
日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
※写真は、東京・霞が関の財務省の入り口
毎年注目集める予算案づくりと税制改正の議論
毎年、年末になると翌年度の予算編成のニュースが大きく取り上げられます。この時期に2026年4月から執行される予算の政府案ができるためです。政府案は年明けの通常国会に提出されますが、賛成多数でそのまま成立することがほとんどです。国の予算は私たちの生活に関わるので、政府案が注目を集めるわけです。
予算案づくりと並行して、税制改正の議論もおこなわれます。予算のもとになるお金の多くは税収なので、翌年度の税金の仕組みを決めて、法案にします。税金の仕組みが変わると得をする人や損をする人がいるため、こちらも大きな注目を集めます。
ただ、予算も税制も難しい言葉と数字が並ぶニュースのため、とっつきが悪いと感じる人が多いと思います。今回は、少しでもとっつきがよくなるように注目すべき点はどこなのかを解説します。
ポイント① 予算の規模と支出面
予算には歳出と歳入があります。国の予算にだけ使われる言葉ですが、会社や家庭の言葉に置き換えると、歳出とは支出のことで、歳入とは収入のことです。予算は使い道である歳出と、税金や国債発行によって決まる歳入、つまり国のお金の出と入りをあらかじめ決めるものです。
最初に注目すべきなのは、予算の規模です。2025年度当初予算の規模は115兆1978億円でした。これは前年度の当初予算より2.6%増えていました。景気がよかったりインフレだったりすれば、増え方が大きくなります。逆に景気が悪かったりデフレだったりすれば増え方が小さくなります。最近は年度後半に規模の大きい補正予算を組むことが当たり前のようになっており、それをあわせると、予算規模はかなりの勢いで増えています。インフレが進んでいることや積極的にお金を使って景気を良くしようとする傾向が強まっていることが背景にあります。
次に注目すべきなのは、どういう分野の予算が増えているかということです。増え方が最近目立つのは、社会保障費と防衛費です。社会保障費は、わたしたちが安心して暮らせるために年金、介護、医療、子ども・子育てなどの分野に使うお金です。このうち年金、介護、医療は高齢化が進めば進むほどかかるお金が増えます。年金を受け取る人も介護を必要とする人も増え、医療機関にかかる回数も増えるためです。こうした分野にかかる費用は保険料と税金でまかなっています。社会保障費はこのうちの税金部分の支出になります。25年度の予算における社会保障費は歳出全体の33%に上っています。この比率は年々上がっています。財務省は社会保障費を抑えるために、高齢者の医療費負担を増やすよう求めるなど、少しずつ自助努力を増やそうとしています。
防衛費も大きな伸びが求められている分野です。アメリカは北大西洋条約機構(NATO)各国や日本に防衛費を国内総生産(GDP)の2%以上にすることを求めています。アメリカのトランプ大統領はさらに3.5%以上という数字も口にしています。アメリカと軍事面で協力関係にある国はアメリカに依存しすぎず、自分たちのお金をもっとかけるべきだというのです。日本はその要請に従い、防衛費を急激に増やそうとしています。日本の防衛費は長くGDP比1%という目安を守っていました。しかし、岸田政権が22年に「27年度にGDP比2%にする」とし、高市政権はその流れを加速させようとして「25年度にGDP比2%」と前倒しすることにしました。そして25年秋の補正予算で2%を達成しました。さらにそこからの上積みをはかろうとしているので、26年度当初予算でも防衛費は大きな伸びとなることが見込まれます。
ポイント② 収入面~国債が占める割合~
歳入の面で注目しなければならないのは、国債の発行額です。25年度当初予算では、歳入のうち25%を国債でまかなっています。国債というのは国の借金です。企業や個人などに国債を買ってもらって期日が来れば利子をつけて返すのです。国債には特例国債(赤字国債)と建設国債があり、財政法では赤字国債の発行を原則的に禁じています。戦前に発行した国債が敗戦により価値がなくなり、国民が大きな損をした反省からできた条文です。ただ、政府は赤字国債を認めてもらう特例法案を国会で可決してもらうという手続きを踏んで発行しています。25年度当初予算の歳入のうち赤字国債が19%を占めています。特例というのは言葉だけで、常態化しているのです。
そして、ここ50年ほどで積み上がった国債の残高は25年度末で1129兆円と見込まれています。物価がほとんど上がらないデフレ時代には金利がゼロに近かったので、政府の財政負担はそれほど大きくなかったのですが、今はインフレになり、金利が上がっています。そうすると国の利払い費は増えます。26年度当初予算では利払い費は過去最大の30兆円台になるとみられます。
財務省の調べによると、日本の債務残高の対GDP比は240%で、比率の小さい国から数えて世界172カ国・地域中の172位で、世界最悪です。実際、市場での日本国債の価格はじわじわと下がっています。国債の発行を増やすと買い手がさらに減り、価格がさらに下がる可能性があります。価格が下がると金利が上がるという関係にあり、金利の急騰から日本経済が大きな打撃を受けることも考えられます。
自分が首相だったら、の視点で考えてみよう
このように日本の予算は、規模は大きくなっていますが、いくつもの課題を抱えています。社会保障費の伸びをいかに抑えるかに四苦八苦しています。アメリカの要請にこたえて防衛費を急激に増やさなければなりません。お金はますます足りなくなり、借金が膨らんでいきます。多くの人が持続可能性に不安を持ちながらも方向転換できないでいます。もし自分が総理大臣だったらどうするか、ということを考えてみてはどうでしょう。

一色清(いっしき・きよし)さん
朝日新聞社に勤めていた時には、経済部記者、アエラ編集長、テレビ朝日 「報道ステーション」コメンテーターなどの立場でニュースと向き合ってきた。アイスホッケーと高校野球と囲碁と料理が好き。









