけれど、経験豊富な専門医にしてもらったほうが安心ですよ」と教えてくれました。
矯正歯科の選び方については「子どもが歯列矯正をしているという人に評判を聞いたり、インターネットで医院を調べて相談に行くのがおすすめ」とのこと。ここぞという医院が見つからなければ、先生が信頼する矯正歯科を紹介することもできる、と言ってくれました。
さっそくインターネットで調べると、最寄り駅周辺に少なくとも5つの矯正歯科医院があり、矯正治療の種類も、一般的な「ワイヤー矯正(ブラケット矯正)」以外に、透明なマウスピースを付け替えながら歯を動かす「マウスピース矯正」があることがわかりました。
各医院の矯正料金は、ざっと見積もって100万円前後から200万円程度。医院によって差があるのは、一般的な矯正治療は保険がきかない自由診療のため、それぞれの医院の料金体系や設備、取り扱い装置などによって治療費に違いが出てくるのだそうです。
主治医が紹介してくれるという矯正歯科は、最寄り駅から電車で15分の場所にあります。ホームページに矯正治療の手順と料金が明記されていて、費用も全部で100万円前後で収まりそうでした。
次に、周りのお母さんたちにリサーチすると、4人中2人が、地域で人気らしいマウスピース矯正を行う医院に子どもを通わせていました。選んだ理由は、「先生の治療方針がわたしの考え方と合っていたから」「料金はMAXだけど、カウンセリングをしっかりしてくれる専門医にかけた」とのこと。そのうち1人のお母さんは、三姉妹ともそこに通わせ、高校生のお姉ちゃんの歯並びはとてもキレイになったと喜んでいました。
ですが娘の場合、自分で取り外しができるマウスピース矯正を根気強く続けられるかどうかに不安があったのと、MAXレベルの料金が、漠然と考えていた予算をオーバーしていたため、「腕がよく、人間的にも信頼できて、料金も常識的」と主治医が太鼓判を押すその矯正歯科に相談に行くことにしました。
初診で指摘された娘のあるクセ
初回相談の予約がとれたのは、2週間以上先の8月12日。 紹介状があるとなにかとスムーズに進むと聞いて、主治医の紹介状を持参しました。
矯正治療の初診は、矯正相談です。娘が顔正面と横顔、口腔内のデジカメ撮影をしてもらっている間に、わたしは3枚のアンケート用紙に回答を記入。本人の健康状態や鼻・咽頭の病気歴、家族の歯並び、口で息をするクセの有無や、しにくい発音はあるか、本人の性格上の傾向や矯正の希望など、質問は多岐にわたっていました。
その回答内容と写真をもとにした矯正相談で、“歯に力を加えると歯が動く”という性質を利用した矯正治療の原理と、デジカメ写真からわかる娘の歯列の状況と治療計画について先生から説明を受けました。
先生いわく、子どもの矯正の始めどきは、前歯から数えて7番目の歯(12歳くらいに出てくる)が生えそろったころ。ワイヤーで歯を動かして整列させるための「動的治療」を約2年~2年半したあと、歯が元に戻ろうとする「後戻り」を防ぎ、きれいに並んだ状態に固定する「保定治療」が2年以上必要だそうです。
保定期間も含めると、治療は最短でも約4年かかります。
先生がとくに念押ししたのは2点で、1つめは動的治療で歯並びがきれいになってもそこで矯正治療は完了ではなく、歯は元に戻ろうとすること。「後戻り」を防ぐため、外から見えないように裏側を長期間(約1年~半永久的)固定する場合もあるそうです。
2つめは子どもの意思と協力の姿勢です。圧力のかかる矯正装置を四六時中装着するのはストレスになるし、装置に食べかすがはさまりやすいので飲食のあとは念入りな歯磨きもしなければなりません。矯正はしたいと思っていても、それを毎日続けるには本人の強い意思が必要なのです。
もしワイヤーの装置をつけた状態で歯磨きを怠っていると、接着剤で装置がくっついている歯の中央部分以外が虫歯で次第に黄色くなり、装置をはずしたときに歯の中央だけが白いままという状態になることも。実際にそうなってしまった子の歯の写真を見て、娘もぎょっとしていました。
そんなふうにならないためにも、歯磨きは毎回5分、装置をつけてからは毎回10分。夏場の部活練習で、スポーツドリンクを飲んだあとも口をゆすぐか水を飲むよう注意が必要です。
それと娘の場合、緊張すると下唇をぐいっとひきこむ「下口唇噛み(かこうしんかみ)」というクセがあることを指摘されました。約1時間のカウンセリング中、娘が何度か口を引き結んでいることに先生が気づいたのです。娘は無意識ですが、言われてみると中学の三者面談のときにもやっていた覚えが。娘も心当たりがあるようで、「緊張するとそうなる」と話していました。
「下口唇噛み」がクセになると徐々に前歯を押し出し、歯が動きやすい矯正治療中にそれをやると、せっかくきれいに整列した歯もまた前に出てしまうそう。ここでもクセを直そうという本人の意思と、気づいたらすぐに指摘する家族の協力が必要だと言われました。
それらを踏まえて、矯正をするかどうかもう一度家族で話し合い、本人と家族の意思が揺るがなければ次回、精密検査に進むことになりました。初診料金は、デジカメ撮影と約1時間の矯正相談、治療計画説明で2160円でした。
矯正をする? しない? 娘が出した結論は……
一応、次回の予約を取って帰宅後、先生の話を神妙に聞いていた娘に意思確認をすると、
「(それでも)やりたい」
と心はゆるがず。
緊張すると無意識にやってしまう「下口唇噛み」は、香りのするリップクリームを常に塗ることで、下唇を噛まないように意識することにしました。
そして翌朝。登校後に娘の勉強机の上に1枚のメモがあり、「?」と思って見ると、
「① リップクリームをつねにぬる! ②下くちびるをかまない!」
など、矯正するにあたっての注意事項が書かれていました。
⑤の「鼻で息をする!!」というのは、口呼吸で口が開いていると舌の位置が低くなり、歯列の乱れの原因になったり、唾液が蒸発することで虫歯のリスクが高まると先生に聞いたからです。
うん、これなら大丈夫!……かな?
そう思った母でした。
~第2回に続く~