医師は、病院で病気や怪我の治療をするほか、新たな病気の研究や薬の開発などにも携わっていて、人の命を預かる重要な仕事をしています。そんな医師のお仕事について、出産をサポートする産婦人科医のゆかり先生に教えてもらったよ。
医師ってどんな仕事ですか?
私の仕事は産婦人科の医師です。医師は、病気を持った患者さんを治療することが主な仕事です。みなさんが病気にかかり、小児科に行ったときに診察している医師は臨床医と言います。実際に患者さんと直接向き合って診察をし、どんな病気にかかっているか、どれぐらいつらいのか判断して必要な薬を手配するのが仕事です。一方で、研究医と呼ばれる医師もいます。普段みなさんと会うことはありません。大学や研究所で新しい薬や治療方法の開発や研究を行っています。
産婦人科では、どんな1日を過ごしていますか?
産婦人科というと、妊娠した人が赤ちゃんを生むまで通う病院というイメージがありますが、実は他にも女性特有のがんや、卵巣や子宮の病気を治療する専門科でもあります。そんな産婦人科で働く私のある1日を紹介します。
朝は7時半ぐらいに病院に行き、入院してる患者さんたちに元気ですか、と挨拶しに会いに行きます。9時ぐらいから、外来で診察をします。妊婦さんへの妊婦検診が多いですね。赤ちゃんを妊娠している人のお腹に超音波の機械を当てると、動いてる赤ちゃんが見えるんです。赤ちゃんの心臓がしっかり動いてるかや、お母さんや赤ちゃんに異常がないかをチェックします。その後、昼食をとっていると、看護師から電話がかかってくることがあります。分娩室で赤ちゃんの心拍数が低下しているなどの緊急連絡です。その場合はすぐに診察して、あまり心配ない時もあれば緊急手術に踏み切ることもあります。その場合は緊急帝王切開術っていう手術を行います。お腹をメスで切り、赤ちゃんを取り出す手術です。手術が無事に終わり、元気な赤ちゃんが生まれてくると、清潔な新生児室に赤ちゃんを運び、術後の回復を助けます。そのあとは次の日の診察の準備をしたり、手術の予定があるときはその準備をして帰宅します。本当に毎日があっという間です。
大変なことや、うれしいことを教えてください。
産婦人科という分野は、女性にしか起こらない難しい病気や癌の治療もしています。なので大切な患者さんが亡くなってしまうこともあり、そういうとき本当に悲しいです。お産の際もいつも安全で元気に赤ちゃん産まれてきてくれるわけではありません。いつも思いがけないことがたくさん起こります。お母さんだけではなく、おなかの中の赤ちゃんと二人分の命の重さを背負って仕事をするのは大変な面があります。その一方でとてもうれしいこともあります。大変な出産を乗り越えて、頑張った赤ちゃんとお母さんが元気にお家に帰ってくれたときは本当にうれしいです。また、痛かったりつらかったりする病気が治った後に「ありがとう」って言ってもらえたときには、とってもやってよかったなあ、頑張ってよかったなあと、やりがいを感じます。
医師になるにはどうすればよいのですか?
まずは、高校を卒業したら大学の医学部に入学します。普通の大学は4年制ですが医学部は6年制です。6年間、医学を学んだら、医師の国家試験を受け、合格すると医師免許がもらえます。その後2年間、初期研修というお医者さんの見習い期間を経て、専門科に進みます。専門科は産婦人科や眼科、耳鼻科などたくさんあります。専門科の先生たちは自分の得意分野の患者さんを専門的に診て治療していきます。どの専門科の医師も患者さんの「痛み」や「苦しい気持ち」を取りのぞきたい、そのために日々、努力をしています。
医療がSDGsに取り組んでいることはありますか?
医療の分野でも様々なSDGsの課題に取り組んでいます。まず「全ての人に健康と福祉を」という面では、どこに住んでいても同じように良い医療を受けられるように努力しています。都心部にはたくさん病院があるけれども、地域によっては病院が足りないという問題を解消できるように、努力をしているところです。町の小さなクリニックと大きい病院が協力して、緊急の手術や治療が必要なときにすぐに紹介できるような連携体制を取ることも大事ですね。産婦人科の場合は、妊婦さんに出産前に気をつけることや、出産後に気をつけていくことを、勉強会を開いてみなさんにお伝えすることも積極的に行っています。
また最近だとコロナの患者さんを積極的に受け入れることも大切です。コロナにかかってるから、必要な歯の治療が受けられないなどということがないよう、医療現場のみんなで頑張っています。
あとは、以前はお医者さんっていうと男性っていうイメージが強かったんですが、今は性別は関係なく、どんな人でも医師として活躍できる場が増えてきていますね。他にも災害救援とか人道支援を病院として行うことも、SDGsの課題に貢献する大事な活動だと思いますね。
※この記事は2022年8月6日に行われた「ことばパーク特別講座 プロに聞く! おしごと発見プログラム」(学研エデュケーショナル主催、株式会社Blueberry協力)の内容を基に制作しています。
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