心に寄り添ってくれる物語に触れてほしい。斉藤壮馬さんのおすすめの本【読書推せん文リレー第5回】
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そんなとっておきの一
・おすすめしたい本と、おすすめの理由を書いた推せん文をバトンにして、リレーをつないでいくよ。
・登場するのは学研キッズネットに所属する「探Qキッズ」3名と、いろいろな分野で活躍している著名人の3名。
・次のゲストに読んでほしい本の推せん文を書いてもらって、次のゲストには読んだ感想も聞いていくよ!
第 5回 ゲスト 斉藤壮馬 さん
声優として、「るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―」での緋村剣心役、「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」での哀絶役など、数多くのアニメ作品や映画で人気のキャラクターを演じているよ。2017年にはアーティストとしてデビュー。2022年には文芸誌『スピン』(河出書房新社)で、自身初となる小説『いさな』を発表するなど、幅広い分野で活躍中。
子 どもの頃 の母 の読 み聞 かせが、声優 を志 すきっかけのひとつに!
僕の両親も祖父母も、本が大好きな人たちでした。
実家は祖母のこだわりで、壁一面が本棚だったんです。純文学から詩集、哲学書から百科事典まで、ジャンル問わず様々な本が置いてあり、ごく自然に本を手に取って、わくわくとしながら読んでいました。
なかでも僕が好きでよく読んでいたのは図鑑や神話、民話系の本。
自分ではない誰かになれる、ここではないどこかへと連れて行ってくれる、今ではない別の時代が過ごせる。
そんなファンタジックな世界観が幼い頃から好きでした。それは、大人になった今でも変わりません。
母は教員の仕事をしていたのですが、夜寝る前によく物語の読み聞かせをしてくれました。
ワクワクしながら聞いているのですが、日中忙しく働いて疲れているせいか、物語が完結する前に母は夢の中へ……。
翌日に「物語の続きを聞かせてほしい」と言っても、どこまで読んだのか、母が覚えていないことも多くて。
物語の続きが気になりますし、「それならいっそのこと自分で読んでしまおう!」と。
そういう経験もあり、幼い頃から自分で本を読むという習慣が身につきました。
母は朗読がとても上手だったんです。 物語の世界観に入り込んで、登場人物に合わせて声色を変えたり、イントネーションをつけたりするのが非常に達者だったんですね 。
それに、振り返ってみると、 母の朗読の思い出が、自分が声優という仕事を志した、ひとつのきっかけになっているのかもしれません。
読 んでほしい!の想 いをつなげる推 せん文 リレー
読書推せん文とは、「あの人に好きな本を伝えたい!」という思いを込めた文章のこと。心に残った言葉や登場人物、共感するストーリーなどを書いて、好きな本を誰かに向けておすすめしてもらいます。今回は第4回目のゲスト岡本知紗さんから声優の斉藤壮馬さんへ、そして斉藤壮馬さんから山下俊樹さんへの推せん文を紹介します。
【岡本 知紗 さんからのおすすめ本 】色 をテーマにした物語 を読 んで、好 きな色 で自分 だけの物語 をつくってほしい!
前回ゲストの岡本知紗さんから、斉藤壮馬さんにおすすめしたい本を教えてもらいました。その魅力やおすすめする理由とは?
『クレヨン王国 の十二か月 』
福永令三 (文 )、椎名 優 (絵 )/講談社
主人公のユカと12の悪いクセを持つクレヨン王国の王妃が、家出をしてしまった王様を探しに行く不思議な冒険物語。12ヶ月を12の色になぞらえ、王妃の悪いクセを治していくストーリーです。個性的なキャラクターも必見!
知紗さんは、たくさん本を読んでいる斉藤さんに、「色々な物語がつまっている本を読んでみてほしい」とおすすめしてくれました。また、「斉藤さんは、好きな色でどんな物語や歌をつくりますか?」という質問も推せん文に書いてくれました
本が好きな人に楽しんでほしい、色とりどりのお話が詰まった一冊!岡本知紗さんのおすすめの本【読書推せん文リレー第4回】
子 どものときと大人 になった今 、同 じ作品 でも感 じ方 が変 わりました!
まず、知紗さんがお姉さんとお母さんといっしょに、どの本がいいかな?と話しながら選んでくれた、そのエピソードを聞いて、うれしい気持ちでいっぱいになりました。
そして、小学2年生の知紗さんが、本をしっかり読みこんで、こんなに素敵な推せん文を書けるというのにもびっくりしました。本当にありがとう。
僕が『クレヨン王国の十二か月』を初めて読んだのは、知紗さんと同じ小学生の頃。
知紗さんがおすすめしてくれたのをきっかけに、久しぶりに手に取り、楽しく懐かしく読みかえしました。
知紗さんが一番好きだと言っていた『ホントザクラ』のお話が、僕も大好きです。ほかにも知紗さんがどんな本を読んでいるのか、教えてほしくなりました。
この物語は、お話が進むにつれ、クレヨンが動きだしたり、月へ旅行に行ったりと、どんどんファンタジックな世界になっていくんですよね。
読んでいると、重力がないところで高くジャンプをしているような軽やかさを感じることができるんです。
そして、初めて読んだ小学生の頃と、大人になって読み返した今とで、受け取るイメージや感じる思いが違う気がしました。幼い頃の方がもっともっと軽やかに感じていた気がするなって。
作品の内容は同じですが、読んだときの年齢や心の状態によって、読み心地が変わってくる。これも、読書の楽しみの一つだと思います。
また、今回改めて読んで、この作品には、ハッとするような残こくな内容も散りばめられていたのだと気がつきました。
ただのキレイで美しい話ではない、それも魅力的なところだなと思います。
僕 の好 きな色 の物語 を知紗 さんへ贈 ります。知紗 さんの物語 もぜひ読 ませてほしい!
