複雑で分かりにくい税金の仕組み。その相談に乗り、手続きを代行する納税者の味方。
こんな人にピッタリ!
コツコツと努力が続けられる人。細かい試算に取り組む機会が多い仕事なので「計算が苦にならない」タイプでないと務まらない。また、お客さんとの信頼関係が大切なので、社交性や誠実さも必要。秘密を守れる「口のカタさ」も大切だ。
どんな仕事?
税金・会計の専門家として納税者や経営者を手助けする
税理士は、国民が国や地方公共団体(都道府県や市区町村)に納めなくてはならないお金である「税金」に関する専門家。そもそも税金は、国や地方公共団体が学校教育や医療福祉、警察や消防の活動など、公的サービスを行うための費用をまかなうために国民から集めるお金だ。国に納める「国税(所得税など)」と、地方公共団体に納める「地方税(住民税など)」に分かれている。地方税は行政機関が税額を確定するが、国税は納税者が自分で納めるべき金額を計算して「申告書」と呼ばれる書類を作り、税務署に申告し、納付することになっている。その税務作業は、それぞれの税金によって計算の仕方が違うなど、複雑で分かりにくい。そんな税務作業を納税者に代わって行うのが税理士だ。だから税理士の主な仕事は、納税者である個人、商店、企業から依頼を受けて申告書を作成したり、代理で申告や納税したり、税務に関する相談を受けること。その3つの仕事は、法律によって税理士だけに許されているものだ。さらに税理士は会計のスペシャリストでもあるので、会社の財政状態を報告する「決算書」の作成や会計の指導や相談も行う。専門知識をいかして人の役に立つ税理士は、税務を通して国の財政を支える大切な仕事だ。
これがポイント!
税理士の資格を取得する試験は受験資格が必要
税理士は国家資格が必要な仕事だ。税理士になるには、国家試験である「税理士試験」に合格しなくてはならない。ただし、税理士試験は誰もが自由に受験できるものではなく、受験するには「学識」「資格」「職歴」に関する条件を満たしている必要がある。たとえば学識の条件には「大学、短大、高等専門学校を卒業した者で、法律学か経済学を1科目以上学んだ者」などの5つがある。同じように、資格には2つ、職歴には3つの条件がある。そのどれか一つの条件を満たすことで受験資格を得られるのだ。そのため税理士を目指す人は、大学の法学系、経済学系、経営学系、商学系などに進学して税理士試験に挑戦するのが一般的だ。ちなみに高卒者の場合は学識の条件は満たせない。だが、資格の条件である「日商簿記検定1級合格者」「全経験簿記検定上級合格者」は、高卒者も取得可能な受験資格だ。また、職歴の条件の一つである「税理士事務所などの業務の補助事務に2年以上従事した者」も、高卒者が取得可能な受験資格だろう。ほかにも国税審議会の個別認定を受けることにより、受験資格が認められる場合もある。ところが、税理士試験に合格しても、すぐに税理士にはなれない。日本税理士会連合会に登録しないと税理士を名乗れないのだが、それに登録するには「税理士事務所や会計事務所などでの2年以上の実務経験が必要」だ。実務経験の期間は税理士試験の前でも後でもいいので、まず税理士事務所などに就職し、実務経験を積みながら税理士試験に挑戦する人も多い。このように税理士になるのはとても困難で長い道のりになる。それだけ納税者の代行をする税理士の仕事は社会的責任が重いのだ。
税理士試験は「長期計画」で臨むことができる
年1回行われる税理士試験で問われるのは、会計学と税法に関する知識だ。受験科目は「会計科目」2科目と「税法科目」9科目の11科目。税理士試験は「科目合格制」という方式なので、受験者は科目を選び、5科目に合格すると税理士試験に合格したことになる。ちなみに、会計科目は2科目とも必ず選ばなくてはならないので、9科目ある税法科目のうち3科目を選ぶことになる。ただし、1回の試験で一度に5科目を受験する必要はない。合格した科目は一生有効なので、毎年1科目ずつ受験して合格を積み重ね、数年がかりで5科目に合格すればいいのだ。それとは別に、税理士試験が免除される場合がある。その1つは、大学院へ進学して税法や会計学に関する論文を作成して学位を取得し、国税審議会へ科目免除の申請をする方法。申請が認められれば、会計科目の場合は1科目、税法科目の場合は2科目が免除される。また、税務署に一定期間勤務した者には、税理士試験科目が一部免除される「国税従事者の免除制度」がある。とくに23年以上勤務して指定研修を修了すれば、税理士試験の全科目が免除される。さらに、公認会計士、弁護士、司法試験に合格して司法修習を終えている人は、税理士試験を受験しなくても税理士登録ができる。
将来はこうなる
事務作業はAIにまかせて税理士はアドバイスが中心に?
税理士登録ができても、すぐに独立開業するのは難しいので、税理士事務所などに勤めて経験を積む人が多い。そんな税理士が一番いそがしいのは、2月中旬から3月中旬。毎年1回、商売で得たお金にかかる所得税、商店の経営者が納付する消費税などを、個人がそれぞれ計算して、作成した申告書を税務署へ提出して納付する「確定申告」と呼ばれる手続きが行われるシーズンだ。しかし、現在は申告書の作成や税務署への提出をインターネットを通して手軽に行うことができる。また、パソコンの税務ソフトや会計ソフトの性能も向上し、税理士の手を借りなくても処理できるようになった。今後は、そうした税務書類の作成などの事務作業はAIに任せることが多くなるだろう。税理士の仕事は、依頼者の要望や心情をくみ取りながら、税金の専門家としての知識と経験を生かし、経営についてもアドバイスをするなど、AIでは対応できない人間的で知的なサービスが中心になっていくものと考えられる。
データボックス
収入は?
平均年収は550~1160万円。税理士・会計事務所に所属している場合、その事務所によって違う。独立開業して仕事が軌道に乗れば、年収2000万円以上かせぐ人もいる。
休暇は?
土日・祝日が休みだが、依頼者との打ち合わせ、付き合いなどで休日がつぶれることも多い。確定申告期の2~3月、企業の決算期にあたる5月、11月は非常にいそがしくなる。
職場は?
税理士事務所、公認会計士事務所、一般企業の経理部など。
なるためチャート
税理士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!