ぼーっとしている時間に頭は育つ/AI時代を生き抜くために「失敗力」を育てる6つの栄養素【第13回】
ぼーっとしている時間のほうが、脳の活動が盛んになるということがわかっています。つめこみすぎは逆効果。一度、お子さんのスケジュールを見直してはいかがでしょうか?シリーズ『AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素』の第13回目です。
スポーツや音楽より勉強をしてほしい親が増えている
みなさんのお子さんは、なにか習いごとをしていますか?
「学校外教育活動に関する調査2017」※1によると、小学生の約8割が、なんらかの習いごとに通っているそうです。習い事の種類としては、スポーツ活動では「スイミング」、芸術系では「楽器のレッスン」が人気ナンバー1。これらは、昔から変わらない定番です。その一方で、「スポーツや音楽、芸術活動をするよりももっと勉強をしてほしい」と考える親も増えているようで、とくに幼児の親にその傾向が顕著になっています。
最近は、学習塾に加えて、英語やプログラミング、実験教室などにも関心が集まっています。いくつかの習いごとをかけもちする子どもが多く、なかにはほぼ毎日なんらかの習いごとが入っていたり、1日のうちに習いごとのかけもちをしたりというケースも見られます。
習いごとのかけもちで疲れている子どもたち
では、習いごとをしている子どもたちはどう感じているのでしょうか?
子どもたちを受け入れる側の習いごとの先生からは、「親に言われて来ているけれど、子どもたちは忙しくて疲れている」「スケジュールをこなすだけで精一杯になっていて、集中できていない」といった声も聞こえてきます。
実際、小学生ママの実感として、小学生の 4 人に 1 人が疲れていると感じているという調査結果※2もあり、その理由として「勉強や習い事が多い」がトップにあがっています。
習いごとが多すぎて、子どもも疲れていそうだと実感しているのに、やめさせないのはなぜなのでしょうね。
理由の1つとして、変化が激しく将来の先行きが見えにくい社会のなかで、親が漠然と子どもの将来に不安をもち、少しでも良い教育を与えたいという思いが強くなっているからかもしれません。また最近は、共働きも増えていて、放課後の預け先として、習いごとをかけもちするケースも多いようです。わたしが取材したあるママは、「遊びが中心の学童はお金がもったいないから、同じお金をかけるなら、習いごとにいってもらいたい」と言います。
ぼーっとしている時間に、脳が活性化
でも、いろいろなことを詰め込んで、はたして効果はあるのでしょうか? 実は、脳科学の研究で、ぼーっとしている時間のほうが、脳の活動が盛んになるということがわかっています。
これまでは、意識的に頭を使っているときだけ脳が活動し、なにもせずぼんやりしているときには、休んでいると考えられてきました。でも、実際はなにもしないときにも脳はいつでも動けるように、車でいうアイドリング状態を保っていて、そのときに使っているエネルギーは、意識的に頭を使っているときの20倍にも達するということがわかってきました。
これをデフォルト・モード・ネットワークといい、「感情」や「運動」「記憶」などをつないで束ねる役割を果たしています。そして、このネットワークが、脳の中に散らばる「記憶の断片」をつなぎ合わせ、ときに思わぬ「ひらめき」を生み出しているのではとも言われています。※3
親から見ると、子どもがなにもしないでぼーっとしている様子を見たら、「ごろごろしていないで、勉強しなさい」と言ったり、つい予定を入れたりしがちですが、こんなときこそ、デフォルト・モード・ネットワークが働いている時間。子どもの頭の中では、画期的なアイデアが浮かんでいるかもしれないのです。創造性が重視されるいま、一見無駄のように思える時間が、子どもの成長にとって、とても大事な時間なのかもしれません。
せっかくの習いごとも、ぼーっとする暇もないくらい詰め込みすぎると、逆効果になってしまいかねません。一度、お子さんのスケジュールを見直してみませんか。
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