知紗さんからの推せん文で、「何色が好きでどんな物語をつくりますか?」という質問をもらって、小学校5年生のときにつくった物語を思い出しました。
その頃、学校で物語を書いてみようという授業があったんです。
僕は子どもの頃から灰色が好きでした。どこかあいまいなところが好きなんです。
そして、当時バスケットボールをやっていたので、それをテーマにした灰色の世界の物語をつくりました。
“主人公はバスケットボールをがんばる小学生の男の子。
そして、雪の日だけに現れる灰原雪という大人。
灰原さんは雪の日だけ、男の子にバスケットボールを教えます。
冬の終わりが近づいた頃に最後の試合があり、灰原さんは応援をしに会場に現れます。
男の子はその試合に勝つことができ、試合が終わった後に灰原さんを探すのですが、彼の姿はそこにはありません。
冬が終わり春になっても灰原さんは姿を見せず、もう二度と現れることはありませんでした”
という内容です。
担任の先生が面白いお話だねと言ってくれて、物語とのこういう関わり方もあるんだ!と思えた、とても印象的な授業でした。
知紗さんにはこの灰色の世界の物語をお届けします。
知紗さんが考えた、紫色の世界で忘れっぽいクセを治すお話もすてきですね! あらすじを聞いただけで心がワクワクしました。物語が完成したら、ぜひ僕にも読ませてくださいね!
【興味 の幅 をどんどん広 げている山下 さんへのおすすめ本 】
物語 を通 して当 たり前 にある小 さな幸 せに気 づいて大事 にしてほしい!
次のゲストは、小学6年生の山下俊樹さん。読書や電車に乗ることが大好きで、最近歴史にも興味が出てきたそう。今は苦手な縄跳びを一生懸命頑張っているよ。そして、夢は電車で日本一周をすること! 色々なことに興味が広がっている山下さんへのおすすめの本とは?
『妖怪アパートの幽雅な日常①』
香月日輪/講談社
両親を事故で亡くした主人公「稲葉夕士」が、高校入学と同時に始めた一人暮らし。そこは、妖怪たちが住む奇妙なアパートでした。ちょっぴり変わった住人との、ドタバタで心温まる生活がスタートします。
僕がこの小説に出会ったのは中学1年生の頃、山下さんと同じくらいの年齢の時でした。
思春期と環境の変化が重なり、寂しさやモヤモヤした感情を抱えていて、それをどう発散したり解消して良いのかわからず悩む日々を送っていました。
この本の主人公は、辛く苦しいできごとに直面しながらも、アパートに住む妖怪たちと出会い、さまざまな経験を通して心を通わせ、前向きに生きていきます。
僕はこの本を読んだときに、自分の凝り固まった心もほぐされていくような気持ちを覚えました。
山下さんは小学6年生。来年はいよいよ中学生ですね。
山下さんのプロフィールを見たときに、当時の自分と重なるところを感じました。
色々なことに興味が湧き、大人に一歩ずつ近づいている年齢だと思います。視野が一気に広くなるからこそ悩みも出てくるだろうし、環境の変化で心がざわつくことがあるかもしれません。実際、当時の僕はそうでした。
そして、不安定だった心を少しだけ安定させることができたことの一つが、間違いなくこの作品でした。
また、この本から、当たり前のことを大事に思う気持ちを教わりました。例えばこの本に出てくるお料理はどれもおいしそうなのですが、それは、作る人が精一杯の愛情を込めているからなんですね。
あたたかいご飯を食べられること、家族や学校だけでなく周りに人がいてくれること、孤独じゃないこと。
そういう小さな当たり前のことを大切に思って、素直にありがとうと言える人でいたいと僕は思いました。山下さんにもその思いが伝わったらすごくうれしいです。
そして、この物語に出てくる大人は、すごくかっこいいんです。
“人間はこうあるべき!”なんて型にはめるようなことは誰も言いません。
「あなたの人生なのだから、あなたが考えて選びなさい」という言葉も、自分に言ってもらえたような気がして、すごく励みになりました。
こんな大人になりたいと子どもの頃に憧れましたし、今でもそんな大人になりたいと思っています。
『妖怪アパートの幽雅な日常』は、山下さんが心にわだかまりを覚えた時に、寄り添ってくれる一冊だと思っています。
そして、この本を手に取った皆さんが、何かしらの気づきを得てくれますように。
「読書 推 せん文 」をもっと見 る!
読書推せん文コンクール公式サイトには、過去の入賞作品の中から、本と推せん文を検索できる「お気に入りの一冊ライブラリー」機能があります。
本のジャンルでの検索はもちろん、それ以外にもいろいろな方法で検索できます。例えば、「わくわく」「ほっこり」など推せん文に込められた【気持ちのタイプ】や、【すすめている相手】など。
楽しみながら本を探したり、推せん文を読んでみてくださいね!
第 4回 読書 推 せん文 コンクールの作品 を募集 中 !
読書推せん文コンクールでは、今年もみなさんからの作品を募集しています。みなさんは誰かにおすすめしたい本はありますか? 読んでみてほしい理由はなんですか? いつもと違う視点で本について考えてみると、もっと本を読むのが楽しくなるかも!
撮影/小川健 ヘアメイク/紀本静香 スタイリング/本田雄己 イラスト/かとうとおる 取材・文/末永陽子
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