火災だけでなく、事故や地震、台風などさまざまな災害現場へ急行して人命救助にあたる!
こんな人にピッタリ!
人の命にかかわる仕事だけに、困難を乗り越え、最後までやりとげる勇気と責任感の強さが必要だ。とっさの事態にも動転しない冷静さ、まわりの人と協力しながら行動できる協調性も欲しい。そして何より体力があることが条件だ。
どんな仕事?
火災現場や事故現場へ急行して人々の生命や財産を守る
消防官は、24時間交代制で消防署に待機し、119番通報を受けると現場へ急行して人々の生命や財産を守るために活動する。その仕事の内容は、大きくわけて「消火・救急・救助・防災」の4つある。「消火」は、消防車で火災現場へ急行し、ポンプ車からの放水などで火を消すこと。「救急」は、3人チームの救急隊が乗る救急車で事故現場などへ急行し、急病人やけが人の応急処置を行い、病院へ運ぶこと。「救助」は、災害や事故の現場で逃げ遅れたり、つぶれた建物の下じきになったりした人たちを助け出すこと。人命救助活動の専門的な知識や技術を持つ「レスキュー隊(特別救助隊)」や特殊車両を装備する「ハイパーレスキュー隊(特別高度救助隊)」もある。また、山や海がある地域には「山岳救助隊」や「水難救助隊」が配置され、遭難者を救助する消防防災ヘリコプターや船や港湾施設の火災を消火する消防艇も配備されている。「防災」は、火事の予防や自然災害の被害を少なくするために、建物や消火設備を検査したり、防災訓練の指導などを行うこと。火事の原因を調査して消防・防災活動に役立てるのも、予防課に所属する消防官の仕事だ。出動がないときは、待機する消防署内で、事務作業、車両・機材の整備点検、消火・救助の訓練などを行う。
これがポイント!
自治体ごとに行われる採用試験に合格する
消防官は、全国の市町村などの自治体が設置する「消防本部」に勤務する地方公務員。消防官を目指す人は、高校・短大・大学などを卒業後、消防本部が行う採用試験に合格しなくてはならない。各自治体によって受験資格が異なるので注意が必要だ。東京消防庁の場合は、大学卒程度の22歳以上30歳未満を対象にした「Ⅰ類」、短大卒程度の20歳以上30歳未満を対象にした「Ⅱ類」、高卒程度の18歳以上22歳未満を対象にした「Ⅲ類」、大学卒業程度の22歳以上30歳未満で法律・建築・電気などの専門知識を持つ者を対象にした「専門系」の4種類がある。試験内容は、公務員として働くうえで必要な基礎学力を問われる筆記試験だけでなく、身体検査や1km走・反復横とび・腕立てふせなどの体力検査も行われる。消防官を希望する人は、日頃からしっかり体をきたえておきたい。また、収入などが安定している公務員の人気は高く、消防官採用試験の倍率も高くなっている。東京消防庁の2021年度採用試験「Ⅲ類」の場合、5889人が受験して最終合格者は231人。倍率は20.3倍だ。東京消防庁はとりわけ高倍率だが、採用人数が少ない地方も倍率は高くなる。独学での受験に自信がない人は、公務員試験予備校などで学ぶのもいいだろう。
採用されると消防学校で消防の基本教育を受ける
採用試験に合格して消防本部に採用されると消防官に任官される。しかし、すぐに火災現場で活動するわけではない。新人消防官は、男性も女性も、各都道府県といくつかの都市にある全寮制の「消防学校」へ入学して初任教育を受ける。その期間はおよそ6か月。消防士としての心得や守らなくてはいけない決まり、消防や防災の各業務に関する基礎知識や技術を学び、消防の仕事に耐えられるだけの筋力や体力をきたえるのだ。消防学校を卒業して消防署に配属されると、いよいよ任務につく。最初は男性も女性もポンプ車による消火活動に従事する。初任教育では「救急」の専門科目を学ばないので、救急車に乗ることはできない。救急隊員を希望する場合は、再び消防学校で「救急」の専門科目を約2か月間教育を受けて「救急標準課程修了者」の資格を得ると救急車に乗務できる。救急隊員として5年以上か2000時間以上救急活動の実務経験を積み、救命救急士養成所で1年以上学ぶと、国家資格である「救命救急士」の受験資格を得られる。逆に、救命救急士の資格を持つ者が消防官になることもある。しかし、救命救急士の資格を持っていても、消防官である以上、消火活動にも従事する。また、救助隊員を希望する場合は、消防学校で約1か月の訓練を受ける。さらに高度な教育訓練を受ける「消防大学校」という機関もある。
