本や資料を収集・整理・保存する図書館で働く職員。その専門知識を活用して利用者にさまざまなサービスを提供する。
こんな人にピッタリ!
本が好きな人。人とコミュニケーションを取れる人。調べたり、分類したり、整理整とんが得意な人。大量の本を運ぶ体力も必要。
どんな仕事?
図書館の本や資料を整理して、利用者の調査研究や読書の楽しみを手助けする
「司書」は「図書館」で働く専門的職員。図書館は、人々の調査研究や読書の楽しみを手助けするために本や資料を収集・整理・保存しているところ。そこでよく見る司書の仕事には、貸出・返却・予約・リクエスト・コピー・利用者登録などを行う「受付カウンター業務」や、利用者の調べ物の相談に乗ったり情報収集を手助けしたりする「レファレンス業務」がある。一方、見えないところで司書が行っている仕事には、図書館に置く本を選んだり、新しく入った本を蔵書目録に登録したり、管理用のバーコードを付けたりする「目録整理業務」がある。そのなかでも、決められたルールに従って内容ごとに本を分類する作業は司書の重要な役目。本の背表紙に分類を示す「ラベル」を付けて、分類ごとに本棚に並べていく。返却された本を元の場所へ戻したり、乱れた書架を整理したりするのも司書の大切な仕事。ほかにも、蔵書の確認や点検と同時に本棚の掃除をして利用者が気持ちよく使えるようにしたり、傷やよごれから守るカバーフィルムを本の表紙にはったり、ページが外れたり破れたりした本の簡単な修理を行うこともある。さらに、テーマごとに本を紹介する「特設コーナー」や読書会などの「読書イベント」を考え、運営するのも司書の仕事だ。
司書は、貴重な文化財である本や資料を未来に残す手伝いをしたり、図書館の利用者に喜んでもらえたりすることがやりがいにつながる仕事。その反面、人は読む本によって考え方が変わることもあるので、図書館に置く本を選ぶ司書は責任の重い仕事とも言えるだろう。
司書教諭は教員なので授業も受け持つ
ちなみに、図書館には「公立図書館・私立図書館・大学図書館・学校図書館・専門図書館・国会図書館」などがある。どの図書館でも司書の基本的な仕事内容は同じ。ただし、小学校・中学校・高校にある「学校図書館」の専門的職員である「司書教諭」の場合、ほかの図書館の司書とは少し異なる役目もある。司書教諭は授業を受け持つ教員の1人なので、学校図書館を利用した授業を考え、「学習指導・読書指導・情報活用能力の育成指導」などを行う。ほかにも、購入する本や資料を選んだり、年間の運営計画を考えたりする仕事もある。図書館業務を専門にする「学校司書」がいない場合は、司書教諭が本や資料の分類・整理・貸出を行う。
これがポイント!
「司書資格」を取得する3つの方法
司書になるには、国家資格である「司書資格」が必要だ。それを取得するには3つの方法がある。1つめは、大学や短大で必要な科目を修めて卒業する方法。2つ目は、大学・短大・高等専門学校を卒業した人が「司書講習」を修了する方法。3つ目は、「司書補(司書の補佐役)」として3年以上勤務して司書講習を修了する方法。
どれかの方法で司書資格を取得し、希望する図書館の採用試験を受ける。都道府県や市町村などの地方自治体が設置する「公立図書館」を希望する場合、そこで働く職員は地方公務員なので、地方自治体の事務的な仕事をする「一般行政職」の採用試験に合格しなくてはならない。最初から司書(または司書補)として採用される自治体もあるが、採用後に図書館に配属される自治体の方が多い。その場合、希望しても図書館に配属されなかったり、図書館に配属されても数年後に別の部署へ異動になったりすることもある。また、そうした正規公務員とは働く期間や給料などが異なる「非正規公務員」として公立図書館で働く職員も多い。一方、民間の「私立図書館」、「専門図書館」、「大学図書館」などの司書を目指す場合も、それぞれの採用試験に合格する必要がある。ちなみに、「国立国会図書館」にも職員採用試験があるが、受験するには司書資格は必要ない。
学校図書館で働く「司書教諭」と「学校司書」
小学校・中学校・高校などの「学校図書館」で司書の専門的職務を担う教員を「司書教諭」という。司書教諭になるには、教師になるための「教員免許」に加えて、「司書教諭の資格」も取得しなくてはならない。それには、大学や短大で必要な科目を修め、まず教員免許を取得し、そのあとで司書教諭の講習を修了する。教員免許と司書教諭の資格の両方を取得したら、学校の採用試験を受ける。公立学校の場合は地方自治体の教育採用試験、私立学校の場合は各学校の採用試験に合格する必要がある。
また、学校図書館の職務だけでなく授業も担当する司書教諭と異なり、学校図書館の職務を専門にする「学校司書」という職員もいる。学校司書になるための特別な資格はないが、司書・司書教諭・教員免許などの資格や実務経験が採用要件になることが多いようだ。
将来はこうなる
「電子図書館」などICTに関する知識や技術が必要になる
本や資料を収集・整理・保存する図書館があるかぎり、その専門的職員の司書・司書補の仕事がなくなることはないだろう。ただし、自治体の財政難などの理由から業務を民間会社などに任せる公共図書館もあり、公務員の司書の仕事がずっと安定しているとは言い切れない。見方を変えれば、「地方公務員にならなくても、図書館の業務を引き受ける民間会社に所属すれば、公共図書館で司書として働くチャンスがある」とも言える。
また、インターネットに接続したパソコンやスマートフォン、タブレットなどの通信機器を利用して電子書籍を貸出する「電子図書館」のサービスを行う公共図書館が増えている。利用者にとっては、24時間365日いつでも利用できるうえに、貸出や返却のために図書館へ行く必要がないので便利だ。図書館にとっても、実物の本を保管する場所や保管の手間がないなど利点は多い。さらに、文部科学省の「GIGAスクール構想」によって児童や生徒へ1人1台配布されている情報機器を活用するために、学校図書館も電子図書館化が進むと予想される。司書も、紙の本だけでなく、電子書籍や電子図書館などのICT(情報通信技術)に関する知識や技術の習得が必要になるだろう。ICTがさらに発達すれば、図書館が所蔵する貴重な本や資料などを館内でデジタルデータ化してインターネットを通じて世界に発信することが司書の仕事に加わるかもしれない。
データボックス
収入は?
平均年収は、466~649万円。
休暇は?
図書館によって異なるが、基本的に週休2日。公立図書館は土・日・祝日は開館することが多いので、定休日やほかの平日に交替で休む。司書教諭は学校が休みになる土・日・祝日は休み。生徒が休んでいる夏休みなどは、ほかの教師と同じように出勤する。
職場は?
図書館。受付カウンター、事務室、書庫など。公共図書館では、本や資料をのせた自動車や船を使って図書館を利用しにくい地域を回る「移動図書館」サービスを行うこともある。
なるためチャート
司書の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!
必要な資格
司書の仕事につくために必要な資格を紹介しているよ。
司書