刑務官は刑務所や少年刑務所、拘置所に収容されている人の生活指導、職業訓練指導、安全管理などを行う。
こんな人にピッタリ!
忍耐強い人。コミュニケーション能力のある人。公的な任務という使命感、倫理観を持つ人。体力のある人。
どんな仕事?
刑務所か拘置所か、勤務先の違いで仕事は異なる
刑務官は、刑務所や少年刑務所、拘置所など、法務省管轄の刑事施設に勤務する国家公務員だ。刑務所・少年刑務所と拘置所では仕事の内容が少し違う。刑務所・少年刑務所は、刑が確定した受刑者を収容する施設なので、刑務官は受刑者の健康管理や刑務作業(社会貢献を体験する雑草取りや除雪、職業知識を得るための木工製品の制作など)の監督、技術指導を行い、受刑者が刑を終えて社会復帰できるように手助けをする。面会所や作業所への引率、各種事務手続き、施設内の巡回警備なども行う。
一方、拘置所は刑事裁判で刑が確定していない勾留中の被疑者(容疑者とも呼ばれる)や被告人を収容する施設。裁判を待つところなので、刑務作業などはない。刑務官は被疑者、被告人が拘置所から逃走したり証拠隠滅をしないように注意するとともに健康を管理し、裁判当日、裁判所へ護送するのが主な仕事になる。
これがポイント!
国家公務員専門職試験「刑務官採用試験」を受ける
刑務官になるための一般的な方法は、国家公務員専門職試験である「刑務官採用試験」に合格することだ。試験の区分は「刑務A・B」「刑務A・B(武道)」「刑務A・B(社会人)」の3つに分かれている。Aは男性刑務官、Bは女性刑務官のことを指す。刑務所には女子刑務所もあるので試験も男女別に行われるが、内容はほぼ同じだ。「刑務A・B(武道)」の試験には柔道または剣道の実技試験があり、採用されると主に警備業務を担当することになる。柔道や剣道の経験があり、職場でもいかしたいなら武道枠を狙ってみるのもいい。ちなみに「刑務A・B(社会人)」は社会人を対象にしたもの。いずれも受験資格に学歴は関係なく「高校卒業程度」であれば誰でも受験できるが、年齢制限があり、「刑務A・B」と「刑務A・B(武道)」は試験の年の4月1日時点で17歳以上29歳未満。「刑務A・B(社会人)」は29歳以上40歳未満と決められている。
細心の注意が必要だが社会的意義は高い
刑務官は、とくに細心の注意を払う必要がある仕事内容であることは知っておきたい。犯罪を犯して入所してくる受刑者の中には荒々しい言動をしたり、刑務所内で事件を起こしたりする者もいるため、時には強い態度で接したり、体を張らなければならない。精神的にも肉体的にもシビアな状況に直面することが多く、性格的にそうしたやり取りが苦手な人、体力に自信がない人には大きなストレスになることもある。また、刑務所内では警察などと同じく軍隊式の秩序を重視した態度や監督姿勢が求められる。規律重視の団体生活が続けられないと、一日の大半を刑務所内で勤務する刑務官は務まらない。
その一方で、刑務官は社会的意義の高い誇りある仕事だ。刑務作業や職業訓練などを通じて受刑者と接し、その悩みを聞いたり相談に乗ったりしながら更生への背中を押していく。社会復帰への手助けをすることは大きな喜びとなり、刑務官自身の成長にもつながっていく。
将来はこうなる
受刑者の高齢化、国際化への対応が求められる
刑務所の数自体急増しているわけではないので、刑務官の数も当面大きく変動することはなさそうだ。しかし、採用数が増えないことで、仕事の量が増えていくという新たな問題が起きている。そのひとつが受刑者、被疑者の高齢化だ。高齢の収容者のなかには介助が必要なケースも出てきている。また、外国人の犯罪者が増え、言葉や習慣の違いでコミュニケーションがうまく取れないことも多い。時代の変化に伴って、刑務官に求められる対応も増えていくと考えられる。ただ、国家公務員としてのメリットはやはり大きく、刑務官は「不況に強い職種」であることに違いはない。大変な仕事であることから高めの給与が保証され、各種手当も充実している。条件面での安定感という魅力はこれからも大きく変わることはなさそうだ。
データボックス
収入は?
刑務官の収入は、国家公務員法に基づいて俸給と手当が支給される。令和5年の平均給与月額は約38.2万円。これには全国各地にある刑務所の地域性などに配慮した地域手当や、扶養手当なども含まれる。ボーナスは年2回、民間の平均値を上回る金額が保証される。職務の特殊性から、事務などを担当する一般的な職員の給与水準よりもやや高めに設定されているされる。
休暇は?
勤務時間は基本的に1日8時間勤務。休日は1か月に8日程度。交替制で数日に1度夜勤があり、その際は仮眠や休憩の時間はあるものの、合計で24時間勤務をこなすことになる。
職場は?
原則として、刑務官は刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)に勤務する。 日本の刑事施設の数は、2022年4月現在、 刑務所59、少年刑務所6、拘置所8、刑務支所8、拘置支所97の合計178。全国9つに分けられた矯正管区にこれらの施設が分散している。国家公務員は転勤が多いが、刑務官も例外ではなく、新人や階級が下の刑務官は約8~10年ごとに同じ管区内で転勤するのが通例となっている。
データボックス
刑務官の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!