ファッションショーでモデルが着る一点ものの服から、店で売られる大量の商品まで、衣料品づくりに欠かせない「縫い物・縫製」を手掛ける。
こんな人にピッタリ!
洋服をつくるのが好きな人。手先が器用な人。細かい作業をこなし、ていねいに仕上げるための集中力がある人。
どんな仕事?
縫製技術を自在に使いこなして美しく着心地のよい衣服を仕立てる
「ソーイング(sewing)」とは、布を糸で縫い合わせる「針仕事・縫い物・縫製」のこと。ソーイングスタッフは、縫い針やミシンを使って衣服などを縫い上げる「縫製技術者」だ。
衣服をつくる作業工程は、まずデザイナーが服の全体の形や素材を考え、それをもとにパタンナーが衣服づくりの設計図になる型紙(パターン)をつくる。ここからがソーイングスタッフの仕事で、型紙をなぞって布に写し取り、それを裁断(切り取り)して服の各部のパーツにする。そのパーツを縫い合わせ、衣服として完成させるのだ。
平面の布を立体的な衣服に仕立てるために、パタンナーは各パーツの設計に工夫するが、ソーイングスタッフもパーツの縫い合わせ方に工夫をこらす。たとえば、そでを肩の部分に取り付けるときは、布に細かいしわ(ギャザー)をよせながら縫製する。そうすることで取り付けた部分にふくらみが生まれ、体にぴったり合いながらも、うでが動かしやすい服になる。正確で丁寧な作業で美しく仕上げるのがソーイングスタッフのうでの見せどころだ。
一点ものから量産品まで、活躍の場はさまざま
そんなソーイングスタッフの仕事は、働く場所によって多少異なる。ファッションデザイナーの事務所で働く場合は、ファッションショーでモデルが着る一点ものの服や商品化が予定された服のサンプル(見本・試作品)を手がける。高級ブティック(洋装店)では、オートクチュール(客の注文に応じて製作される一点ものの仕立服)を縫製する。また、サンプルの縫製を担当する工場もあれば、サンプルをもとにして商品を量産する縫製工場もある。縫製工場では、裁断・各バーツ作成・体の前と後ろの部分を縫う・そでを取り付ける・アイロンをかけるなど、段階ごとにさまざまな業務に分かれている。経験を積んで独立し、フリーランスとしていろいろな会社から縫製の仕事を受ける人も多い。縫製の技術をみがき、美しく着心地のよい衣服を縫い上げて高い評価を得られるようになれば、大きなやりがいにつながるだろう。
これがポイント!
技術をみがく努力次第で目標にも手が届く
ソーイングスタッフの仕事をするための特別な資格はなく、学歴も問われない。必要なのは縫製の技術だ。縫製工場などは入社後に社内で実習があり、簡単な縫製作業から始まるので、努力を重ねれば未経験者でも技術を身に付けることができるだろう。
一方、ファッションショー用のサンプルやオートクチュールの縫製を手がけるソーイングスタッフを目指すのであれば、大学・短大・専門学校の家政学科などで縫製の技術や縫製に関する専門知識を身に付けておくのもいいだろう。中学校卒業者が進学できる高等専修学校でも縫製を学ぶことができる。そうした学校を卒業し、ファッションデザイナーの事務所、アパレルメーカー、繊維メーカー、縫製工場に就職することが多い。どのような道に進んでも、練習や経験を積み重ねて縫製の技術を高めることが目標への近道だろう。
ソーイングスタッフとしての知識や技術を証明する資格
取得することでソーイングスタッフとしての専門知識や技術を備えている証明になる資格がある。代表的なものは「洋裁技術検定」。これは一般財団法人日本ファッション教育振興協会が行っている民間資格で、洋裁に関する知識や技術を証明するもの。初級・中級・上級に分かれ、それぞれ学科試験と実技試験が行われる。ただ、受験資格があるのは、日本ファッション教育振興協会が認定した学校の卒業生のみ。高等専修学校では、この検定を受験するための教育も行われている。この検定を受けるために習得する知識や技術は、縫製に関わる人には大いに役立つだろう。
また、厚生労働省が認定する国家資格もある。紳士服の縫製の仕事を極めたい人は「紳士服製造技能士」を、婦人服や子供服の仕事を極めたい人は「婦人子供服製造技能士」の取得を目指すといいだろう。紳士服製造技能士は特級・1級・2級に分かれ、婦人子供服製造技能士は1級・2級に分かれる。また、この2つを受験するには2年以上から7年以上まで、それぞれ異なる実務経験が必要だ。
将来はこうなる
縫製工場は減るが、高い縫製技術を生かす機会は増えていく
日本繊維輸入組合の資料によれば、日本国内の衣料品生産量は年々減少している。2012年は1億5020万点だったが、2022年は6690万点。10年間で半分以下になった。その結果、日本で供給された衣料品のうち国産品の割合はわずか1.5%で、98.5%は輸入品なのだ。その理由の1つは、国内の衣類を生産する縫製工場の数が減っていること。後継者不足で会社がなくなるなど、工場が減る流れは止まりそうにない。
一方で、衣類の輸出は、わずかだが増えている。それは2015年に国連で決まった「SDGs(2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標)」が関係している。輸入品には流行に合わせた低価格な「ファストファッション」も多く、たくさんつくってすぐに捨てられるものだ(大量生産大量廃棄)。これは資源の無駄遣いにつながり、持続可能な方法とはいいがたい。そこでアパレル業界は、流行にとらわれず長く着られるような服を、多くの種類、少しずつつくるように切り変えだしている(多品種少量生産)。そのため、メーカーの細かい要求に応えることができる国内のすぐれた縫製技術と、その商品に再び注目が集まっているのだ。
今後は、インターネットのECサイト(自社製品などを売るサイト)を利用して縫製工場が独自に商品を生産して発売したり、少量の衣服を受注生産するサービスを展開したりするケースも増えていくかもしれない。
データボックス
収入は?
平均年収は、247~338万円。所属する会社や工場によって異なる。経験を積んだソーイングスタッフは、独立してフリーランスで働く人が多い。
休暇は?
所属するアパレル会社や縫製工場によって異なるが、基本的に週休2日。
職場は?
所属するアパレル会社や縫製工場。ミシンなどの縫製器材が自宅にあれば、フリーランスのように在宅勤務で仕事をすることもある。
なるためチャート
ソーイングスタッフの仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!