書類作成と手続き代行のエキスパートは「市民と行政をつなぐパイプ役」。
こんな人にピッタリ!
さまざまな案件に関わるので、好奇心がおうせいな人。依頼者の要望を正しく理解し、わかりやすく伝えるコミュニケーション能力が高い人。
どんな仕事?
あつかう書類は1万種類以上! 役所へ提出する書類作成のプロ
一般人や企業から依頼を受けて、官公署(省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署・消防署など)へ提出する書類を作成し、それを提出する手続きを代行する仕事。そんな行政書士には、資格を持つ者しかできない独占業務として「官公署に提出する書類の作成」、「権利義務に関する書類の作成」、「事実証明に関する書類の作成」の3つがある。その代表的な書類は、飲食店などの営業許可申請書、なにかを売り買い・貸し借りしたときの売買契約書や賃貸契約書、会社の会計書類や交通事故の調査書などだ。行政書士があつかう書類の種類は他方面にわたり、1万種類を超えるとも言われている。そうした書類を正確に素早く作成するのは、専門知識や経験のない人には難しい。しかし、権利や利益に関わる書類の場合、提出期限に遅れたり内容に不備があったりすると、権利や利益を失うこともある。一方、書類を受理する官公署側も、不備の多い書類では処理が遅れるが、専門家が作成した正確な書類なら効率的に処理できる。「市民と行政をつなぐパイプ役」である行政書士の仕事は、提出する側と受理する側の両方にとって、とても有益なのだ。最近は、依頼通りの書類を作成するだけの仕事から、問題の解決策を提案するコンサルティングも含めた手続き代行をすることが多くなっている。ちなみに、法律に関わるさまざまな書類を作成する行政書士も、ほかの専門家の独占業務は引き受けることができない。できない仕事としては、弁護士の仕事の「裁判手続き」、税理士の仕事の「税務申告」、司法書士の仕事の「登記申請」などがある。そこで、仕事の幅を広げるために、司法書士や税理士などほかの資格を取得して兼業している人も多い。
これがポイント!
誰でも受験できるが合格率は低い
行政書士は国家資格のひとつ。その資格を取得するには、総務大臣の指定試験機関である一般財団法人行政書士試験研究センターが実施する「行政書士試験」に合格しなくてはならない。受験資格はとくになく、年齢、学歴、国籍に関係なく、だれでも受験できる。2021年度の受験者数は4万7870人で、合格者は5353人。合格率は11%だ。ちなみに、合格者の最年少は14歳、最年長は82歳だった。法律系の国家資格なので難関だが、法律を学んだことがない人でも合格できる。効率的に勉強して試験に臨もう。ただ、晴れて行政書士試験に合格しても、それだけでは行政書士の仕事はできない。実際に行政書士の仕事を始めるためには、「日本行政書士連合会」に登録・所属する必要がある。都道府県の行政書士会に書類を提出し、審査を通過すれば登録・所属が完了。行政書士として働くことができる。ちなみに、この登録には20~30万円の費用がかかることも覚えておこう。自分で事務所を立ち上げて仕事をすることもできるが、新人の場合は行政書士事務所や法律事務所などに就職し、実務経験を積みながら人脈を広げていく人が多いようだ。
国家試験を受けずに行政書士になる方法も
行政書士試験を受けなくても、行政書士になれる方法が2つある。ひとつは、公務員の「特認制度」を利用する方法。国や地方公共団体の公務員として行政事務などを一定年数(高卒で17年、中卒で20年以上)経験すると、試験を受けることなく行政書士の登録ができるのだ。時間がかかる方法だが、公務員が退職後に行政書士として独立できるメリットがある。もうひとつの方法は、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士になること。じつは、それらの資格を得ると自動的に行政書士の資格も得られるので、登録すれば行政書士の仕事ができるのだ。ただし、いずれの資格も行政書士より難易度が高い。行政書士を目指す人にとっては現実的ではないだろう。
将来はこうなる
ますます兼業化が必要になるかも…
マイナンバーカードに保険証の機能を持たせるなど、官公署の情報処理のデジタル化がようやく始まった。今後は、パソコンやスマホを使ってオンライン上で申請書類を作成すれば用事は済み、紙の書類を役所へ提出する必要がなくなるかもしれない。そうなれば、書類の作成と提出が仕事だった行政書士の仕事は減っていく可能性が高い。これからは、正確で不備のない書類作成に加えて、有益な情報や効果的な方法をアドバイスする相談などに力を入れるべきかもしれない。依頼者の役に立つ存在になることを心がけるべきだ。ほかの仕事との兼業化を進めるのも、多くの依頼に対応できるというサービスになるだろう。
データボックス
収入は?
平均年収は412~530万円。報酬は書類作成料1枚につきいくら、相談料1時間でいくら、というように、依頼主と契約を結んで決める。その額は「行政書士会」の会則で細かく定められており、それ以上は受け取らないことになっている。収入は人によって大きな差があり、司法書士や土地家屋調査士などと兼業するか、それらの資格を持つ人と共同で開業したりすれば、安定した収入が得られる。
休暇は?
官公署の仕事時間にあわせて、平日午前9時から午後5時までという事務所が多い。独立すれば、休日は自分で選ぶことも可能だ。
職場は?
行政書士事務所、法律事務所など。
なるためチャート
行政書士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!