オーケストラやオペラ、合唱団などで、演奏をまとめる。音のバランスやテンポを調整するだけではなく、演奏そのものをどう表現するかも指示する。
こんな人にピッタリ!
音楽が大好きな人。みんなをまとめるのが好きな人。自分のこだわりがある人。
どんな仕事?
オーケストラを一つにまとめ、演奏中の音の表現をコントロールする
タクト(指揮棒)をふって楽団の演奏者を一つにまとめ、演奏を作りあげるのが仕事だ。ほかの仕事にたとえるなら、映画監督や舞台演出家のような存在だろう。演奏者の前でタクトをふる、はなばなしいイメージが強い指揮者だが、演奏前の見えないところで多くの作業をこなしている。まずは演奏する楽譜を勉強して、作曲者の考えや伝えたいことを理解すること。楽譜に直接書かれていない作曲者の考えを読み解くために、作曲者の人生や時代背景などを調べることもある。また、楽譜に書かれたすべてのパートの音程やリズム、音の強弱などをふまえて、その表現方法を考える。楽団のそれぞれの演奏者から素晴らしい音を引き出すのは指揮者の役目だ。次の仕事は、楽譜の内容など自分の考えを演奏者に伝え、演奏を指導すること。リハーサルでテンポや音色などを細かく指示して、演奏を練りあげていく。そして本番ではタクトをふって曲の情感を演出し、演奏者が奏でる音を通して、聞いてくれるお客さんに感動をあたえるのだ。そうやって、演奏を思想や個性を持つ芸術作品に高めることが指揮者のもっとも大切な役目と言えるだろう。
これがポイント!
音楽大学の指揮科で指揮について学ぶ
指揮者になるための特別な資格はない。独学で目指すこともできるが、音楽に関する専門的な知識は必要なので、音楽大学の指揮科で学ぶのがふつうだ。ただし、音楽大学の指揮科に入学するには、高度なピアノの技術や和声(ハーモニー)などの音楽知識が必要だ。指揮者を目指す人は早めにピアノの練習をはじめよう。音楽大学の指揮科では、音楽に関する基礎練習や、音を聞いて楽譜に書きおこす「聴音」の練習を通じて楽譜の読み方や作曲法を学ぶ。また、指揮に欠かせない音楽の歴史や楽器の演奏方法を学び、実際にオーケストラを指揮してタクトをふる技術を身につけていく。在学中や卒業後に海外の音楽学校へ留学する人もいる。留学先で技術をみがくだけでなく、海外の有名な指揮者や楽団とつながりを持てるチャンスだ。また、最初は楽器演奏者だった人が、途中から作曲などを学び、あらためて指揮者の道に進む人もいる。
コンクールに出場して入賞を目指す
音楽学校卒業後は、楽団に研究員として所属して正式な指揮者を目指すことが多いようだ。また、有名な指揮者に師事し、身近に指揮の技術を学ぶ人もいる。たとえすぐれた技術を持っていても、新人にいきなり指揮を任せる楽団はほとんどない。そこで新人が指揮者としての実力を示す一つの方法として、有名な指揮者コンクールで入賞するという方法がある。フランスの「ブザンソン国際指揮者コンクール」は、「若手指揮者の登竜門」と呼ばれている音楽コンクール。世界的な指揮者である小澤征爾さんが1959年に日本人として初めて優勝し、2019年には女性指揮者・沖澤のどかさんが日本人10人目となる優勝をはたした。2022年現在、沖澤さんはドイツのベルリンを拠点に活動し、国内外のオーケストラの定期公演で指揮を任されている。
将来はこうなる
コンサートの機会が増えることを期待
2022年現在、日本オーケストラ連盟に加盟しているオーケストラは全部で38団体ある。それぞれのオーケストラには、音楽監督、常任指揮者、名誉指揮者、正指揮者などの称号を持つ指揮者が所属しているが、楽器演奏者に比べればその数は極端に少ない。定期公演などには客演指揮者と呼ばれるゲスト指揮者も招かれるが、それは有名で人気のある指揮者だ。残念ながら、安定して仕事ができる指揮者の数は限られているのが現状だ。だが、最近では、クラシック曲だけでなく、アニメやゲームなどで流れる音楽をオーケストラが演奏するコンサートも開かれるようになった。そうした機会が増えれば、指揮者が活躍する場も増えていくことだろう。
データボックス
収入は?
音楽家の収入は多くの場合で非公開のため、指揮者の推定年収は500~1000万円くらいと言われている。楽団に所属すると固定給で、フリーランスの場合は公演ごとに出演料をもらう。フリーランスの場合は、楽器の演奏者や音楽スクールの講師など、指揮者とは別の仕事をしている人もいる。
休暇は?
土日は公演で、休めないことが多い。公演の合間などに休みを取る。
職場は?
音楽ホール、歌劇場、自宅の書斎や事務所など。
なるためチャート
指揮者の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!