「話す・聞く」など「言葉によるコミュニケーション」が正常にできない人や「食べる」ことに問題がある人の機能回復訓練や検査、指導などの手助けを行う。
こんな人にピッタリ!
人を大切にする気持ちが強い人。人とコミュニケーションを取ることが好きな人。根気がある人。
どんな仕事?
言葉によるコミュニケーションや食べ方に問題がある人を手助けする
お互いの気持ちや考えを伝え合うコミュニケーションにはさまざまな種類がある。そのひとつである「言葉によるコミュニケーション」には、身体の機能である聴覚(聞く能力)・発声・発音・認知などが関係している。その機能が病気や事故、先天的な障害などで損なわれた状態では、言葉によるコミュニケーションに問題が起こることがある。言語聴覚士は、そうした問題を持つ人に対して、問題の原因を探るための検査・機能回復の訓練・指導などを行って手助けする専門家だ。
たとえば聴覚に障害があると、相手の話し言葉や自分の声が聞き取れないために発音や声の大きさが不自然になってコミュニケーションが取れないことがある。その場合、言語聴覚士は、どのくらい聞こえるのか検査を行い、補聴器をつけてコミュニケーションを取る方法などの指導や助言を行う。また、脳の血管がつまったり破れたりする病気で脳が障害を受けると、病気が治っても言葉がうまくしゃべれない問題が残ることがある。さらに、声帯や舌の病気によって声がかすれたり舌がもつれたりすることもある。その場合は、それぞれに合った発声方法や舌の機能回復のための運動などを指導する。
一方、食べ物のかみ方や飲みこみ方に問題があって苦しんでいる人のために、食べ方・飲み込み方の訓練・指導も行う。言語聴覚士が対象とする相手は、子どもから老人まではば広い。病院だけでなく、学校や老人ホームなどで問題を持つ人と家族を手助けしている。
これがポイント
言語聴覚士を目指すための3つの道
言語聴覚士になるには、厚生労働省が行う「言語聴覚士国家試験」に合格する必要がある。だが、この試験は誰もが受験できるものではない。受験するには、法律で指定された学校に通い、決められた科目を学んで言語聴覚士に必要な知識と技能を修得することが義務付けられているのだ。
受験資格を満たす主な道は3つある。まず「高校卒業後、指定された大学や専門学校で3~4年間学ぶ」方法。さらに「一般大学を卒業し、指定された大学・大学院の専攻科や専門学校、あるいは大学院で2年間学ぶ」方法。そして「医療系大学などで言語聴覚士に必要な科目を修得し、指定された学校で1年間学ぶ」方法。また、外国の大学などで必要な学業を修めた人は、厚生労働大臣に認定されれば受験資格を得られる。指定された学校へ通わなくてはならないので、独学や通信教育で目指すことはできない。
リハビリ専門の国家資格の中で女性が多い
身体に障害のある人が社会復帰するための機能回復訓練などを「リハビリテーション」、略して「リハビリ」という。リハビリを専門にする国家資格は3つあり、言語聴覚士はその1つ。ほかの2つは「理学療法士」と「作業療法士」。理学療法士は、身体に障害がある人の運動機能を回復させるために、温熱・電気などの物理的な手段を用いて治療する。一方、作業療法士は、身体や精神に障害がある人の心身機能を回復させるために、食事や入浴など日常生活の動作や精神面のリハビリを行う。同じリハビリを専門にする仕事でも、言葉や聞く能力の回復が中心になる言語聴覚士は、ほかの2つに比べると力仕事が少ないためか、女性の方が男性の4倍多い。結婚・出産してからも働ける仕組みになっていることも多く、女性が働きやすい職場環境のようだ。
将来はこうなる
高齢者化社会で言語聴覚士の出番は増える
日本は、2040年には高齢者人口が3921万人になると予測されている。国民の3人にひとりが65歳以上になる計算だ。老化にともなって、耳が聞こえにくくなったり、認知機能が低下して言語が出てこなくなったり、食べ物が飲み込みにくくなったりする人が増えると考えられる。その手助けをする言語聴覚士の必要性は高まっていくだろう。ちなみに、言語聴覚士が行う「聴力検査」、「補聴器をつける訓練」、「食べ物を飲み込む訓練」の3つのリハビリは、医師や歯科医師の指示がなくては提供できない。だが、言葉を理解して表現できるようにする「言語訓練」や正しい発音をできるようにする「構音訓練」は、医師の指示なしでも提供できる。その2つを提供する専門家として独立・開業する道もあるだろう。
データボックス
収入は?
平均年収は401~443万円。
休暇は?
勤め先によって異なる。週休二日制だとしても、土日が休みになるとは限らない。
職場は?
病院、診療所、リハビリテーションセンター、訪問看護事業所、老人ホーム、小中学校、特別支援学校など。
なるためチャート
言語聴覚士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!