子どもの話を最後まで聴いていますか?/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素【第5回】
シリーズ『AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素』では、子育てにおいて、どんな時代でも変わらず必要なこと、そして、AI時代に必要な技術や能力の育て方を、6つのカテゴリーに分けて、最新の学術研究などをもとに紹介します。今回は連載5回目です。
子どもは、忙しいときに限って話しかけてくる
「子どもの自尊感情を高めるための親のかかわり方」の回で、「子どものありのままを受けとめよう」という話をしました。お父さん、お母さんが自分のことを受けとめてくれると感じられると、子どもは安心して自分の力を発揮することができるようになるからです。
では、子どもが自分の気持ちを受けとめてもらえたと感じられるのは、どんなときでしょうか? 実は、子どもの話を「聴く」ということと関係があるのです。
みなさんは、普段お子さんの話を聴いていますか? この質問に、あるお母さんは、「最初は聞こうとしているんですけれど、子どもの話は要領を得なくて……。イライラしちゃって、つい話をさえぎって、『だからなんなの?』って怒ってしまいます」と言っていました。
そうですよね。子どもの話って、あっちへいったり、こっちへいったり、要領を得ないことが多いですよね。わかります。しかも、こっちが忙しいときに限って、まとわりついて話しかけてきたり……。そんなときは、余計イライラしますよね。わかります。わたしもかつては、そんな親でした。
でも、ある時期に、子どもとのコミュニケーションに悩んでコーチングを学んだことで、ずいぶん子どもとの会話が弾むようになりました。
コミュニケーションの基本は聴くこと
コーチングとは、相手の目標達成をサポートするコミュニケーション術とでも言えばいいでしょうか。コーチングの大前提は、答えはその人自身が持っていると信じること。そして、基本中の基本のスキルとして、「相手の思いを知るために、話をよく聴く」ということがあります。
最初にこのことを習ったときに、わたしは目からうろこでした。コミュニケーションなので話し方を学ぶのかと思ったのですが、大事なのは聴くことだというのですから。わたしは、半信半疑ながら、とにかく子どもの話をさえぎらないで、最後まで聴いてみようと決めて家に帰りました。
その晩、偶然子どもが「明日学校にいきたくない」というのです。それまでのわたしだったら、「どうしたの? なにがあったの?」と問い詰めがちでしたが、その晩はまず習った通りに、「学校にいきたくないんだ」と繰り返してから、なにも言わず、ただ相づちをうちながら子どもの話を聴いていました。
すると子どもは、ポツリポツリと、部活でのトラブルについて話し始めました。途中で「こうすればいいんじゃない」とアドバイスしたくなる気持ちを抑えて、じっと聴いていたら、不思議なことに、「明日もう一度みんなと話してみよう」と言ってすっきりした顔をして部屋に帰っていくではありませんか。
もし、このときに、根掘り葉掘り聞きだそうとしたり、「そんなことでどうす
るの」とはげましたりしていたら、はたして「明日もう一度みんなと話してみよう」という結論になったでしょうか。このときにわたしは、「子どもは自分の中に答えを持っている」ということに気づいたのです。
心の声を「聴く」
ここまで「聴く」と「聞く」という漢字をつかいわけてきましたが、この違いはなんでしょうか?
「聞く」は、単純に音が耳に入るといった意味での「きく」。一方、「聴く」は、字の通り、心の声を「きく」のです。
とくにちょっとドキッとするような言葉だったり、こちらに余裕がなかったりすると、子どもの話を最後まで聴くというのはなかなか難しいものです。
でも、話を聴いてもらえた、受けとめてもらえたと感じると、それだけで子どもは満足して、問題が解決してしまうこともあります。
子どもとの信頼関係を深めるためにも、まずは、子どもの話をさえぎらず、子どもの心の声に耳を傾けて、聴いてみませんか?
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