目が見えなかったり見えにくかったりする視覚に障害のある人が自由に出歩くための手伝いをする盲導犬を育てる。人の役に立つ、やりがいのある仕事だ。
こんな人にピッタリ!
犬が好きで、犬の面倒を見るのが好きな人。盲導犬や、盲導犬を利用する人と気持ちを通い合わせるために、思いやりとコミュニケーション能力がある人。体力に自信があることがベスト。
どんな仕事?
利用者の安全で快適な外出を助ける盲導犬を育てる
盲導犬を育成する団体の職員として、目が見えない人や見えにくい障害がある人の外出を手助けする盲導犬を育てる。団体の訓練施設で生まれた子犬は、パピーウォーカー(里親)と呼ばれるボランティアの家庭で愛情深く育てられ、1歳をすぎると訓練施設にもどって盲導犬になる訓練を受ける。その訓練を行うのが盲導犬訓練士だ。基本訓練では、人が求めることができたら「グッド(良し)」とほめながら、「シット(座れ)」、「ダウン(ふせ)」、「カム(来い)」、「ウェイト(待て)」などの指示を犬に学習させる。ほかにも「道路の角や段差があることを犬が止まって教える・道路に置かれた看板や自転車をよけて歩く」など、利用者を安全に導くさまざまな訓練をおこなう。約1年~1年半に渡る訓練を終えた候補犬は、3回おこなわれる評価(試験)に合格することで盲導犬としてデビューできる。しかし、最終的に盲導犬になれるのは全体の3~4割だ。また、盲導犬訓練士の仕事は、そうした犬の訓練だけではない。事務所で報告書の作成や会議、盲導犬を利用する人たちへの電話連絡もする。さらに、盲導犬には向かないと判断された犬(キャリアチェンジ犬)や盲導犬を引退した犬(リタイア犬)の新たな家族や飼育ボランティアへの橋わたし役も仕事のひとつ。もちろん、犬たちの健康管理をふくめた毎日の世話も大切な仕事だ。
盲導犬協会が認定する資格を取得する
「盲導犬訓練士」は、国家資格ではなく、全国に11団体・14施設ある盲導犬協会・団体が認定する民間資格。そのうち8団体が加盟する「認定NPO法人全国盲導犬施設連合会」では、各団体が出す資格審査員による審査に合格した者を「盲導犬訓練士」と認定している。盲導犬訓練士を目指すには、まず、盲導犬育成団体のどれかに就職する必要がある。それぞれの団体で3年間研修を積み、認定試験に合格することで盲導犬訓練士の資格を取得できる。団体のひとつである公益財団法人日本盲導犬協会は「盲導犬訓練士学校」を開校している。ただし、入学者を毎年募集してはいない。協会職員になれば訓練センターで働きながら学校で学ぶことができるが、2023年度は最大4名の求人だった。多くの団体が欠員のある時に求人を告知するので、盲導犬訓練士は競争率が高い、かなりの難関だ。盲導犬訓練士を目指す人は、求人が出るまで、育成団体のボランティアとして犬の世話をしたり、盲導犬を利用する視覚に障害のある人たちの病気や気持ちを勉強しておくといいだろう。
最終的には「盲導犬歩行指導員」を目指す
盲導犬訓練士の資格を取得した者は、さらに2年間、知識と経験を積んで「盲導犬歩行指導員」の資格取得を目指すのが一般的だ。盲導犬訓練士が主に犬の訓練をするのに対して、盲導犬歩行指導員は視覚に障害のある人に盲導犬との歩き方(共同訓練)を指導する。そのため、盲導犬歩行指導員になるには、目の病気や目の見えない人の気持ちなどを勉強する必要がある。指導する相手は身ぶり手ぶりが通用しないので、「盲導犬への指示の出し方」や「道路の角・段差・障害物を教える盲導犬の反応」などを言葉でわかりやすく教えなくてはならない。コミュケーション能力が必要な仕事だ。また、そうした歩行の技術だけでなく、犬とともに生活する注意点なども指導する。さらに、訓練を終えても定期的に利用者をたずねて様子を確認するなど、ずっと利用者と盲導犬を見守る。盲動犬を通じて視覚に障害のある人の生活の一部を支える、大変だが大切な仕事だ。ちなみに、盲導犬は各団体が利用者に「貸す」ものなので、ドッグトレーナーのように個人が飼育する犬を訓練するものではない。また、盲導犬協会の資格を取得しても、個人が開業することは基本的に許可されていない。
将来はこうなる
盲導犬を必要としている人は多い
現在、盲導犬をはじめとする「身体障害者補助犬」を連れた人を交通機関・飲食店・ホテル・病院などが受け入れることを義務付ける法律がある。2022年時点、日本で働いている盲導犬の数は848頭だが、盲導犬との生活を希望する人の数は3000人と言われている。盲導犬の数はまるで足りていないのだ。盲導犬の数が少ない理由は、訓練に約1年~1年半もかかるうえに、訓練をしても盲導犬になれるのは半数以下であること、そして訓練を行う盲導犬訓練士の人数が少ないことがある。今、日本で盲導犬訓練士として働いているのは70~80名しかいない。これからも盲導犬訓練士の必要性は高まっていくと言えるだろう。
データボックス
収入は?
所属する団体によって異なる。平均年収は466~649万円。
休暇は?
所属する団体によって異なる。動物相手の仕事なので、泊まり込みで犬の世話をする夜勤当番もある。
職場は?
国家公安委員会から指定された「盲導犬育成団体」の事務所や訓練施設。
なるためチャート
盲導犬訓練士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!