交通事故や渋滞のない、安全で快適な技術として期待される自動運転。どんな仕組みで自動運転しているのか、その仕組みはどうやって考えているのか。自動運転車をつくるお仕事のことを、自動車メーカーで自動運転用ソフトウェアの開発にたずさわっている、しゅんやさんに教えてもらったよ。
自動運転の仕組みを教えてください。
人間が運転するときの3ステップ
日本では18歳になるまでは、自動車の運転ができません。まずは、みんなに車の運転について紹介したいと思います。車の運転は大きく分けて3つのステップにわかれます。一つ目は「見る」ことです。目をつぶったままでは運転できません。ちゃんと目で周囲の状況を確認することがとても大事なります。見ることが運転に必要な情報を取り込んで頭脳で理解する「認知」という作業につながっていきます。続いて「決める」。自分が見た情報から、まっすぐ行こうかなとか、左右に行こうかな、どうやって走ろうかなと考えて決めるという作業があります。最後に「動かす」。こっちに行ってみようとか、ここを曲がろうとか決めた方向に車を動かしていきます。具体的にはハンドルを左右に動かしたり、アクセルやブレーキを足で踏んで動かしていきます。
データを集めて、計算して、操作する
今あげた3つのステップを自動で行うこと、それが自動運転です。まず「見る」に関しては車に取り付けた3つのカメラが目の代わりになります。またレーダーも前方や後方を確認しています。見ることに関しては人間の目よりも優れているのです。続いて「決める」。カメラやレーダーで集めたデータをコンピューターがアルゴリズムと呼ばれるシステムで計算し、どの道を走るのが適切かを決めていきます。3つ目の「動かす」。これは計算した結果をアクセル、ブレーキ、ハンドルに送ると、非常にスムーズに機械が操作してくれます。これが自動運転の仕組みになります。
自動運転エンジニアってどんな仕事ですか?
エンジニアとは技術で課題を解決する仕事です。さっきの運転でいうと2番目の「決める」という作業が機械ではなかなか難しい課題になります。それをソフトウェアを作って、どうやって走るかルールを決める仕事です。具体的にはコンピューターの中に計算をするアルゴリズムというプログラムを作ります。「前の車が遅いときは、ブレーキをかける」などのルールを作って事故を防ぐようにしています。こういうルールをプログラミングで作るのが、自動運転のエンジニアの仕事です。
自動運転を実現するのに一番難しいと思うことはなんですか?
難しいことは本当にたくさんあるんですけど、やっぱり人の頭ってすごく賢いんですよね。さっきも言いましたが、運転の「決める」っていう作業が非常に複雑でアルゴリズムに落とし込むことにとても苦労しています。右に行きたいか左に行きたいか、運転手がどうしたいかっていう気持ちは、機械には理解することができないんです。ここが非常に難しく、いつも悩まされるところですね。
自動運転が実現したら、人が運転することはなくなりますか?
自動運転が今よりもっと世の中に普及しても、人が運転することはなくならないと思っています。理由はいくつもあるんですけど、まず自動運転っていうシステムを搭載するには高いお金がかかります。なので、自動運転じゃなくてもいいですよっていう人も世の中にはいると思うんです。また、僕自身も運転がすごい好きなので、金額的な問題じゃなくても自分で運転したい人ももちろんいると思います。なので、自動運転も自分で運転する人もどちらも自由に選べる世界っていうのが将来的にあるといいなと思っています。
自動車の仕事をする上で、気をつけていることはなんですか?
自動車業界で今、非常に困っていることは交通事故です。今、1年で約38万件も交通事故が発生します。これはどのくらいの数字かと言いますと、一生の間に事故を経験しない人がかなり珍しい、それくらい頻繁に起こってしまっているんです。そこでそういった事故の被害を少しでも防げるように、自動車の外側に膨らむ歩行者保護エアバッグや、障害物と当たりそうになった時に自動でブレーキがかかる衝突軽減ブレーキなどの開発が今、進んでいます。少しでも事故が減らせるように、自動車業界も頑張っています。
※この記事は2022年7月30日に行われた「ことばパーク特別講座 プロに聞く! おしごと発見プログラム」(学研エデュケーショナル主催、株式会社Blueberry協力)の内容を基に制作しています。
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