靴職人とはオーダーメイド(特注品)の靴を、おもに革を材料として最初から最後までひとりで作り上げる職人のこと。
こんな人にピッタリ!
手先が器用な人。細かい作業を最後までやりとげる根気のある人。お客さんとやり取りができるコミュニケーション能力のある人。ファッションに興味がある人。
どんな仕事?
世界で1点しかない自分だけの靴を作ってくれる靴職人
大量生産される靴は手頃な値段で手に入るが、購入者の好みやサイズにピッタリ合うとは限らない。しかし、注文を受けて、職人が購入者の好みやサイズに合ったものをオーダーメイドで作るなら、手間はかかるため高価にはなるが、自分だけの靴が手に入る。そうしたオーダーメイドの靴を手がける職人を靴職人という。靴職人が手がける靴はおもに革製で、製作には多くの工程があるが、職人はひとりですべてをこなす。
作業の流れは注文者とコミュニケーションをとることから始まる。どんな用途で、どんなデザインの靴にしたいのか。予算を含めて話し合い、イメージが出来上がったら足のサイズを「採寸」。その数値をもとに靴の土台となる立体的な「木型」を作る。次に完成形を「デザイン」した紙を木型に貼り付け、型紙となる「パターン」を作成。材料にする革を選んでパターンに合わせて「裁断」し、これを立体に縫い上げていく「アッパー縫製」をする。縫製した革を木型にかぶせて形を整える「吊り込み(成形)」を行ったあとは、靴の底の部分を貼り付ける「底付け」。最後に表面にワックスをかけたりする「仕上げ」作業をして完成だ。初めてのオーダーでは木型を作るまでに時間がかかり、一足の靴ができ上がるまで半年近くかかることがある。
これがポイント!
靴作りの基礎を学んだら、経験を重ねて一人前をめざす
靴職人になるには資格や学歴は関係ない。靴作りの基礎技術を覚えたら、経験を積んで一人前になっていく。靴作りの技術を学ぶ方法のひとつは専門学校だ。靴製作を教える専門学校は決して多くはないが、2~3年をかけて基礎技術を覚え、実技体験ができるのが強み。注意したいのは、服飾系・デザイン系の専門学校や大学は、靴の形をデザインする「シューデザイナー」のためのコースが多く、靴作りや修理についてはあまり時間を割かないので、学校選びの際に確認したい。靴職人が主催するワークショップへの参加が職人へのきっかけになることもある。主催する職人に弟子入りして修業し、のちに独立したケースもある。また、東京都内の1か所に限られるが、職業能力開発校も職人への道を開いてくれる。東京都立城東職業能力開発センター台東分校は、日本で唯一の「製くつ科」の公共職業訓練をおこなっている。受講期間1年で靴作りを基礎からしっかり学ぶことができ、卒業後の求人率も高い。さらに、靴作りを本場の外国で学ぶ選択肢もある。高級革靴の製作でとくに有名なイギリスやイタリアでは、靴職人を育成する専門学校が充実している。留学には語学力も資金も必要だが、職人として高みをめざす覚悟があるなら本場にチャレンジしてみるのもいい。
職人見習いの就職先は修業させてくれる工房がベスト
職人は実力次第。学校を出てすぐにプロとして独立するのは不可能とは言えないが、実際には卒業後、ベテラン職人のもとで修業するのが一般的だ。日本のある著名な靴職人はイギリスの靴専門学校で2年学び、卒業後はロンドンのオーダー靴専門店の有名な靴職人に弟子入りして3年間修業を重ね、その後、日本に戻って独立・開業というステップを踏んでいる。日本国内も同様で、専門学校などを卒業したばかりの職人見習いは、まずは修業させてくれる工房を探したい。就職先として大手の靴メーカーや靴製造会社があるが、製作工程が分業化されているため、「裁断」をする人はおもに裁断、「アッパー縫製」をやる人は縫製担当というように、その部分の熟練職人にはなれても、全行程を担当することは難しくなる。学校を卒業する前に、憧れの靴職人、弟子になりたい靴職人を見つけておこう。師匠が構える工房に入所できたら、そこが最高の就職先だ。
靴職人の仕事に役立つ資格・靴に関係する仕事
ファッションに欠かせないアイテムとして、靴に関連する仕事は数多く生まれている。靴職人(シューメーカー)のほかにも靴が足の疾病の原因にならないように、お客さんひとりひとりの足にフィットする靴を提案するのが「シューフィッター」。この仕事には医学的知識が必要とされるため、「シューフィッター」を名乗るには「足と靴と健康協議会(FHA)」が養成・認定しているシューフィッター資格を取得する必要がある。「シューズデザイナー」は洋服のデザイナーと同じように、流行や消費者の需要に合わせて靴をデザインする。また、靴の修理を専門におこなう「シューリペア(リペアマイスターともいう)」や、おもに高級革靴の靴磨きや靴の養生を専門におこなう「シューシャイナー」などもある。こうした専門知識は靴作りにも欠かせない。靴職人はさまざまな靴の専門家たちと交流し、学び、仕事に役立つ資格も取り入れて新しい知識を吸収していくことが大切だ。
将来はこうなる
イギリスやイタリアに負けない日本の高級革靴が人気上昇中
手頃な価格の靴が大量生産で簡単に手に入る一方で、高級革靴の人気が高まっている。男性向けの雑誌やWebサイトで高級革靴の特集が組まれ、靴に関連する仕事をする人たちがクローズアップされることも珍しくない。革靴は西洋が本場だが、今は日本の職人の繊細な技術が注目されている。海外セレブの注目度は高く、注文が殺到して靴を受け取れるまで2年待ちという日本人シューメーカーもいる。インバウンド需要もあり高級志向がさらに高まれば、職業としての職人の将来に期待が持てそうだ。
データボックス
収入は?
靴製造会社などに勤める社員、作業員の収入を参考にすると、平均年収は約323~420万円。靴職人の工房に弟子入りしたての見習いは、これより低賃金になりそうだ。独立して人気職人になれば、1足数十万円から、それ以上の値段がつくのこともあるので、収入は格段に高くなる。
休暇は?
職人が運営する工房に勤める場合も、靴製造会社の工場などで働く場合も、週休2日が基本。個人の工房では製品の納期を守るために休日返上で働かなければならない場合もある。
職場は?
師匠が運営する工房。靴メーカー、製造会社の工場など。独立すれば自宅を工房にすることができる。
なるためチャート
靴職人の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!