土地の売買や会社の設立などで必要となる法律上の手続きを市民に代わって行う「法律事務の専門家」。複雑な法律の相談に応じる市民の味方。
こんな人にピッタリ!
几帳面で慎重に仕事を進められる人。相手の話を聞き出したり、相手の立場に立って物事を考えたりできる優しさや誠実さ、正義感も求められる。また、新しい法律や法改正にも目を配り、常に勉強を欠かさない人。
どんな仕事?
登記・供託の手続きを代行し、訴訟に関する書類を作成
司法とは法律を実現させること。司法書士は、法務局、裁判所、検察庁などへ提出する書類を作成する法律事務の専門家。専門知識が必要な書類の作成や提出など、必要な手続きを個人や会社の代理で行うのが司法書士の役目だ。なかでも「登記と供託に関する手続きの代理」は、司法書士しか行うことができない独占業務。「登記」は、法務局の「登記簿」に登録することで権利を主張できる制度だ。土地や家(不動産)を買うときは「不動産登記」が義務付けられており、不動産登記の代理はほとんどの司法書士の仕事の中心になっている。また「供託」は、お金などの財産を供託所(法務局)にあずけることでお金をめぐる法的なトラブルを防止・解決する制度。登記や供託にはさまざまな種類があるので、司法書士の仕事も多方面にわたる。特別な研修や試験を受けた「認定司法書士」になると、さらに仕事の幅が広がる。その一つが、簡易裁判所が取りあつかう「請求額が140万円以下の民事事件」の裁判。その裁判に限っては、司法書士も書類作成や手続きだけでなく、原告(訴えた側)・被告(訴えられた側)の代理人として出廷したり、法律相談や和解交渉など、弁護士の仕事もできるのだ。司法書士は、複雑で難解な法律関係の手続きに困っている人の手助けができる、やりがいの多い仕事だ。
これがポイント!
司法書士試験合格は超難関!
司法書士は国家資格なので、国家試験の「司法書士試験」に合格しなくてはならない。この試験は、受験資格の制限はなく、だれでも受験することができる。出題されるのは、憲法・民法・商法(会社法)・民事訴訟法・不動産登記法・商業登記法など11科目。法律分野の幅広く深い知識が求められるので、合格率は4~5%という超難関。法律系の国家試験では、弁護士や裁判官になるための「司法試験」に次ぐ難しさだ。法律系の資格なので、大学の法学部などで法律を学んだ受験生が多い。しかし、法学部ではない学部出身者や最終学歴が高校卒業の受験生にも合格者はいる。合格できるかどうかは、あくまで実力次第だ。ちなみに、試験に合格しただけでは司法書士の仕事はできない。試験に合格した者は、日本司法書士会連合会の研修を受けることが義務付けられている。さらに、連合会の司法書士名簿に登録されることで司法書士を名乗ることができるのだ。ただし、一般企業の法務部などで働く場合は登録しない人もいる。また、「認定司法書士」の資格を得るには、司法書士の資格を持つ者が日本司法書士会連合会の特別研修を受け、連合会の認定考査に合格しなくてはならない。
弁護士や行政書士とのちがい
同じ法律関係の仕事をする司法書士と弁護士だが、法律上あつかうことができる仕事の内容が異なっている。弁護士は法律の仕事をすべてあつかうことができるが、司法書士にはあつかえない法律の仕事も多い。たとえばアパートの大家と住人の間で家賃をめぐる法律トラブルが起きたとき、司法書士は供託制度を活用して解決に導くことができる。だが、そのトラブルを裁判によって解決する場合は、基本的に弁護士の仕事だ。限定された訴訟を代理できる認定司法書士も、訴額140万円を越える事件の相談・和解・代理をすることはできない。また、司法書士と似た名前の仕事に「行政書士」がある。行政書士の仕事は、官公署(省庁・都道府県庁・市区役所・町村役場・警察署など)に提出する許認可申請書類(営業許可や建築許可など)の作成やその相談、提出手続きの代行が中心だ。司法書士は法務省の管轄だが、行政書士は総務省の管轄であることも大きなちがい。行政書士は登記申請の代理や裁判所へ提出する書類の作成はできない。
将来はこうなる
「成年後見人」と「相続登記」の仕事が増える
2021年現在、65歳以上の高齢者の割合が総人口の28.9%となり、日本の超高齢化社会が進行中だ。それとともに、高齢による認知症を発症する人も増えている。そうした判断能力が不十分な人の代わりに財産管理や病院の手続きなどを行って生活を助ける「成年後見人」という仕事がある。最近はそれが司法書士の大事な仕事になりつつあり、今後も増えていくだろう。また、不動産(土地・建物)の所有者が亡くなったときに不動産の名義(権利者・所有者の名前)を相続(引きつぐこと)する人の名義に変える手続きを「相続登記」という。2024年4月から相続登記の申請が義務化されるので、司法書士の独占業務である相続登記の仕事も増えるだろう。
データボックス
収入は?
平均年収は640~1460万円。一般企業の法務部などに勤めている場合は、その会社によってまちまち。また、事務所に所属している場合も事務所の規模によって変わってくる。需要が高い首都圏で独立開業した場合は、1000万円を超える平均収入を手にする人もいる。
休暇は?
独立開業すれば自由に休みを取ることができる。事務所は、裁判所などとの関係から土日・祝日を休業日としているケースがほとんど。勤務時間は、通常なら午前9時~午後5時。不動産売買が盛んな時期は、手続きに必要な書類作成などで残業が続くこともある。
職場は?
一般企業の法務部。個人事務所や司法書士法人の事務所。独立開業した場合は、自宅を事務所にする人もいる。
なるためチャート
司法書士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!