100万点以上の部品からなるロケットを作るための設計図を作る。ロケットの打ち上げは、設計以外にも製造スタッフ、打ち上げスタッフなどの多くの人々が関わる大プロジェクトだ。
こんな人にピッタリ!
行動力のある人。チームワークを大切にできる人。
どんな仕事?
ロケットを作るための設計図を作る
ロケットは、宇宙空間へ人工衛星や人間が乗る宇宙船を運ぶ輸送機。それを作るための設計図を作成するのがロケット設計士の仕事だ。ロケットは、人工衛星などを積みこむ空間(ペイロード)、エンジンと燃料タンク、それをつなぐパイプ、姿勢制御用の電子機器とそれを結ぶケーブル、そしてそれらを収納する胴体など、多くの部品から成り立っている。しかも、打ち上げ時のロケットには激しい振動と重力に逆らうことによる大きな負荷がかかるので、それにたえるように各部品の強度を計算して最適な材料を選ぶ必要がある。また、各部品の重量バランスやエンジンの配置など、より効果的にロケットの性能を引き出すための全体の構造やデザインを考えて設計しなくてはならない。さらに、他国や民間企業の人工衛星の打ち上げを請け負う「商業ロケット」の場合は、費用を安くするために、作りやすさや打ち上げ前の点検のしやすさなど、運用しやすい機体にすることも重要だ。設計図はロケットの性能に直結するので、それに関わる設計士の責任は重い。それだけに、やりがいのある仕事と言えるだろう。また、ロケットの開発には多くの人が関わる。連絡不足などによる小さなミスが大事故につながる危険もある。それを防ぐためにも、チームワークや人と人のコミュニケーションを大切にしなくてはならない仕事だ。
これがポイント!
大学などで工学系や理学系の技術と知識を学ぶ
ロケット設計士になるための特別な資格はないが、ロケットの開発や設計に関わる専門知識は必要。宇宙工学・機械工学・航空工学などの学部がある大学・短大・専門学校・高等専門学校に進学し、基礎知識を学んでおくのが有効だ。より専門的な知識を身に付けるために大学院へ進む人も多い。卒業後は、ロケット本体を開発・製造する会社に就職することで、ロケットの設計に関わる可能性が高くなる。ちなみに、国産の主力大型ロケットであるH2Aロケットは、三菱重工業が製造し、打ち上げ事業も担当している。また、小型の個体燃料ロケットのイプシロンロケットは、IHIエアロスペースが開発している。ほかにもロケット開発を手助けする会社がいくつもある。さらに、現在は世界規模で宇宙関連ビジネス市場が成長し、国内にも多くの宇宙開発関連会社が生まれている。実際に小型ロケットを開発中の会社もあるので、ロケット設計士を目指す人の就職先は今後も増えていくことだろう。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)でロケットを開発する
日本が行う宇宙開発を担当しているのは、国立研究開発法人JAXA。航空・宇宙に関するさまざまな研究や開発を行う専門機関だ。H2Aロケットやイプシロンロケットも、製造を担当する民間会社とJAXAが共同開発したもの。ロケット設計士を目指す人にとっては、JAXAの技術系職員になってロケット開発にたずさわる道もある。JAXAの職員になるための特別な資格はない。新卒者の応募資格は、短大・高専・専門学校・大学・大学院の卒業・修了者だ。また、専門知識を持つ者を募集する「キャリア採用」にも「ロケットの研究・開発業務」が提示されている。ほかの会社で知識や技術をみがいてから応募することで、ロケット開発の道に進む可能性もある。ちなみに、JAXAが実施するプロジェクトを担う研究員の採用条件は、大学院を修了した博士号取得者に限られるなど、こちらはかなりの難関だ。海外の研究チームとのやりとりも多いので、英語など語学力も必要だ。
将来はこうなる
日本が有人ロケットも開発!?
アメリカのNASA(航空宇宙局)は、2022年秋にアポロ計画以来の月探査となる「アルテミス計画」をスタートさせた。新たな宇宙開発が始まろうとしている。2022年現在、日本が人工衛星の打ち上げに使っている主力ロケットはH2Aロケット。その後継機となるH3ロケットの開発も進んでいる。イプシロンロケットの運用が順調に行われるようになれば、その改良型ロケットや新たなロケットの開発も始まるだろう。また、民間会社による人工衛星の打ち上げが本格的に行われるようになれば、それに使われるロケットも必要になる。ロケット設計士の出番は増えるだろう。ちなみに、日本航空宇宙学会は、2050年の未来では「月面基地が複数完成し、宇宙労働者や研究者だけでなく、宇宙旅行者も短期間滞在する」と予測している。そのころは、月面基地へ旅行者を運ぶ有人ロケットを日本が開発しているかもしれない。
データボックス
収入は?
就職先によって異なるが、民間会社の社員の場合、平均年収は420~531万円。JAXAの場合、平均年収は410~550万円。
休暇は?
週休二日制。ロケットの完成前やプロジェクトの目標直前などは、残業が多くなることもある。
職場は?
民間会社のオフィス、JAXAのオフィス。ロケット打ち上げ時は、発射場で見守ることもある。
なるためチャート
ロケット設計士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!