移植コーディネーターは、移植医療において臓器などを提供する人と提供を受ける人とをつなぐ仕事。
こんな人にピッタリ!
落ち着いて人の話を聞くことができる人。細やかな気配りができる人。チームワークが重要なのでコミュニケーション能力が高い人。
どんな仕事?
移植コーディネーターは命と命をつなぐ仕事
移植コーディネーターは、移植医療において臓器などを提供する人(ドナー)と移植を必要とする人(レシピエント)との橋渡しをする医療専門職だ。移植といっても心臓や腎臓・肝臓などの臓器移植、皮膚や血管・角膜などの組織移植、白血病などの治療に有効な骨髄移植などがあるが、組織移植や骨髄移植を担当する人は組織移植認定コーディネーターや骨髄移植認定コーディネーターなどと呼ばれ、単に移植コーディネーターというときは臓器移植コーディネーターのことを指す。臓器移植は病気や事故によって臓器の機能が低下し移植でしか治らない人に、他の人の臓器を移植して健康を回復する医療だ。臓器移植には生体間移植もあるが、脳死状態の臓器提供者が出た場合は緊急を要する。移植コーディネーターは10人ほどでチームを組み、役割分担をして作業を進めていく。ドナー家族への説明から移植を受けるレシピエントを誰にするかの選定、病院と連絡を取り、必要な書類を作成し、移植手術までの流れをサポートをする。臓器の運搬をすみやかに行うため、警察や交通機関、空港などと交渉することもある。また、移植が終わったあとのドナー家族の気持ちのケアも大切な仕事だ。ドナー家族にとっては、臓器を提供した相手が元気になることが心の支えになることもある。人の命と命をつなぐ役割が、移植コーディネーターのやりがいにつながる。
これがポイント!
移植コーディネーターとはドナーコーディネーターのこと
臓器移植がすみやかにおこなわれるよう調整する中で、おもにドナーを担当するかレシピエントを担当するかで、コーディネーターの役割は違ってくる。一般的に移植コーディネーターという場合は、臓器を提供する側を担当するドナーコーディネーターのことを指す(以下、移植コーディネーターという場合はすべてドナーコーディネーターを指す)。移植コーディネーターは、日本で唯一臓器提供のあっせんをおこなう団体である公益社団法人日本臓器移植ネットワークに所属するか、日本臓器移植ネットワークから依頼を受けた都道府県コーディネーターとして仕事をするかに限られる。
一方、レシピエントを担当するレシピエントコーディネーターは、移植手術をする病院に所属し、多くの場合、医師や看護師などが兼任するため、院内移植コーディネーターとも呼ばれる。レシピエントコーディネーターは、移植手術を受ける患者やその家族への説明、退院後の健康チェック、その後の生活指導などを行う。
移植コーディネーターには医療や福祉の資格と経験が必要
移植コーディネーターになるには、公益社団法人日本臓器移植ネットワークが公募する採用試験に合格しなければならない。この試験は資格試験ではなく、日本臓器移植ネットワークに所属するための採用試験なので、書類審査の後、筆記試験やグループディスカッション、面接など一般的な企業の採用試験に近い方法で行われる。受験には資格が必要で、日本臓器移植ネットワークがホームページ上で公開している応募資格は以下の通り。
【必須】下記の①か②のいずれかに該当する方
①医療分野での実務経験者(国家資格等保有/入職時までに取得見込含む)保有資格例:看護師、臨床検査技師、 臨床工学技士、診療放射線技師、救急救命士、薬剤師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、公認心理師等
②大学卒以上(医療分野での業務経験者が望ましい)
【歓迎】普通自動車免許保有者
採用試験に合格したら、まず一般職として入職(=入社)する。一定期間の研修を受講し最終試験に合格すれば、臓器移植コーディネーターとして任命される。求人は日本臓器移植ネットワークが行い、都道府県が募集することもあるが、いずれも不定期なのでホームページなどをこまめにチェックするしかない。求人数は数名と少なく、就職倍率は高い。
一方、レシピエントコーディネーターの実務は医師や看護師が兼任することが多く資格試験のようなものはないが、一般社団法人日本移植学会が認定制度をもうけている。移植医療の経験や関心のある看護師を対象に、より専門的なコーディネーターとして育成するため、書類審査、筆記試験、面接試験、講習などをおこなうことで「認定レシピエント移植コーディネーター」として認めている。
将来はこうなる
海外よりも少ない移植数を変える可能性
脳死判定後に行われる臓器移植が日本でスタートしたころは、提供者本人が生前に臓器移植の意思を明らかにしておく必要があった。2010年に「改正臓器移植法」が施行され、脳死状態の本人の意思は不明でも家族が承諾すれば移植可能となり、臓器移植の数は年々増加している。それでも移植先進国のアメリカなどに比べると、移植数は極端に少ない。その原因としてあげられるのが、移植医療体制が整った機関が少ないこと。そして、脳死患者の家族に臓器提供に関する情報が十分伝えられていないことだ。後者はドナーに対応する移植コーディネーターが増えることで変わる可能性があり、人材育成の必要性が指摘されている。簡単に増員できる仕事ではないが、人員確保は絶対的に必要とされるため、職業としての将来性は高い。
データボックス
収入は?
移植コーディネーターの多くが所属する公益社団法人日本臓器移植ネットワークの規定では、25~35歳 の月給は25~34万円+賞与(4.40か月)。年収は400~560万円ほど。このほかに扶養手当・超過勤務手当・通勤手当などがつく。
休暇は?
基本は土日休みの週休2日制。ほかに年末年始、有給休暇など。ただし、臓器提供者の情報は突然届くため、緊急時は休日であっても出勤。業務が終わるまで深夜作業が続くことも。
職場は?
公益社団法人日本臓器移植ネットワークに採用されると、初任地は東京。3~5年ほど東京勤務ののち、人員計画などで転勤(名古屋、大阪、福岡)の可能性がある。
なるためチャート
移植コーディネーターの仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!