子どもがわくわくしたり、おどろくような物語を絵や文章で書き、本にしてたくさんの人に届ける。夢のある仕事として人気が高い。
こんな人にピッタリ!
想像力や感受性が豊かな人。自分で考えた物語を書いたり絵をえがくのが好きな人。地道な作業ができる人。ものごとに熱中しやすい人。
どんな仕事?
子どもが初めて出会う本の制作を手がけるクリエイター
絵本作家の仕事は、絵を中心にした内容の本である絵本をつくること。その対象は、まだ字が読めない赤ちゃんや字を覚えたばかりの子どもなど、初めて本と出会う子どもたちだ。ただし、最近は大人向けにつくられる絵本も多い。ページを開くと登場人物や背景が飛びだす「しかけ絵本」などは、子どもにも大人にも人気だ。また、絵本作家には、絵と文章の両方を書く人もいれば、絵だけえがく人、文章だけ書く人もいる。絵本をつくる手順は、どんな作品にするのかを考えることから始まる。絵本作家自身が内容を考えることもあれば、出版社から題材をあたえられることもある。作品の内容が決まれば、絵や文章を書いていく。先にえがいた絵に合わせて文章を書く方法もあれば、文章に合わせて絵をえがく方法もある。絵のえがき方も、クレヨンや絵の具を使ったり、切り絵や版画、写真やコンピュータグラフィックなど、さまざまだ。絵と文章の両方が完成したら、絵のどこに文章を入れるかなどのデザインを決めて印刷する。絵本作家は、そうやって自分の技術や感性のすべてを一冊の本につめこんでいく。そんな絵本作家に必要なのは、子どもたちにおもしろいと感じてもらえるアイデアと、うまさよりも強く印象に残る絵をえがく能力。伝えたいことを少ない文字数で表現する絵本ならではの文章を書く能力も大切だ。なお、ベストセラーの絵本作家として生活している人は少なく、まんが家やイラストレーターが絵本作家として作品を発表したり、主婦が絵本をえがいたり、ほかの仕事とかけもちしている人は多い。
これがポイント!
絵に自信がなければ大学や専門学校で絵の基本を学ぶ
絵本作家になるための特別な資格はない。必要なのは、絵をえがく技術と文章を書く能力だ。独学では自信がなくて絵をえがくための基本を学びたい人は、美術系の大学や専門学校に進学して技術を身につけよう。そこで学んだ技術を応用してさまざまな種類の絵をえがけるようになれば、絵本づくりに役立つだろう。しかし、大切なのは、あくまで絵本の内容に合った個性的な絵をえがけること。美術系の学校を卒業しているかどうかは重要ではない。一方、絵本の文章は少ない文字数で表現する独特なもの。文章を書く能力をみがきたい場合は、絵本を作る講座に通ったり、自宅で学べる絵本の通信講座を受けてみるのも一つの方法だ。また、多くの絵本を読み、その絵や文章を模写するのも技術をみがくのに役立つ。さらに、絵本の題材となるアイデアを発想する練習として、日ごろから身の回りを注意深く見つめ、絵本にしたらおもしろそうなことを探してみよう。
コンクールで入賞するか、出版社に作品を持ちこむ
絵本作家としてデビューするきっかけの多くは、絵本コンクールで入賞したり、自分のえがいた作品を出版社に持ちこんだりして、才能が認められることだ。絵本コンクールは、出版社だけでなく、ふつうの会社が行うものもある。受賞した作品は出版されることもあり、それが評判になれば次の作品につながる可能性は高い。絵が苦手な人には、文章だけを対象にしたコンクールもある。さらに、絵本に力を入れている東京の板橋区では、英語とイタリア語の絵本を日本語に訳すコンテストも行われている。一方、出版社への持ちこみは、編集者から直接感想や注意点を聞けるので、とても勉強になる。ただし、最近は持ちこみを郵送に限る出版社がほとんどで、編集者の言葉を直接聞ける機会は少なくなっている。コンクールも持ちこみも、出版社が飛びつくような個性的で豊かな発想と表現力を身につけた人材が求められているようだ。絵本作家の仕事だけで食べていくのは決して簡単なことではないが、いい絵本はきっとだれかの目にとまる。マンガや小説とちがって一気に何百万部も売れることはまずないが、長年読みつがれるロングセラーになった絵本もたくさんある。いい絵本をつくる努力をしていれば、いつかチャンスがめぐってくるはずだ。
将来はこうなる
本当にいい絵本はずっと愛される
現在は、本を読む人が減って本が売れず、子どもの数が減る少子化も問題になっている。それにも関わらず、児童書は売上げをのばしている。とくに絵本の売上げと出版される点数は増えており、なかでもロングセラーの売れ行きが好調だ。また、えがかれる題材も広がり、絵本の内容は多様化している。一方、出版界はスマートフォンやタブレットで読める電子化された本が増えているが、絵本はいまだに紙に印刷されたものが主流だ。絵本の多くは、本の大きさや紙の手ざわり、ページをめくる行動までを考えてつくられている。そうした実際に本を手に取ることで感じられる絵本の良さがなくなることを心配する声があるからだ。しかし、電子化された絵本には、自動読み上げ機能や音が出たり絵が動くなど、デジタルならではの表現方法を付加できる良さもある。今後は、紙の絵本と電子化された絵本、それぞれの良さを活かす形で両方が売上げをのばしていくだろう。絵本作家にも、それぞれの良さを活かすアイデアや能力が求められるかもしれない。
データボックス
収入は?
平均年収は424~790万円。ほとんどの絵本作家はフリーで活躍しているため、本の印税、雑誌のけいさい料などが収入源だ。そのため、売れっ子になるまで、イラストレーターなどの仕事をしながら生活していることが多い。
休暇は?
会社に務めていなければ、自由に設定できる。しかし、しめ切り前は休みがとれないほどいそがしい。
職場は?
会社のオフィスや、会社に勤めていないフリーの場合は、自分の家の仕事場。
なるためチャート
絵本作家の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!