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大阪・関西万博が閉幕 次の万博はどうなるの?

大阪・関西万博が閉幕 次の万博はどうなるの?

日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
※写真は、大阪・関西万博の最終日の様子。リングの上には多くの人の姿があった=2025年10月13日午後5時22分、大阪市此花区の夢洲、水野義則撮影

次の万博はサウジアラビアで開催

大阪市の夢洲で開かれていた大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)が10月13日に閉幕しました。158の国と地域が参加し、184日間の会期中、2500万人を超える一般来場者がありました。当初は、前売り券が思うように売れなかったり、パビリオンの建設遅れやアクセスが不十分という指摘があったりして心配されましたが、会期が後半になるにつれて入場者が増え、2005年に開かれた愛知万博(愛・地球博)の約2200万人を超えました。関西圏を中心にお祭りムードは盛り上がり、閉幕に寂しさを感じる人が少なくなかったと思います。

そうした人にとっては、「次の万博はどうなっているの?」というのが気になるところだと思います。万博を広くとらえると、それは意外に早く、日本では2年後の27年に開かれます。横浜市で開かれる国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)です。略して横浜万博とか横浜花博いう表現が使われています。

世界では、30年にサウジアラビアの首都リヤドでリヤド万博が開かれます。正式にはこちらが大阪・関西万博の次の万博になります。横浜とリヤドでそれぞれ万博という言葉が使われますが、このふたつは別のカテゴリーの国際博覧会です。混同しないように、まず、国際博覧会の仕組みについて説明します。

「国際博覧会」には2つの種類が

国際博覧会は国際博覧会条約にもとづいて開かれています。博覧会国際事務局(BIE)はフランスのパリにあり、世界の181カ国が加盟しています。この条約は1928年に署名され、その後、4度にわたって改正されています。日本が批准したのは65年です。70年に大阪万博(日本万国博覧会)を開くために批准したのです。

この条約では、国際博覧会を登録博と認定博のふたつに分けています。登録博は開催期間が6週間以上6カ月以内であることや5年以上の間隔をあけることなどが条件となっています。一方、認定博は期間が3週間以上3か月以内で登録博の中間期に開くことや明確なテーマがあることが条件になっています。つまり、登録博は幅の広いテーマでおこなう規模の大きい博覧会で、認定博は限定したテーマでおこなう比較的規模の小さな博覧会という区別になっています。

横浜の国際園芸博は認定博で、リヤド万博は登録博ということになります。日本ではこれまで、大阪万博、愛知万博、大阪・関西万博の3つが登録博(95年以前の呼称は一般博)であり、75年の沖縄国際海洋博覧会(沖縄海洋博)、85年に茨城県の筑波研究学園都市で開かれた国際科学技術博覧会(つくば万博)、90年に大阪市で開かれた国際花と緑の博覧会(花の万博)の3つが認定博(95年以前の呼称は特別博)でした。

国際園芸博を開く横浜の狙いは

国際園芸博は横浜市旭区・瀬谷区に位置する約100ヘクタールを使って27年3月から9月まで開かれます。この場所はアメリカ軍の上瀬谷通信施設があったところで、15年に約242ヘクタールの広大な土地が横浜市に返還されました。横浜市の中心部から遠くないところの広大な土地ということで、その跡地利用が注目されていました。24年に横浜市が三菱地所、相鉄ホールディングス、東急、東急不動産、三菱倉庫の5社と基本協定を締結し、東京ディズニーランド並みの大型テーマパークを核とした複合集客施設を建設する計画が決まっています。複合集客施設の着工は博覧会後の28年とし、31年ごろの完成を目指しています。

博覧会の跡地や近隣の土地で大型の集客施設の建設が予定されるのはめずらしいことではありません。大阪・関西万博が開かれた夢洲では、万博の隣接地でカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の建設が始まっています。IRは大阪市が力を入れて誘致したもので、博覧会を開催することで地下鉄の建設などのインフラが整備され、それがIRへの集客に役立つという仕組みです。

横浜の国際園芸博でも跡地にできるテーマパークなどの集客のためにアクセスを整備する狙いがあります。当初は鉄道の駅をつくることを検討していましたが、採算性の不安などから断念することになりました。代わりに周辺の駅から会場までトンネルを掘ってバス専用道路をつくり、シャトルバスで結ぶ計画になっています。

国際園芸博のテーマは、「幸せを創る明日の風景」です。長い間人の手が入っていない自然を生かした会場で、花と緑に囲まれながら、環境を守るテクノロジーや安全な食について考えようというものです。

関西万博の閉幕に寂しさを感じる理由は……

リヤド万博は、30年10月から31年3月まで開かれます。暑い国なので、開催時期は気候のいい冬になります。参加するのは、197の国と29の国際機関です。会場の広さは大阪・関西万博の約4倍の600万平方メートルで、入場者は4000万人以上を見込んでいます。テーマは「明日への先見性」です。その柱となるのが、「変革と技術」「持続可能性」「人間の繁栄」の3つです。サウジアラビアは豊富な埋蔵量の石油によって急速な発展を遂げている国なので、中でも「変革と技術」が注目されます。オイルマネーをつぎ込み、人工知能(AI)などの先端技術を披露する場になりそうです。

サウジアラビアは34年にはサッカーの男子ワールドカップを開催することが決まっています。万博での盛り上がりをワールドカップにつなげて、世界に中東の産油国の発展を見せつける狙いがあると考えられます。

日本でも4度目の登録博を期待する人はいると思います。どうなるかわかりませんが、人口が減っていく日本ではそんな大規模な国際的イベントを開くのはもう無理だろうという思いが頭をよぎります。大阪・関西万博の閉幕に寂しさを感じるのは、これが最後の登録博かもしれないという気持ちがどこかにあるからかもしれません。

一色清

一色清(いっしき・きよし)さん

朝日新聞社に勤めていた時には、経済部記者、アエラ編集長、テレビ朝日 「報道ステーション」コメンテーターなどの立場でニュースと向き合ってきた。アイスホッケーと高校野球と囲碁と料理が好き。

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