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からだを使った遊びが、子どもの脳を育てる/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素【第7回】

からだを使った遊びが、子どもの脳を育てる/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素【第7回】

シリーズ『AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素』では、子育てにおいて、どんな時代でも変わらず必要なこと、そして、AI時代に必要な技術や能力の育て方を、6つのカテゴリーに分けて、最新の学術研究などをもとに紹介します。今回は連載7回目です。

運動ができる子どもは勉強もできる

文部科学省が1916年から毎年行なっている「体力・運動能力調査」によると、いまの子どもたちは、親世代よりからだは大きくなっているけれど、運動能力は低下しているという結果が出ています。

栄養状態がよくなって、からだは大きくなっているけれど、そのからだをじょうずに使うことができず、ちょっと転んだだけで骨折など大けがになってしまう子が増えているという話もよく耳にします。みなさんのお子さんはどうですか?

その背景には、子どもたちが安心して遊べる場所が減っているので、からだを動かす機会も少なくなっていることの影響があると言われています。また、小さいころからどこへ行くにも車やベビーカーに乗せてしまって子どもを歩かせないとか、塾や習い事などで忙しくて、遊ぶ時間が取れないということもありますね。それに、わたしたち親はついつい「遊んでばかりいないで、勉強しなさい!」と言いがちで、どこかで、遊びを勉強より下にみる傾向はないでしょうか?

しかし、実は運動ができる子は勉強もできるのです。実際、文科省の小中学校の全国都道府県学力テストの結果と体力・運動能力の調査結果を重ねると、運動ができる子どもは勉強もできるという結果が出ています。

また、アメリカの調査で、0時限目(朝の課外活動)に体育を行なうようになった学校では、学習効果が上がり、成績が向上したという報告もあります。このように最新の研究で、運動が学習効果を上げることが分かってきました。

九九の計算もキャッチボールも同じ脳の動き

みなさんは、「勉強はあたまで」「運動はからだで」と考えていませんか? でも実は、勉強も運動も同じ場所が動作をつかさどっています。それは「脳」です。スポーツでは、「からだで覚える」という表現をよく使うので勘違いしがちですが、ボールを投げるときに筋肉が考えている訳ではなく、あたまが考えて手足が動くのです。ですからからだを動かす司令塔は、あたま。つまり脳なのです。考えてみれば、そうですよね。

しかも、脳の働きから見たら運動も勉強も同じことで、かけ算の九九とキャッチボールは、どちらも繰り返し練習して脳の中の神経回路に指令が伝わる道筋ができることで身につくのだそうです。たとえば、利き手は同じ動作を何度もやってきたかどうかで決まり、両方を同じように使えば、どちらも同じように使えるようになるのだそうです。運動ができる子は、勉強もできるというのは、運動をすることで神経回路がしっかりと発達するからなのですね。

「うちの子は運動神経が悪いから」という人がいますが、できるようになるまでやることが肝心だということでしょう。ぜひ、勉強だけでなく、運動も大事にしてください。

親子でいっしょに遊ぼう

でも、運動に苦手意識があるお子さんもいますよね。そんなお子さんにはまず、「からだを動かすって楽しい」という経験をさせることが大切です。子どもは、簡単にできることには飽きてしまうし、あまりにも難しそうなことにはなかなか興味を持てないものです。ですから「ちょっとがんばればできるようになるかも」と思えることを親子でいっしょにやって、「できるようになるって楽しい」という体験を積みあげるといいでしょう。

また、新しい動作を習ったら家で復習すると良いのです。学校で新しいことを習ったら、家で宿題をやって復習しますよね。運動も同じで、たとえば、「今日の体育はどんなことやったの? お母さんにも教えて」などと聞きながら、家でも練習すれば新しい動作が身についていきます。

わたしも、子どもが小学生のころ、休みの日に公園でうんていや逆上がりの練習をしたり、なわとび大会の前にいっしょになわとびをしたりしました。これは、いまでもいい思い出になっています。子どもにとっては、お父さんやお母さんがいっしょにやってくれるというのはうれしいものですし、親も、子どもといっしょに遊べば、体力がつくし、ダイエットにもなりますね。

わたしたち人間は生物です。AIが台頭する時代に人間にしかできない力を育てるためにも、勉強ももちろん大事ですがまずはしっかりとしたからだを作ることが大切です。遊びには、運動神経を伸ばす以外にも、体力、発想力、コニュニケーション能力、考える力などを伸ばす効果もあります。とくに一生の中でもっとも神経系が発達するゴールデンエイジ(3歳~11歳ごろ)には、できるだけからだを使って遊ぶ機会をつくってあげてください。それが、勉強もできる子になる早道です。

運動が脳をきたえる

参考文献:

  • 『運動も勉強もできる脳を育てる 「運脳神経」のつくり方』(ラウンドフラット)深代千之著
  • 『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(NHK出版)ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン著

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中曽根陽子

中曽根陽子

中曽根陽子

教育ジャーナリスト

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイトhttp://www.waiwainet.com/

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