亡くなった人を見送る「葬式」や先祖供養などの「祭礼」を取り仕切る専門家。遺族や家族を支え、葬式の運営や進行を担当する。
こんな人にピッタリ!
人の死に関わる仕事なので精神的に強い人。悲しむ遺族を支えるやさしさがある人。仲間と協力するチームワークと臨機応変な判断力、体力も必要。
どんな仕事?
喪主を手助けし、葬式の手配・会場の設営・式の進行を務める
死者の遺体や遺骨を墓に納めることを「葬る」と言う。そのために行われる一連の儀式が「葬式」。一般的な仏教の葬式では、「1日目に通夜(葬式前夜のお別れ会)、2日目に葬儀(故人を送る宗教儀式)・告別式(参列者が故人を送る儀式)・火葬(遺体を焼いて遺骨にすること」が行われる。亡くなった人の人生をしめくくり、遺族や友人・知人が気持ちを整理するための大切な儀式だ。
葬式の主催者は「喪主」と呼ばれる遺族の代表者だが、その手助けをするのが葬祭業者。葬祭業者の主な仕事は、喪主と相談して、葬式に必要な宗教家・場所・物を手配し、会場を設営し、儀式を予定通りに進めること。まず、病院などで亡くなった人の遺体を自宅へ運び、遺体を安置する。次に、喪主や遺族の希望を聞いて、葬儀の宗派、日時、場所、規模、予算などを決める。それをもとに、さまざまな手配を行う。具体的には、寺の僧侶や教会の神父、遺体を納めた棺を運ぶ霊柩車や遺族が乗るハイヤー、火葬場、会場に設置する遺影写真や生花、礼状や香典返し(死者に供える金品の返礼品)、通夜や精進落とし(葬儀後の会食)の料理の手配などだ。葬儀・告別式の当日は、参列者の案内、式の進行を行う。一連の儀式を終えて自宅へ戻る喪主に同行し、遺骨が入った骨壺を祭壇に安置するまでが葬祭業者の仕事だ。
ほかにも、葬式後に行われる四十九日法要(命日から49日目に行う供養)などの手配、仏壇(仏様や先祖を供養するための祭壇)や墓、納骨の相談、保険や相続の相談や手続きの代行を行う業者もある。大切な家族を失って悲しみ、不慣れな儀式にとまどう遺族にとって、葬祭業者の手助けは心強いもの。真心をこめて取り組むことで、遺族から感謝される。とてもやりがいのある仕事だろう。
これがポイント!
就職して実務経験を積むか、専門学校で知識や技術を学ぶ
葬祭業者になるには、特別な資格は必要ない。学歴もとくに重視されない。多くの場合、葬祭会社(または互助会や共同組合の葬祭部門など)に就職し、葬式に関する実務経験を積んでいく。同じ宗教でも宗派によって葬儀の段取りが異なることもあるので、葬儀に関する多くの知識を吸収する努力も欠かせない。さまざまな現場を体験することで、ひとりで葬式の運営・進行ができるディレクターになったり、多くのスタッフに指示を出す役目に就いたりするだろう。
ほかには、葬祭業者の業務に必要な知識や業務を身につけることができる学科やコースを設置している専門学校に通ってから、就職する道もある。葬祭に関する資格取得や、大手葬祭会社への就職を手助けしてくれたりする学校もあるようだ。
一方で、葬祭業者は人の死に関わる仕事なので、ある程度の年齢を重ねた人、あるいは人生経験豊富な人材を求めて転職者を積極的に受け入れている会社も多い。別の職業に就職し、コミュニケーション能力などをみがいてから転職してもいいだろう。
葬祭業者としての知識と技術を認定する「葬祭ディレクター技能審査」
葬祭業者になるための資格はないが、葬祭業者としての知識と技術を厚生労働省が認定する「葬祭ディレクター技能審査」がある。国家資格ではないが、審査に合格した者だけが「葬祭ディレクター」を名乗れるのだ。1級と2級があり、それぞれ異なる受験資格がある。1級は5年以上の実務経験か、2級合格後2年以上の実務経験が必要。1級は2級に合格しないと受験できない。2級は2年以上の実務経験が必要だ。また、厚生労働省が認定する専門学校を修了した者は2級の受験資格に必要な実務経験を得られる。知識と技術をみがくことで、より遺族に満足してもらえる葬儀を行えるようになるだろう。
ちなみに、最近はペットも家族の一員と考える人が多くなり、ペットの葬儀も増えている。一般社団法人 日本動物葬儀霊園協会では、「動物葬祭ディレクター」という資格検定を実施している。こちらも1級と2級がある。2級には特別な受験資格はないが、1級は3年以上の実務経験が必要だ。ペットの葬儀に関心がある人は、飼い主の心によりそった葬儀を運営するために1級を目指すといいだろう。
将来はこうなる
葬祭業者の仕事は増えるが、葬式は簡略化されていく
高齢化社会になった日本は死亡者数が増加していくので、葬祭業者の仕事も増えていくと予想される。ただし最近は、葬式を簡略化する事例が増えている。その1つは、家族や親しい人だけが参列して葬式を行う「家族葬」。通夜・葬儀・告別式・火葬という基本的な流れはこれまでと同じだが、参列者を限定するので葬式の規模は小さくなる。一方、参列者は限定しないが、通夜を省略して、葬儀・告別式・火葬だけを行う「1日葬」もある。さらに、通夜・葬儀・告別式を省略して、火葬だけを行う「火葬式・直葬」も増えている。故人の希望や経済的な問題、葬式に対する価値観や宗教観の変化など、理由はさまざまだが、葬式の簡略化は今後も進んでいくようだ。しかし、たとえ葬式の規模や日数は簡略化されても、故人を見送る遺族を支えるという葬祭業者の役目は変わらない。むしろ、より真心をこめて取り組む必要があるだろう。
データボックス
収入は?
平均年収は343~390万円。
休暇は?
多くの葬祭会社は年中無休なので、労働時間や曜日が一定ではない「シフト制」で働くことが多い。また、仕事を受けたときから葬式が終わるまで休みは取れない。ただし、六曜という占いの「友引」にあたる日は葬式をしないという昔からの習慣がある。そこで、事務職員以外は、月に4~5日ほどある友引を休日にしている会社が多い。
職場は?
葬式のある日は、葬儀場や火葬設備がある斎場で式を運営する。葬式のない日は、病院や警察などで営業活動をする。
なるためチャート
葬祭業者の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!