船を動かすエンジン、発電機、ボイラーなどの各種機器を管理、点検、整備して船を安全に航行させる機関士のリーダー。
こんな人にピッタリ!
海や船が好きな人。機械いじりが好きな人。チームワークを大切にできて、ルールを守れる人。体力に自信がある人。
どんな仕事?
船の動力機関を保守管理する機関士のリーダー
船で働く人の仕事は、大きく分けると二つある。一つは船の操縦や荷物の積み下ろしを担当する航海士(甲板部)。もう一つが、船の動力を生み出す機関室で働く機関士(機関部)だ。機関士の仕事は、船のスクリューを動かすメインエンジン(主機関)や船内で使う電気を作る発電機、蒸気を発生させるボイラー、空調設備や冷房設備などが正常に動くように管理すること。航海中は、機関室の制御室にある計測装置で各種機械の動きを監視したり、実際に見回って機械が出す音や温度をチェックして異常がないかを確認する。異常が発生した場合は、ただちに応急処置をとり、機関長に報告して必要な修理を行う。港に停泊している間も各機械の整備を行い、燃料などを補給して次の航海に備える。主機関、発電機、ボイラーは動作時に騒音と高温を発するので、機関室で働く場合は耳栓や手袋が欠かせないし、体力も必要な仕事だ。そんな海のエンジニア集団である機関部の最高責任者が機関長だ。その最も大切な役目は、船が航行できなくなるような機械の故障が起こらないように機関士たちを指揮すること。そのためには、エンジニアとしての高い能力に加えて、部下の技術や能力を高める育成・指導力も必要だろう。また、燃料をどのくらい積むかを決めるのも機関長の重要な仕事だ。
これがポイント!
まずは大型船に乗り組む機関士の免許を取得する
船の操縦や運行に関わる仕事をする人は「海技従事者」と呼ばれ、国土交通省が行う国家試験(筆記試験・面接)と身体検査に合格して資格を取得しなくてはならない。その資格は、乗り組む船の大きさによって2種類に分かれている。20トン未満の小型船を操縦するには「小型船舶操縦士」の資格、20トン以上の大型船を運行するには「海技士」の資格を取得する。また、海技士の資格は、航海士・機関士・通信士の仕事によって異なる。機関士として乗り組む場合は「海技士(機関)」の資格が必要だ。さらに、その資格も、船が航行する海の区域や船の大きさによって一級から六級まで細かく分かれている。海外と国内の港を往復する外国航路の船員になるには三級海技士以上、国内の港を運行する国内航路の船員になるには四級の資格を取得するのが一般的だ。機関長への第一歩として、まずは「海技士(機関)」の免許取得を目指そう。ちなみに、小型船舶操縦士1級の資格を持つ者が沿岸から150キロメートル以上遠い海域を航行する時は、六級海技士(機関)以上の資格を持つ者を乗り組ませる決まりがある。沖合でエンジンに異常が起きた時に応急処置や修理をするためだ。階級や乗り組む船の大きさに関係なく、エンジニアである機関士の役目と責任は重大だ。
海技士の受験資格を得るために船員教育機関へ進学する
海技士の国家試験には二つの受験資格がある。年齢が18歳以上で、一定期間実際に船に乗って運行や実務に従事した経験(乗船履歴)があることだ。その受験資格を得るには、中学校や高校を卒業後に航海実習の授業がある船員教育機関(商船系高等専門学校、商船系大学)に入学するのが一般的。また、一般大学・高専・短大卒業後に独立行政法人・海技教育機構の海技大学校に入学する方法もある。それらの学校を卒業すると三級海技士の資格試験を筆記試験免除で受験できる。面接試験に合格し、さらに「海技免許講習」を修了すれば、外国航路の船を運行できる三級海技士の機関士としてデビュー。その後、二級海技士、一級海技士と順番に試験に合格していけば、機関長に任命されるのも夢ではない。一方、国内航路の船員を目指す場合は、中学校や高校を卒業後に海技教育機構の海上技術学校、海上技術短期大学校へ入学する方法がある。それらの学校を卒業すると、四級海技士の資格試験を筆記試験免除で受験できるのだ。また、普通高校や大学の卒業後や就職後に船員を目指す人が短期間で六級海技士の資格を取得できる教育機関もある。
将来はこうなる
外国人船員とのコミュニケーションが重要に
2019年のデータでは、四方を海に囲まれた日本は、輸出入貨物の99パーセントを外国航路の船で運んでいる。国内の貨物輸送の44パーセントも船によるものだ。ところが、国内航路の日本人船員は約3万人であるのに対して、海外航路の日本人船員はわずか2000人。大半の船が日本人船員は数人で、ほとんどが外国人船員なのだ。船長や機関長を務める一級海技士・二級海技士の資格試験には英語の科目が追加されるが、外国人船員とコミュニケーションを取るためにも、英語や外国語を身につける必要がありそうだ。一方で、現在は地球規模で正確な位置情報を測定できるGPSや人工知能AIの進歩がめざましい。現在も各種機器の自動化が進んでいるが、近い将来には完全自動航行する船も実用化されるだろう。動力機関の管理だけでなく、人工知能・コンピューターのメンテナンスなども担当することになるかもしれない。
データボックス
収入は?
平均年収は366~448万円。海運会社によって給料や乗船中の手当がちがうが、労働協約で定められている賃金は、同じ会社で陸上勤務をする者よりも高く、外国航路の船の機関長の場合1,000万円以上もらえる会社が多い。
休暇は?
乗船中は交替制で勤務し、下船後にまとめて休暇を取ることができる。外国航路の船の場合、6か月の乗船勤務で3か月の休暇、8か月の乗船勤務で4か月の休暇を取ることが多い。昇格試験のための勉強がじっくりできたり、混雑をさけて旅行ができたりするなどのよい点がある。
職場は?
海外航路を運行する海運会社の船、国内航路を運行する海運会社の船、海上保安庁の巡視船、海上自衛隊の護衛官、漁船のほかエンジンを備えた船。会社によっては、一定期間ずつ代わりばんこに乗船勤務と陸上勤務に従事することもある。
なるためチャート
機関長の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!