ピアノが最も良い音を出すように調整するピアノの医師であり、メカニック(整備士)だ。
こんな人にピッタリ!
ピアノが好きな人。音に対するこだわりがある人。細かい作業を集中して続ける根気がある人。
どんな仕事?
ピアノが良い音を奏でるように調整する
調律とは、楽器が出す音の高さを整えること。英語でチューニングとも言う。ギターなどは演奏者自身が弦をゆるめたりしめたりすることでチューニングできる。それに比べるとピアノは音を鳴らす機構が複雑なので、ふつうは専門家であるピアノ調律師に任せる。気温や湿度の変化を受けやすい楽器でもあるピアノを一番良い音が出る最高の状態に保つように整備する。それがピアノ調律師の仕事だ。ピアノのチューニングは、88個あるすべての鍵盤を何度もたたいて音を確認しながら、鍵盤につながる200本を越える弦の張り具合を専用工具を使って調節し、弦をたたいて音を出す部品の変形した部分を整形するなど、大変な作業になる。音を聞き分ける力やそのための集中力はもちろん、様々な専用工具を使いこなす技術と体力も必要だ。また、コンサート会場などに設置されているピアノを調律する場合、ピアニストの要望通りの音色が出るように調整することもある。その場合は、相手の希望を理解するコミュニケーション力も欠かせない。さらに、防音について相談に乗ったり、温度・湿度管理について助言することもある。苦労して調律したピアノが素晴らしい音を奏でる。それがピアノ調律師にとって一番幸せな時だ。
これがポイント!
大学や専門学校などでピアノの調律について学ぶ
ピアノ調律師になるための特別な資格はなく、学歴も問われない。音楽理論から調律を学ぶ場合は、調律科のある音楽大学や専門学校で学び、卒業後はピアノメーカー・ピアノ販売会社・ピアノ調律を手がける会社に就職することが多いようだ。また、ピアノメーカーが直営する調律師養成所で技術を学んで楽器製作所などへ就職したり、ピアノ販売会社に就職して修理メンテナンス部門で調律を学んだりする場合もある。就職するまでの道のりは様々だが、ピアノ調律師の仕事もいろいろある。ピアノが設置してある一般家庭や公共施設へ出向いて調律する仕事もあれば、工場で作られているピアノの音を調整したり、工房に持ちこまれた故障したピアノを修理する仕事もある。自分がどんな調律師を目指したいのかを考えて、学校や会社を選ぶといいだろう。ちなみに、ピアノの音を合わせる時に、鍵盤の1オクターブ(ドレミファソラシドの8音)を同時に音を出して合わせる作業がある。そのため、応募資格を「1オクターブが楽にとどくこと」としている専門学校や養成所もある。手が小さい人は苦労するかもしれないが、努力と工夫で乗り越えよう。
ピアノ調律師の能力を認定する資格「ピアノ調律技能士」
ピアノ調律師になるための資格はないが、ピアノ調律師としての技術や能力を認定する国家資格「ピアノ調律技能士」はある。一般社団法人日本ピアノ調律師協会が行う試験「ピアノ調律技能検定」に合格した者だけがピアノ調律技能士を名乗ることができるのだ。また、日本ピアノ調律師協会に入会するには、ピアノ調律技能検定に合格し、協会の理事会の承認を受ける決まりになっている。ピアノ調律技能士の資格がなくてもピアノ調律の仕事はできる。しかし、将来ピアノ調律師として活動するには、資格を取得して名刺やホームページでピアノ調律技能士を名乗れる方が、よりお客さんの信頼を得やすいだろう。とくにフリーで活動することを目指すなら、ぜひ取得しておきたい資格だ。
将来はこうなる
ピアノとお客さんを大事にするピアノ調律師が生き残る
小学生の習い事について調べた2021年の調査では、1番多かったのは水泳。ピアノをふくむ音楽教室は5番目だった。電子ピアノの販売台数は増えているので、ピアノ型の楽器を演奏したい人は一定数いるようだ。しかし、調律が必要な昔ながらのアコースティックピアノの販売台数は減っている。また、ピアノがある家庭でも、子どもがピアノの習い事を止めたなどの理由から調律をしないことも多い。調律師が困っているのは、そうした定期的な仕事が減っていることだ。新たなお客さんを見つけるために、インターネットを利用する方法もある。ホームページで自分をアピールするだけでなく、お客さんが仕事ぶりを評価するサイトなどに登録する。そこで好評価をもらって注目されれば、新たな仕事につながっていくだろう。そのためにも、調律の技術をみがき、より多くのお客さんに喜ばれる仕事をする努力が必要だ。
データボックス
収入は?
所属する会社や、社員なのかフリーなのかによってちがってくる。社員の平均年収は514~630万円。なお、ピアノの調律料金はグランドピアノは1万5000円前後、縦型のアップライトピアノは1万2000円前後がふつうだ。
休暇は?
働き方によっても休日は変わってくるが、月に4~6日程度の休みを取っていることが多いようだ。ピアノの発表会やコンサートなどで休日出勤することもある。
職場は?
楽器メーカーの工場や修理工房、楽器店、学校やコンサート会場、ピアノがある一般家庭。
なるためチャート
ピアノの調律師の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!