宇宙へ飛び立ち、宇宙ステーションでさまざまな実験や観測を行う。
こんな人にピッタリ!
好奇心にあふれている人。沈着冷静な人。協調性のある人。
どんな仕事?
宇宙ステーションでの実験のほか、地上でも大いそがし
日本の宇宙開発を担うJAXA(宇宙航空研究開発機構、旧NASDA:宇宙開発事業団)に所属する日本人宇宙飛行士は、これまでに11人が宇宙へ行っている。2022年現在、その主な任務は、上空約400キロメートルにうかぶ国際宇宙ステーション(ISS)にクルー(乗組員)として数か月から半年間滞在し、各種実験や観測などを行うこと。ほかにも、ISSや日本実験棟「きぼう」のシステムの保守・修理や、ロボットアームを操作して地球からの補給船をキャッチする任務のほか、宇宙服を着てISSの外へ出て作業をするといった危険な任務もある。電力などをほかの国のクルーと分け合って利用するため、分刻みのスケジュールで任務をこなさなくてはならない。さらに、地球とISSを行き来する宇宙船でも、船長を補佐する役目を担うことがある。地上でも、宇宙に行っている飛行士をサポートしたり、実験装置の開発や運用計画の立案にたずさわるなど、多くの仕事がある。また、宇宙での活動や体験をテレビや講演会などを通して多くの人に伝えるのも宇宙飛行士の大切な仕事の一つだ。
これがポイント!
JAXAの宇宙飛行士候補者募集に合格する
JAXAの宇宙飛行士になるには、JAXAの「宇宙飛行士候補者募集」に応募し、選ばれなければならない。しかし、募集の機会は少ないうえに、採用される人はほんのわずかだ。以前は「自然科学系大学の卒業者」などの応募資格があった。だが、2008年以来13年ぶりとなった2021年度の募集の応募資格は「3年以上の仕事経験があること」と「身長や視力などの身体的特性」の2つだけ。学歴は不問。そのせいか過去最多となる4000人以上の応募があり、競争率は400倍以上だった。また、宇宙飛行士候補者に選ばれても、すぐに宇宙飛行士になれるわけではない。まず2年間、宇宙飛行士に必要な知識や技能を修得するための基本的な訓練を受けて、ISSに滞在するクルーにふさわしい宇宙飛行士として認められなければならない。そこからさらに訓練を続け、ISSに滞在する任務を任されるのを待つ。任命されると、それぞれの任務に必要な訓練をさらに数年かけて行い、いよいよ宇宙へ向かうことになる。ちなみに、各種訓練を行うNASA(アメリカ航空宇宙局)やISSでは英語でコミュニケーションを取るため、高い英語力が求められる。さらに、ロシアのソユーズ宇宙船に乗り込む場合はロシア語の能力も必要だ。
得意分野と幅広い対応力を身につけよう
JAXAの宇宙飛行士になった人の前の職業は、科学者、医者、航空機のエンジニア、国際宇宙ステーションの開発者など、いろいろだ。そのだれもが自分の好きなことを一生懸命に続けて、その分野の専門家になった人たちばかり。得意なことを持っていれば、その能力を宇宙で発揮できることにつながる。例えば、宇宙空間で料理をする料理人、病気を治す医者など、その可能性は無限に広がっているといえるだろう。自分の専門があり、それでいてほかの分野にもしなやかに対応できることは宇宙飛行士に求められる資質の一つだ。また、ISSでは、限られた空間でいろいろな国の人と生活することになる。そのためみんなで助け合い、協力し合う場面が多い。チームワークを大切にして、仲間と明るく接することができる優しい人になろう。
将来はこうなる
近い将来、月面に日本人宇宙飛行士が立つ
ISSは2030年まで運用されるが、その後は太平洋へ落下する。その代わりに、新たな月探査計画である「アルテミス計画」の一つとして、月の周りを回る宇宙ステーション「ゲートウェイ」が2028年につくられる予定だ。そこに日本人宇宙飛行士も滞在することが決まっている。また、アルテミス計画では、2025年以降に再び有人月面着陸を達成し、その後は月面に有人基地を建設する予定だ。ゲートウェイはそのための物資を供給する役目を担っている。日本は、その月面基地で使われるシステムやバッテリーを提供したり、地球からゲートウェイへ物資を補給したりして協力することになっているのだ。そう遠くない未来、月面に日本人宇宙飛行士が立つことになるだろう。さらに、ゲートウェイは火星探査へ向けての中継基地にもなる。有人火星探査船へ日本人宇宙飛行士が乗り組むかもしれない。
データボックス
収入は?
2021年度の「宇宙飛行士候補者募集要項」によれば、月収は、30歳で約32万円、35歳で約36万円。宇宙飛行士手当がつくので、実際は約40~60万円。年収では約800~1000万円。
休暇は?
訓練中は決められたスケジュールで休みを取る。ISSに滞在中も、好きな本を読んだり、音楽を聞いたりして過ごせる自由時間があるようだ。
職場は?
JAXAの筑波宇宙センター(茨城県つくば市)。アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、カナダの宇宙機関の訓練施設など。
なるためチャート
宇宙飛行士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!