スマホの音声認識やインターネットの検索エンジンシステム、自動運転自動車など、さまざまなところで使われているAI(人工知能)の開発に関わる技術者。
こんな人にピッタリ!
筋道を立てて考えることができる論理的な人、新しいことを学ぶのが好きな人、パソコンを操作するのが好きな人。
どんな仕事?
学習するコンピュータのプログラムであるAIを開発する
AIという言葉は、人間の知覚や知性を人工的に再現する「人工知能」を意味する英語「Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)」の略。一般的なコンピュータは、人間の命令である「プログラム」を忠実に実行する。ところが、性能が向上したコンピュータは人間が学習するように「学び」ができるプログラムを実行できるようになった。この学びは「機械学習」と呼ばれ、機械学習するプログラムは、入力されたさまざまな情報をコンピュータ自身が考えて、そこから導き出された答えや法則に従って判断・予測・提案できる。それが現在のAIの中心的な技術だ。
身近なAIには、スマホやパソコンを話し言葉で操作したり文字を入力する「音声入力機能」に利用されている「音声認識AI」がある。また、インターネットの「オンラインサーチ」で使われている「検索エンジンシステム」もAIの代表的な活用例。最近は、人間の要求に応じてAIが文章・画像・音楽などを生み出す「生成AI」がさまざまな方面で活用されている。そうしたAIを開発する技術者がAIエンジニアだ。
AIエンジニアの仕事を大きく分けると「開発」・「学習」・「テスト」の3段階がある。最初の「開発」は、AIにやってもらいたい仕事や役割を考え、そのための基本的なシステムを作ること。「学習」はAIに学ばせる「機械学習」のこと。最後の「テスト」は学習を終えたAIの動作を試して性能を確かめること。AIエンジニアはこれまでにないAIを開発するチャンスがあるため、とてもやりがいのある仕事と言えるだろう。
一方で、AIの使われる場面が広がっていくうちに、、AIが人間の道徳である「倫理」から外れる問題を引き起こす危険性もある。作者の許可が必用な作品を勝手に使ったり、誤った情報や偏った情報を広めたりする問題は実際に起きていて、AI開発の段階で「倫理的に問題のある命令をAIが判断して受けつけない」という仕組みを持たせる取り組みが求められている。
これがポイント!
大学などでAI関連の専門的な知識を身につける
AIエンジニアになるために必要な資格や学歴は、とくにない。ただし、AIの開発にはプログラミングの知識や技術は必要だ。それらは独学で身につけることもできるが、内容はかなり難しい。情報工学や情報科学系の大学や専門学校でプログラミングもふくめたAI関連の専門的な知識を学び、AI開発の会社へ就職することが多いようだ。
ちなみにプログラミングは、筋道を立てて考える「論理的な考え方」が大切。中学校・高校では、小学校で学ぶ算数を発展させた「数学」を学ぶ。数学はなぜ答えがそうなるのかという過程について考える学問なので、論理的な考え方を身につけることができると言われる。AIエンジニアを目指すならば、中学校・高校で学ぶ数学を通して論理的な考え方を身につけよう。
AIエンジニアに似た技術者「機械学習エンジニア」と「データサイエンティスト」
「AIエンジニア」という呼び方は、人工知能の技術全体をあつかうAIエンジニアだけでなく、AIに関わる技術者全体を指すこともある。AIに関わる技術者には、「機械学習エンジニア」と「データサイエンティスト」がふくまれる。機械学習エンジニアは機械学習を専門にする技術者。ディープラーニング(大量のデータからAI自身が特徴を発見して学んでいくこと)に必要な情報を収集したり、問題を解決するための手順や計算方法(アルゴリズム)をAIに組みこんだりする。一方、データサイエンティストは、多種多様な情報(ビッグデータ)を分析(細分化して新たな情報を見つけること)する専門家。大量の情報を機械学習に使える形に整えるには、データ分析の高度な技術を持つデータサイエンティストの力が欠かせない。
将来はこうなる
未来社会を作るために必要な仕事として活動する場は広がっていく
日本政府は、目指すべき未来社会の姿として、現在の情報化社会「Society(ソサエティ)4.0」に続く新たな社会「Society 5.0」を提唱している。新しい社会は「インターネットですべてのものと人がつながり、さまざまな知識や情報が共有されて課題や困難を解決する」というもの。その実現に欠かせない技術のひとつがAIだ。AIの開発に関わるAIエンジニアは、未来社会を作るために必要とされている仕事なのだ。開発に必要なスーパーコンピュータの導入や、補助金の支援など、国内でのAI開発を強化する政策も進んでいる。今後もさまざまな分野でAIが活用、開発されるはずだ。AIエンジニアが活動する場はどんどん広がっていくことだろう。
データボックス
収入は?
平均年収は、約453~571万円。社員数が多い大きな会社のほうがやや高くなる。
休暇は?
完全週休2日制で、土日祝日は休みになる会社が多い。
職場は?
会社や大学の研究室。所属する会社の事務所。または得意先の会社の事務所。在宅で仕事(リモートワーク)をする人もいる。
なるためチャート
AIエンジニアの仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!