会社が作成しなくてはならない社会保険の複雑な事務作業を代行し、個人からの仕事をめぐるトラブルの相談に乗る。社会保険と労働問題のスペシャリスト。
こんな人にピッタリ!
法律に強い関心があり、人と接するのが好きな人。仕事の性質上、計算に強く、地道な作業が苦にならない人。誠実で正義感が強い人に向いている。また、労務・社会保険関係の法律は改正されることが多いので、改正ポイントなどを素早く的確に理解できる力も必要。
どんな仕事?
書類作成や手続代行から労働問題の相談役まで
社会保険は、国が運営する公的な保険制度。国民が病気・ケガ・失業・老いなどで生活に困ったとき、一定額のお金を給付して救済するものだ。社会全体で助け合う制度なので、すべての保険加入者(国民)が「保険料」と呼ばれるお金を出し合い、そこに国のお金(国庫負担金)を加えたものが財源になっている。ここでの社会保険とは、健康保険と厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険の5種類。それぞれの保険によって保険料の計算方法や手続きの窓口も異なるなど、その事務処理はとても複雑。社会保険労務士は、それらの保険に関する書類を作成したり、行政官庁への提出などを代行する専門家だ。また、法律にのっとって会社の就業規則や名簿、賃金台帳などの帳簿書類を作成するのも社会保険労務士の仕事。そうした「手続代行」と「帳簿作成」は、社会保険労務士しか行うことができない独占業務になっている。また、社会保険労務士は労働問題の相談役でもある。個人の相談も受け付け、問題解決に向けて会社との間を取り持つのが社会保険労務士の仕事だ。社会保険労務士の働き方は、一般企業に就職して人事部や総務部で労務の仕事を担当したり、社会保険労務士事務所に就職して多くの会社の依頼をこなしたりして経験を積み、独立開業を目指すのが一般的だ。社会保険労務士が担当する仕事は、会社にとって欠かせないもの。専門知識が生かせるだけでなく、仕事を通じて多くの会社や多くの人の役に立てる、やりがいのある仕事だ。
これがポイント!
社会保険労務士試験の受験資格3つのポイント
社会保険労務士は、厚生労働省所管の国家資格。社会保険労務士になるには、まず「社会保険労務士試験」に合格しなくてはならない。その受験資格には「学歴・実務経験・国家試験合格者」の3つのポイントがあり、いずれかを満たす必要がある。学歴は、大学、短期大学、高等専門学校を卒業していること。ただし、大学卒業前でも、62単位(講義を修了した数)以上を取得していれば受験資格を得られる。最終学歴が高校卒業の場合でも、社会保険や労務に関わる実務経験が3年以上あれば受験資格を得られる可能性がある。さらに、厚生労働大臣が認めた国家試験(司法試験・行政書士試験など)の合格者も受験資格を得られる。
社会保険労務士試験の合格率は6~7%
年に一度実施される社会保険労務士試験の試験科目は、社会保障に関する法律、労働環境に関する法律、労災や失業などの補償に関する法律、社会保険や労務管理に関する一般常識など、全8科目もある。出題範囲がとても広いので、試験勉強は大変だ。しかも、労務管理に関する法令は改正されることが多いので、過去の試験問題の正解が現在は不正解の場合もある。勉強する範囲が広いうえに法改正の最新情報もチェックしなくてはいけないこともあり、社会保険労務士試験の合格率は6~7%という難関だ。予備校や通信講座もあるが、独学で合格を目指す人もいる。資格試験予備校などが実施する模擬試験を受験するなどして、試験に慣れておくことが大切だろう。ちなみに、試験に合格しただけでは社会保険労務士にはなれない。試験に合格した後に「全国社会保険労務士連合会」に入会し、名簿に登録(実務経験2年以上または事務指定講習の修了が必要)することで社会保険労務士になれるのだ。
将来はこうなる
AIにはできないコンサルティング業務が増える
AIの発達によって社会保険の複雑な書類作成が簡略化されたり、マイナンバー(個人番号)制度の導入によって社会保障の手続きが簡素化される日も近い。そうなると「社会保険労務士の独占業務である手続代行や帳簿作成の仕事が減るかもしれない」と考える人もいる。しかし、AIやマイナンバーは情報処理や情報管理の道具だ。そのあつかい方に精通すれば、社会保険労務士の業務を効率化できる武器となり、強みにもなるだろう。一方、労務や社会保険関連の法律の改正による内容の複雑化、女性や高齢者の雇用問題、ハラスメント被害や不当解雇など、社会保険や労働をめぐる問題は増えている。その相談に乗って問題の解決に導く仕事はAIにはできないものだ。今後は、会社や個人への相談やアドバイスといったコンサルティング業務も増えていくだろう。
データボックス
収入は?
平均年収は612~916万円。会社や事務所に勤める勤務型の場合、平均年収は400~500万円。独立開業型の場合、業績が上がれば年収1000万円以上も夢ではない。
休暇は?
会社や事務所に勤めている場合は基本、週休二日制。ただし、新入社員が多数入ってくる新年度(4月)は忙しくなる。個人で開業している場合は、抱えている案件の数により休める日数が変わる。
職場は?
会社社員の場合は総務部・人事部など。事務所所属の場合は事務所。独立開業型の場合は自宅や事務所など。
なるためチャート
社会保険労務士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!