船長を助け、操船や貨物の積み降ろしなどを担当する「甲板部」のリーダー。
こんな人にピッタリ!
海や船が好きな人、リーダーシップ(指導力・統率力)がある人、冷静な判断ができる人、体力や強い精神力がある人。
どんな仕事?
操船・見張り・船員への指示・乗客や荷物の管理など船の運航の現場監督
航海士は、大型の客船・貨物船・タンカー・漁船などに乗り組む船員の役職のひとつで、船長の補佐役。一等航海士・二等航海士・三等航海士の3つの階級がある。日本と外国の港を行き来する「外航船」には一等航海士・二等航海士・三等航海士の3名、国内の港を行き来するに「内航船」には一等航海士・二等航海士の2名が乗り組むことが多い。
船員の仕事は「甲板部・機関部・無線部・事務部」などに分かれている。航海士の仕事は「船の操縦や貨物の積み降ろし」を担当する「甲板部」の指揮・監督だ。乗客や乗員の命や積み荷を安全に運ぶ「船で働く仕事」のなかでも、船長に次ぐ重い責任を担っている。長い航海では嵐や台風に立ち向かうこともあり、体力的にも精神的にも厳しい仕事だ。それだけに、無事に母港へ帰ったときの達成感は大きく、やりがいを感じるようだ。
一等・二等・三等航海士の役割
一等航海士の仕事は、出港前は航海に必要な燃料や食料・輸送する荷物の積み込みを指揮し、航路や立ち寄る港などを調べて航海の計画を立てる。出入港するときは、船を動かす機関部への指示、いかりの上げ下ろし、港に船をつなぐ係留作業などを指揮する。船長が休むとき「船長代理」を務めるのも一等航海士の役目だ。二等航海士の仕事は、レーダーや GPS(人工衛星を利用して位置を確認する計器)など航海計器の整備、海図の管理を担当する。三等航海士の仕事は、救命設備や甲板機器(クレーン、いかりを上げ下げする装置など)の整備。航海日誌や書類の記録や管理も任される。また、航行中の航海士は、船の操縦を担当する甲板部の船員とともに周囲の船や障害物を見張り、潮の流れや気象を確認しながら1日2回、4時間ごとの3交代で24時間安全運行に務める。ほかにも客船では乗客、貨物船では積み荷の管理も航海士の仕事になる。さらに現在は、無線従事者の資格を取得した航海士が無線部の仕事を受け持つことが多い。
これがポイント!
大型船に職員として乗り組むには「海技士免許」が必要
20トン以上の大型船に船長・航海士・機関士・通信士などの職員として乗り組むには、国家資格である「海技士免許」が必要だ。海技士免許には「海技士(航海)」、「海技士(機関)」、「海技士(通信・電子通信)」の3種類があり、航海士を目指すならば6級から1級まで6種類ある「海技士(航海)」を取得する。それには、国土交通省が行う「海技士国家試験」に合格する必要がある。一般的には、中学校・高校・大学を卒業後(または海運会社に就職後)、海技士を養成する商船・水産高等専門学校、商船・水産大学、海技教育機構などで2年以上かけて必要な授業を受けて、数か月の乗船実習を行うと3級か4級の受験資格を得られる。口頭試験と身体検査に合格すれば海技士免許を取得できる。
ちなみに、海技士免許がなくても、甲板部や機関部で補助的役割をする部員として船員になれる。さらに、5トン以上の船で部員として2年以上働くと、6級海技士試験の受験資格を得られる。また、船員経験がなくても、短期集中の養成教育と6か月の乗船経験を積むことで、身体検査だけで6級海技士試験に合格する方法もある。
「1級・2級・3級海技士」と「一等・二等・三等航海士」は別のもの
誤解されやすいが「1級・2級・3級海技士」と「一等・二等・三等航海士」はまったく別のものだ。「海技士」は資格の名前で、「航海士」は役職の名前だからだ。
海技士(航海)免許を取得した者が船の職員になる場合、「乗り組む船」と「免許の級」によって「船長・一等航海士・二等航海士・三等航海士」のどれかに任命される。1600トン以上の船の職員を例に基準をみてみると、日本と外国の港を行き来する外航船では、1級~3級海技士は船長、2級~4級は一等航海士、3級~5級は二等航海士か三等航海士となる。国内の港を行き来する内航船では、3級~4級は船長、4級~5級は一等航海士か二等航海士。川・湖・港内を航行する船は、4級は船長、5級は一等航海士というもの。乗り組む船によって任命される役職や人数が異なるので、仕事の内容もそれぞれ異なる。
海技士免許は、数年間の乗船経験を積むことで上級の試験を受けられる。上級の免許を取得すれば任命される航海士の等級も上がり、船の最高責任者である船長も目指せる。そのためにも、さまざまな仕事をこなして実力を身につけていくことが大切だ。
将来はこうなる
最新技術によって「リモート航海」をする日が来る?
世界の中で有数の貿易大国である日本は、輸出入の99%は海上輸送で行われている。日本の経済や人々の暮らしを支える海上輸送、それに関わる船員の仕事がなくなることはないだろう。そんな大切な仕事であるにも関わらず、船員を目指す人は多くない。2021年の外航船の日本人船員数は2,165人。そのうち航海士が属する職員は1,767人で、2000年の3,659人から半分以下になっている。ちなみに外航船の船員の多くは、東南アジアを中心とした外国人だ。一方、船員が日本人に限られている内航船の場合、2021年の船員数は28,625人。最近は30歳未満の割合が上昇傾向で、内航船で働く人は増えていくかもしれない。ただし、内航船の船員の44.6%が50歳以上であり、船員の高齢化が問題になっている。
船員の人手不足の問題を解消するために、操縦室のさまざまな計器をひとつのモニターにまとめて船員の負担を減らすなど、最新技術を導入した船も建造されている。将来的には、AIが船を自動運行し、必要があれば陸上にいる人間が通信を通して操縦する船も生まれるだろう。航海士が在宅勤務で船を操る「リモート航海」をする日がくるかもしれない。
データボックス
収入は?
収入は221~363万円。所属する海運会社・乗り組む船・等級によって異なる。また、船員の仕事は、長期間家族とはなれて不規則な生活をしたり危険をともなったりすることから、その分が手当として上乗せされるため、実際はもっと高額となることが多い。
休暇は?
船員は、数か月連続で乗船し、下船してまとめて休暇を取ることが多い。たとえば、内航船の場合は、3か月乗船して1か月休暇を取る。外航船の場合は、8か月乗船して4か月休暇を取る。また、乗船中は8時間労働。1日2回4時間ずつ交代で当直勤務(見張り)をして6時間以上の休息を取る。さらに、1週間に一度は休日を取れる。
職場は?
所属する会社の客船・貨物船・タンカー・フェリー・漁船など。
なるためチャート
航海士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!