図解でわかる! 発達障害の理解と支援
#第1回「多様性を理解する」
放課後等デイサービスTEENSの『図表でわかる!発達障害』シリーズをもとに、「発達障害」にまつわる情報を、図表と一緒に紹介する本連載。
第1回は、発達障害の「多様性を理解する」をテーマにお届けしたい。
※特別支援情報誌『月刊 実践 みんなの特別支援教育』(Gakken)のバックナンバーより抜粋して掲載しています
なぜ発達障害は「理解が難しい障害」なのか
発達障害は、しばしば「正しく理解することが難しい障害」であるといわれている。なぜだろうか? その理由として、大きく分けて次の3つが考えられる。
【理由1】
目に見えない障害のため困り感を理解しづらい
身体障害など目に見える障害の場合は、どういったことに困るのか、どういったサポートが必要か、(もちろんすべてを理解することは難しいが)なんとなくであればイメージできるものの、発達障害や精神障害の場合はそれが難しい。
【理由2】
できることとできないことの差があるため、「怠けている」「ふざけている」と誤解を受けやすい
「難しい漢字は書けるのに、ひらがなが書けない」といったように、できることとできないことの差が極端に出やすい。そのため、「努力が足りないだけ」という誤った解釈をされてしまうことが多い。
理由3
同じ「発達障害」でも真逆の特性を示すことがあるためわかりづらい
同じ診断名でも全く別の様相を示すことがあり、理解しづらいこともある。これについては、さまざまな誤解が発生している。
例えば、「アスペルガーの人は空気が読めない」というようなイメージが強いが、一概にいうことはできない。逆に敏感すぎるがゆえに空気を読みすぎていて身動きがとれなくなっている方もたくさんいる。
ADHDのある子の場合も、多動・衝動性が目立つ子と、不注意でぼんやりしているように見える子とでは、真逆の様相を示す。特に不注意傾向が強い子の場合、おとなしく、ややうっかりしているところがあっても、児童期は単なる「天然」と捉えられ、困り感に気づかれないことが多々ある。「幼少期は問題がなかった」と言ってすませてしまうのではなく、子どもの現在の困り感と向き合うようにしてあげてほしい。
ASDのある子の場合も、例えば、寡黙で自分の考えを示すことが苦手な子とは逆に、多弁な子もたくさんいる。
同じ診断名でも示す特性は多様であり、「絶対に○○の症状がある!」というものはない。定型発達(一般的な発達)と違いが見られて、その違いから社会生活に困難が生じている状態なのだということを理解してほしい。また、個人の中でも状況やタイミング、発達段階によって示す特性が変わるということも押さえておきたい。
発達障害の特性の中で、診断名が同じであっても真逆の様相を示す例を下図にまとめてみた。
特性を正しく理解しリフレーミングすることが大切
「発達障害とはこういうもの!」と思い込んで支援をしようとすると、相手を苦しめる結果になりかねない。周囲の人は一人ひとりの特性と向き合い、理解しようと努力することを忘れないようにしたい。
また、特性を正しく理解したあとは、その特性をリフレーミングし、その力が生かせるような環境設定をすることが大切である。例えば「多動」という特性は、「活発」「元気がよい」という強みにリフレーミングすることができる。「多動=落ち着くよう促すべきもの」と捉えられがちだが、「活発」と言い替えることができれば、子どもたちの可能性を広げることができるだろう。
特性を正しく理解する、その特性をリフレーミングする、その力が生かせるような環境設定をする。この3つのステップを心がけてほしい。
監修:宮尾 益知(どんぐり発達クリニック)
作成:TEENS
イラスト:BONNOUM
掲載雑誌:『月刊 実践 みんなの特別支援教育』