パソコンなどの「作曲ソフト」と「音声(歌声)合成ソフト」を使って音楽(ボカロ曲)の創作活動をする。
こんな人にピッタリ!
音楽が好きな人。作詞・作曲をすることが好きな人。パソコンの操作が好きな人。自分が作った楽曲を発表したい人。
どんな仕事?
「ボカロ曲」を生み出し、インターネットなどで発表する
「ボカロ曲」は、パソコンを使って音楽を作る「DTM(デスクトップミュージック)」の楽曲の一種。「作曲ソフト」で作った曲と、入力された文字(歌詞)をパソコンが読み上げる技術から生まれた「音声(歌声)合成ソフト」を組み合わせて歌を表現するものだ。自作の歌を、自分で歌ったり歌手に歌ってもらったりするのではなく、パソコンで自由に演奏と歌声を合成できるのがボカロ曲の画期的なところ。代表的な歌声合成ソフトは2004年にヤマハ株式会社が開発した「VOCALOID(ボーカロイド)」なので、歌声合成ソフトを使って作る楽曲は「ボカロ曲」と呼ばれている。また、ボカロ曲の制作者は「ボカロP」と呼ばれるが、この「P」は、音楽作品などの「制作責任者」である「プロデューサー」の意味。楽曲制作や動画発表をするボカロ制作者を、アイドル歌手の売りこみ方法などを考えるプロデューサーになぞらえたといわれている。
つまりボカロPの仕事は、パソコンなどを使ってボカロ曲を作り、インターネットの動画共有サイトなどを通じて発表すること。インターネットでは大量のボカロ曲が発表されており、ボカロPは大勢いる。アマチュアとしてボカロ曲を発表する人もいれば、プロの仕事として発表する人もいるのだ。ほかのミュージシャンの仕事と同じく、ボカロPもアマチュアとプロの差はあいまい。アマチュアでも作品が多くの人に注目されれば、高額収入や、プロになるチャンスがある。
一方、プロの仕事としてボカロPをする場合に考えられる収入源は、「自主制作CDやグッズの発売」、「動画再生にともなう広告費」、「ライブ配信時の応援金(投げ銭)」、カラオケなどでほかの人が歌ってくれたときに発生する「著作権料」、楽曲提供をたのまれたときの「作詞作曲料」などが考えられる。さらにボカロPのなかには、シンガーソングライターや音楽グループで活動し、ヒット曲を放つ有名ミュージシャンもいる。人々を注目させる楽曲を生み出す実力と情熱があれば、大きな成功につながる可能性はゼロではない。
これがポイント!
音楽系の大学や専門学校で学ぶのもいい
ボカロPになるための特別な資格はない。学歴も必要ない。しかも、パソコンを使うDTMの場合、ピアノやギターなどの楽器を演奏できなくてもいいし、うまく歌う技術もいらない。作曲や作詞に関する専門的な知識も不要だ。極端に言えば、パソコンを操作する技術があって、作曲ソフトと歌声合成ソフトを用意すれば、ボカロ曲を作ることはできるのだ。とは言え、音楽的な知識や技術がまるでないのに、多くの人の注目を集める楽曲を作れるほどあまくない。作曲や編曲の仕事をするのであれば、音楽系の大学や専門学校で「コード(和音)進行」などの音楽理論や音楽知識、DTM制作に関する技術などを学ぶのもいいだろう。そうしたものを独学で身に付けたい場合は、多くのヒット曲を聞き、どのような音の構造になっているのか、どのような歌詞を使っているのかなどを研究してみよう。
自作のボカロ曲に映像を加えた動画を世界に向けて発表する
「アマチュアとして音楽制作を楽しむ」や「プロとしてヒット曲を目指す」など、ボカロPの目標はそれぞれ異なる。しかし、「自分が作ったボカロ曲を多くの人に聞いてほしい、動画を見てほしい」という思いはだれもが同じだろう。そこでボカロPは、自作したボカロ曲の動画をインターネットの動画共有サイト「Youtube」やSNSの「X(旧Twitter)」などで発表する。だれもが手軽に世界へ情報を発信できるインターネットを利用することで、動画を見た外国の人から感想をもらえることもあるようだ。多くの人から反応があれば制作のはげみになるだろう。ただし、注目されるためには、楽曲の完成度だけでなく、楽曲に合った映像の完成度を高める努力も必要だ。ボカロ曲の動画を発表する場合、静止画に歌詞を表示する方法もある。だが、人気のボカロ曲は、歌詞に合わせてイラストを編集加工することで、映像作品としても見ごたえのあるものになっていることが多い。自分で工夫したり、イラストや映像加工の専門家にお願いしたりして、多くの人に楽しんでもらえるボカロ曲の動画制作を目指そう。
将来はこうなる
AIの導入で、新たなボカロキャラクターや世界的なヒット曲も
「ボカロ」という文化を誕生させるきっかけとなったのは「初音ミク」。2007年に発売されたクリプトン社の音声合成ソフト(バーチャルシンガーソフトウェア)の歌声(音源)データであり、そのキャラクター。初音ミクに歌わせたボカロ曲がニコニコ動画で発表されて注目を集め、現在でも初音ミクはボカロを代表するキャラクターであり続けている。ボカロPは、合成ソフトを細かく調整することで、同じ初音ミクでもボカロPごとに個性ある歌い方を実現している。ボカロファンはそれぞれの個性を楽しんでいるのだ。この流れは今後も続いていくだろう。
音声(歌声)合成ソフトは急速に進歩し、その数も増えている。とくにAIが導入されたことで、人間が歌っているのと変わらない歌声に合成できるソフトも登場している。2022年に発売された「VOCALOID6」もAI歌声合成に対応した。今後は、イラストや写真の生成AIと組み合わせることで、新たなボカロキャラクターが生まれるかもしれない。さらに、英語や中国語など「多言語歌声合成」機能を持つ合成ソフトもあるので、世界的なヒット曲を生み出すボカロPが誕生する日も近いかも?
データボックス
収入は?
音楽家の平均年収は、457~793万円。ただし、ボカロPとして収入を得られるかどうかは、プロもアマチュアも関係なく、その人次第。ボカロ曲をたくさん発表しても、注目されなければ収入はまったく入らない。発表したボカロ曲が注目されて年収1000万円を超える人もいる一方で、1円の収入もないボカロPもいるのだ。
休暇は?
特定の会社や組織に所属してボカロPの仕事をする場合は、その会社や組織の決まりに従う。特定の会社や組織に所属しない「自由業」としてボカロPの仕事をする場合、自由に決められる。
職場は?
特定の会社や組織に所属してボカロPの仕事をする場合は、その会社や組織の仕事場。自由業の場合、自宅や事務所。
なるためチャート
ボカロPの仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!