法律に違反した人を取り調べ、罪になると判断したら、裁判所に訴えを起こすことができる唯一の職業。人の一生を左右する仕事なので、責任重大!
こんな人にピッタリ!
不正を憎んで許さない、正義感が強い人。人を憎悪するのではなく、罪だけを憎むことができる人。
どんな仕事?
罪を犯した人を取り調べ、その罪を裁判で問う
検察官は、検察庁に所属する国家公務員で、検事とも呼ばれる。犯罪や事件が起こったとき、警察が逮捕した被疑者の身柄と捜査記録は、48時間後には検察へ送られる。ちなみに警察は国家公安委員会の下部組織で、検察は法務省の下部組織というまったく別の組織だ。別の官庁の機関へ案件を移すことを「送致」といい、警察から検察へ送致することを一般的には「送検」という。検察官は、警察から送られた捜査記録を読みこんで被疑者を取り調べるなど、独自に事件を捜査して、被疑者を裁判にかけるかどうかを判断する。検察官が「裁判で被疑者を処罰してほしい」という訴えを起こすことを「起訴」、裁判をしないことを「不起訴」という。起訴・不起訴を決めるのは、検察官だけに与えられた権限だ。犯罪者を裁くのは社会正義のために必要だが、犯した罪の重さにふさわしい量刑であるべきだし、無実の人を犯罪者として裁くことがあってはならない。判決によっては被疑者の人生を大きく変えてしまうかもしれないので、検察官の役目と責任はとても重いものだ。また、検察は警察から被疑者が送致されるのを待っているだけではない。東京・大阪・名古屋の各地方検察庁に設置されている特別捜査部が、政治家の汚職事件、大型脱税事件、経済事件などを独自に捜査して被疑者を逮捕・起訴することがある。被疑者を起訴した検察官は、その裁判に立ち会い、証拠を提出したり証人から証言を聞き出したりして、被告人(起訴された被疑者)が犯罪を犯したことを証明する。最後に被告人をどれほどの重さの刑にするべきかを主張(論告求刑)して、裁判官の判決を待つのだ。判決が不当と判断した場合は、不服申し立て(上訴)をすることもある。裁判後は、刑罰が適切に執行されるように執行機関を指揮する。また、刑を終えた被告人の社会復帰を支援したり、犯罪被害者の保護や支援をするのも検察官の大切な仕事だ。
これがポイント!
検事になるための2つの道
法律をあつかう国家公務員である検察官になるには「司法試験」に合格する道を進むのが一般的。司法試験を受験するには、大学卒業後に法科大学院へ進学してそこを修了するか、司法試験予備試験に合格する必要がある。晴れて司法試験に合格したら、1年間、法律事務所、裁判所、検察庁、司法研修所などで司法修習を受ける。研修の終了試験に合格すると、検察官、弁護士、裁判官になる資格が与えられるのだ。
一方で、司法試験に合格しなくても検事になる道がある。検察官を補佐する「検察事務官」や法務省で働いている職員や刑務官などの「法務事務官」、そして一定の公務員は「副検事選考試験」に合格すると、副検事になることができる。ただし、検察事務官などは国家公務員なので、人事院による「国家公務員採用一般職試験」(大卒程度試験または高卒者試験)に合格しなくてはならない。さらに、3年以上副検事の経験を積んで「検察官特別考試」に合格すると2級検事になることができる。また、裁判官(判事・判事補)、弁護士、3年以上特定の大学で法律学の教授や助教授の職にあった者も検察官になる資格がある。
検察官の役職
検察官の役職には、検事総長、次長検事、検事長、検事、副検事という5種類の階級がある。検事総長は最高検察庁のトップであり、すべての検察庁を指揮監督する。次長検事は検事総長の補佐役。検事長は高等検察庁のトップであり、地方検察庁や区検察庁を指揮監督する。捜査や裁判の立ち会い、執行の指揮監督などの仕事を行うのは検事と副検事だ。検察庁に任官したばかりの検察官は、2級検事からスタート。2級検事として8年以上経験を積むと、1級検事に昇格できる。そんな検察官が付ける紀章は、形が霜と日差しの組み合わせに似ていることから「秋霜烈日のバッジ」と呼ばれる。秋におりる霜と夏のきびしい日差しのこと。刑罰や正義を守る心にたとえられ、厳正さを求められる検察官の理想像と重なるものになっている。
将来はこうなる
不足している検事の増強が求められる
検察官の仕事は社会の不正や犯罪を摘発することにある。社会に犯罪がある限り、検察官の仕事はなくならない。しかし、その仕事の厳しさなどから、司法試験合格者のうち検察官の道へ進む人の割合は10%以下でしかない。毎年70名ほどの検事が生まれており、2022年度の検事の採用人数は72人(男性44人、女性28人)。検事の総数は1886人になったが、裁判官3035人や弁護士4万2937人に比べると圧倒的に少ない。検事の不足は、一人当たりの仕事量が増えすぎて、つねに正しい判断を求められる検事の判断力に悪い作用を与えかねない。増加するインターネット関連のサイバー犯罪、多くの人からお金をだましとる特殊詐欺犯罪、児童虐待などの家庭内犯罪、いやがらせやいじめなどの迷惑行為であるハラスメント問題など、多様化する犯罪に対処するためにも、検察官の増強が必要とされている。
データボックス
収入は?
検察官の毎月の基本給は「検察官の俸給等に関する法律」で定められている。階級によって大きく異なり、検察官のトップである検事総長は約147万円。検事の中の階級が一番上の検事で、約118万円。司法修習を終えて任用されたての検事の初任給は約26万円。基本給に加えて各種手当や年2回のボーナスがある。ただし、他の公務員には支給される超過勤務手当(残業代)はつかない。
休暇は?
国家公務員である検察官は、人事院が定める就業規則にそって働く。1日約8時間勤務で、休日は土日・祝日。しかし、検事は人材不足なので、同時にいくつもの案件を担当することが多い。取り調べ、裁判の準備、書類作成などでいそがしく、残業や休日出勤をしなくてはならないこともある。
職場は?
最高検察庁、高等検察庁(全国8か所)、地方検察庁(各都道府県庁所在地に1か所)、区検察庁(各都道府県に数か所)など。勤務期間が長くなると地元の有力者や権力者とのつながりが深くなり、正しい判断ができなくなることもある。そのため、2~3年おきに全国各地へ転勤することが多い。
なるためチャート
検察官の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!