将来はこうなる
高齢者の被災予防や、女性消防官の増加を
2021年の火災件数は3万5077件。おおよそ1日あたり96件、15分ごとに1件の火災が発生した計算になる。それを昼夜の別なく消し止めているのが消防官だ。日常生活の安全を守る消防官の仕事は決してなくなることはない。また、火災による死者数が一番多いのは建物火災で、死者の約7割は高齢者だ。超高齢化社会の日本では、高齢者を火災から守ることは待ったなしの課題だ。さらに、高齢者を救急車で運ぶ回数が増えることも予想される。そうした救急現場での細やかな対応や、一人暮らしの高齢者への火の用心の呼びかけといった地域防災サービスの担い手として期待されるのが、女性消防官の増員だ。2021年4月現在の消防官全体にしめる女性の割合は、約3.2%。国は、女性消防官がより活動できる後押しと、女性に向けた広報活動を行っている。一方、世界有数の地震大国でもある日本は、巨大地震の2次災害として起こる大火災の危険を常にはらんでいる。さらに、地球温暖化によって台風の力が強くなり、水害も増えた。それらの被害を最小限に食い止めるには防災に強い街づくりが急務であり、住民への防災指導も消防官の大切な役目になっている。
データボックス
収入は?
平均年収は635万円。地方公務員なので全国一律ではなく、各市町村の給与規定に従う。基本給はほかの公務員と同額の約30万円だが、各種手当の合計約10万円がプラスされて、月額合計は約40万円。消防官ならではの手当には、危険な場所で行う仕事に対する「特殊勤務手当(約7000円)」をはじめ、「時間外勤務手当(約2万円)」、「夜間勤務手当(約5000円)」、「休日勤務手当(約1万2000円)」などがある。ちなみに、新人消防官の消防学校での初任教育期間中も給与が支給される。
休暇は?
消防官の勤務方法は「毎日勤務・2交代制・3交代制」の3種類があり、どれを採用するかは消防本部によって異なる。「毎日勤務」は一般の公務員と同じく月曜日から金曜日の朝から夕方まで8時間勤務するもので、休日は土曜日・日曜日・祝日。「2交代制」は2つのグループが24時間ずつ勤務するもので、勤務・非番(勤務を交代した休息日)を2~3回繰り返し、途中に2日連続で休みが入る。休暇は4週に8日ある。「3交代制」は3つのグループが24時間ずつ勤務するもので、基本的に勤務・非番・休日を数回繰り返し、途中に1日の毎日勤務と2日の休日が入る。休暇は3週に6日ある。ちなみに、24時間勤務といっても、もちろん24時間ぶっ続けで仕事をするのではない。午後10時から翌朝6時まで仮眠を取るなど、およそ8時間休息する。その前後に2日分の16時間勤務するので、合計すると24時間。正確には、勤務時間というよりも、出動に備えて消防署に待機する時間だ。
職場は?
市町村など各自治体の消防署。119番通報を受けて急行した先が消火・救急・救助の任務にあたる作業現場になる。大規模災害などが発生した場合は、要請があればほかの市町村へ応援に向かうこともある。
なるためチャート
消防官の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!
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横浜市消防局で働く消防士の仕事をくわしく見る!