生命保険・損害保険・企業年金などの金融分野で、保険料や保険金などを計算する数理業務の専門家。
こんな人にピッタリ!
なぜそうなるのかを数字や記号を使って論理的に説明することに関心があり、数学・計算が得意な人。統計データなどの情報を読み取る能力や計算結果をわかりやすく説明するコミュニケーション能力も必要。
どんな仕事?
確率や統計など数理的な知識や技術で保険や年金の制度を支える
アクチュアリーは、主に保険会社で働く数理業務の専門家で、「保険数理士・保険計理人」とも呼ばれる。「数理」とは、数学(算数を発展させた中学校から習う学問)を使ってさまざまな出来事を理論的に解明する方法のこと。たとえば生命保険会社が「ガン保険」や「死亡保険」などの保険商品を開発するとき、アクチュアリーは、ガンになる確率、それで死亡する率、経済動向の統計などをもとにして商品の収支を予測し、適正な保険料や保険金の額を計算する。損害保険会社でも、同じようにして「自動車保険」や「火災保険」などの商品開発に関わる。また、会社が社員に給付する「企業年金」の制度設計や健全に運用するための財政も検証する。さらに、将来の出来事を予測する方法を活用して、会社の経営損失の危険性を予測したり、資産管理に関わったりすることもある。保険会社以外では、お客さんとなる個人や会社の相談に乗るコンサルティング会社で、第三者の立場から会計監査(会計書類が法律を守って作成されているかを調べること)などを行っている。
これがポイント!
大学や大学院で数学を学び、保険会社で数理業務の経験を積む
アクチュアリーを目指すなら、短大・大学・大学院の「理学部数学科」で確率や統計などを学び、保険会社に就職して数理業務の経験を積むのが一般的。数理業務を行うのに必要な資格はない。ただし、正式にアクチュアリーを名乗るには、公益社団法人日本アクチュアリー会が行っている民間の資格試験に合格し、正会員に認定される必要がある。会社の数理業務を行いながら資格試験の勉強を進め、何年もかけて正会員の認定を目指すことが多いようだ。ちなみに、保険業法(保険会社が守らなければならない法律)では、会社の取締役会が選任しなくてはならない保険計理人(アクチュアリー)の要件として「日本アクチュアリー会の正会員であること」と定められている。また、正会員であること以外にも、数理業務に3~7年以上従事した経験も必要だ。日本アクチュアリー会の正会員に認定されたあとは、会社を代表するアクチュアリーである保険計理人を目指そう。
資格試験は実務経験がないと解けない問題もある難関
日本アクチュアリー会の正会員になるには、日本アクチュアリー会が毎年1回行う資格試験に合格しなくてはならない。受験資格は、短大をふくむ大学を卒業した者か、それと同等の学力を持つと判断された者。試験は1次試験と2次試験の2回で、両方に合格しなくてはならない。1次試験は確率や統計などの計算問題で、数学の基本的な知識を持っているかを判定するもの。2次試験は記述式で、アクチュアリーの実務に必要な専門知識や問題解決能力を持っているかを判定するもの。1次試験の5科目すべてに合格すると「準会員」になり、2次試験に進むことができる。2次試験は「生保」「損保」「年金」の3つの専門コースから1つを選ぶ。それぞれのコースの2科目に合格し、「プロフェッショナリズム研修」を修了すれば「正会員」資格を取得できるのだ。試験には、高度な数学の問題だけでなく、実務経験がないと解けない問題も出題される。合格するまでに8~10年近くかかると言われている難関試験だ。ねばり強く勉強し続ける気持ちが大切だろう。
将来はこうなる
アクチュアリーの予測技術の重要性は増し、海外での活躍も
65歳以上の高齢者人口が増え続けている日本は「超高齢社会」になっている。保険会社がこれから力を入れていくであろう高齢者向け保険商品の開発には、アクチュアリーの存在が欠かせない。計算やデータにもとづく将来予測などは「AIが取って代わる」と考える人もいるが、業務を進行するために必要なコミュニ―ケーションはAIに任せることはむずかしく、アクチュアリーの仕事がなくなるとは考えにくい。AIが分析を担当し、「予測結果相手にわかりやすく説明する作業」をアクチュアリーが担当するというシゴトの分担もできるだろう。
また将来予測の技術は会社の危機管理に活用できるので、多くの会社が危機管理の重要性を認識している現在、アクチュアリーが活動する場は広がりそうだ。独立開業するアクチュアリーが増える可能性もある。さらに、アジア諸国など経済成長が見込まれる国では、保険市場が拡大すると期待されている。海外向けの保険商品の開発や海外で活動する日本人アクチュアリーが増えるかもしれない。
データボックス
収入は?
平均年収は721~1047万円。
休暇は?
多くの会社が、土・日・祝日が休みの完全週休二日制。
職場は?
生命保険会社、損害保険会社、再保険会社(保険会社のための保険)、信託銀行、官公庁、コンサルティング会社、監査法人など。
なるためチャート
アクチュアリーの仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!