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氷に塩をかけると、なぜ温度が下がるの?

氷に塩をかけると、なぜ温度が下がるの?

こたえ:物質(ぶっしつ)状態(じょうたい)固体(こたい)から液体(えきたい)()わるときと、固体(こたい)液体(えきたい)()けるときに、(まわ)りの(ねつ)をうばうからです。

(こおり)(しお)をかけると、2つの「()ける/()ける」現象(げんしょう)()こります。1つは、固体(こたい)(こおり)()けて液体(えきたい)(みず)になる現象(げんしょう)。もう1つは、固体(こたい)食塩(しょくえん)液体(えきたい)(みず)()ける現象(げんしょう)です。どちらも、物質(ぶっしつ)状態(じょうたい)()わるときに、(かなら)(ねつ)吸収(きゅうしゅう)したり放出(ほうしゅつ)したりします。

(こおり)()けるときは、(まわ)りの空気(くうき)などから(ねつ)吸収(きゅうしゅう)します。(もの)()やすときに(こおり)使(つか)うのは、この原理(げんり)利用(りよう)したものです。また、食塩(しょくえん)()けるときも、(おな)じく(まわ)りの(みず)から(ねつ)をうばいます*1。このように、物質(ぶっしつ)固体(こたい)から液体(えきたい)()わるのに必要(ひつよう)(ねつ)を「融解熱(ゆうかいねつ)」、固体(こたい)液体(えきたい)(なか)()けるのに必要(ひつよう)(ねつ)を「溶解熱(ようかいねつ)」とよびます。(こおり)()けて(みず)になるときに食塩(しょくえん)をかけると、(しょく)(えん)()けるための溶解熱(ようかいねつ)氷水(こおりみず)からうばうので、氷水(こおりみず)温度(おんど)がより(ひく)くなります。

(みず)(こおり)になる「凝固点(ぎょうこてん)」は0℃ですから、(こおり)(みず)()けるときは、どんなに温度(おんど)()がっても0℃以下(いか)になることはありません。ところが、(みず)食塩(しょくえん)()けると凝固点(ぎょうこてん)が0℃よりも(ひく)くなってしまいます。この現象(げんしょう)を「凝固点(ぎょうこてん)降下(こうか)」(氷点(ひょうてん)降下(こうか))といいます。(こおり)は、(みず)分子(ぶんし)規則(きそく)(ただ)しく(なら)んでいる状態(じょうたい)ですが、(みず)(なか)(べつ)物質(ぶっしつ)分子(ぶんし)()()んでくると(みず)分子(ぶんし)整列(せいれつ)しにくくなり、なかなか(こおり)になることができません。このため、食塩水(しょくえんすい)のままで0℃以下(いか)温度(おんど)()がっていくのです。

ここまでの内容(ないよう)簡単(かんたん)実験(じっけん)(たし)かめてみましょう1)用意(ようい)するのは、コップと(すこ)しの(みず)、それよりも(おお)(りょう)(こおり)食塩(しょくえん)温度計(おんどけい)です。まず、コップの(なか)(みず)(こおり)()れて、温度(おんど)(はか)ります。(こおり)(すこ)しずつ()けて(みず)から融解熱(ゆうかいねつ)吸収(きゅうしゅう)されるので、(みず)温度(おんど)()がっていくのが()かるでしょう。

(つぎ)に、食塩(しょくえん)をどんどん(くわ)えていきます。すると、食塩(しょくえん)溶解熱(ようかいねつ)吸収(きゅうしゅう)(くわ)わるので、氷水(こおりみず)温度(おんど)は0℃よりも()がっていくはずです。食塩(しょくえん)(りょう)()やして(こおり)(しお)割合(わりあい)を3:1くらいにすると、マイナス十数(じゅうすう)℃という冷凍庫(れいとうこ)(なか)のような(ひく)温度(おんど)をつくり()すことができます。

凝固点(ぎょうこてん)降下(こうか)は、身近(みぢか)なところでも利用(りよう)されています。たとえば、道路(どうろ)()った(ゆき)()かす「融雪剤(ゆうせつざい)」。(ふゆ)になると地面(じめん)(しろ)(こな)がまかれているのを()たことがあるかもしれません。あれは、食塩(しょくえん)塩化(えんか)ナトリウム)や塩化(えんか)マグネシウム、塩化(えんか)カルシウムをふくむ融雪剤(ゆうせつざい)です*2。それらの塩分(えんぶん)(ゆき)食塩水(しょくえんすい)をつくって凝固点(ぎょうこてん)()げ、(ゆき)()かしたり凍結(とうけつ)(ふせ)いだりしているのです。(みず)()けている(しお)(りょう)(おお)いほど凝固点(ぎょうこてん)()がり、それ以上(いじょう)(しお)()けない「飽和(ほうわ)食塩水(しょくえんすい)」は-21.3℃までこおりません2)塩化(えんか)マグネシウムの水溶液(すいようえき)は-33℃まで、塩化(えんか)カルシウムの水溶液(すいようえき)は-55℃まで、凝固点(ぎょうこてん)()がります3)

(しお)使(つか)えば、(あつ)いものを一気(いっき)()やせます4)。たとえば、ゆでたうどんをもみ(あら)いするとき(しお)をまぜた氷水(こおりみず)使(つか)うと、コシが()ます。だしなどを容器(ようき)ごと(いそ)いで()ましたいときにも使(つか)えるワザです。

ほかには、ジェラートづくりもできます。ボウルに(しお)をまぜた氷水(こおりみず)用意(ようい)し、ボウルより(ちい)さな(うつわ)にジュースなどこおらせたい液体(えきたい)()れます。あとは、その液体(えきたい)をかきまぜるだけ。(うつわ)外側(そとがわ)から(かた)まってくるので、それをこそげ()としながら全体(ぜんたい)をまぜていきます。ていねいにかきまぜることで、空気(くうき)をふくんでふんわりとしたジェラートができあがるそうです。

*1 (おな)(しお)仲間(なかま)でも、塩化(えんか)カルシウムなどは()けるときに(まわ)りへ(ねつ)放出(ほうしゅつ)します。

*2 (しお)をふくむ薬剤(やくざい)道路(どうろ)にまくと、自動車(じどうしゃ)付着(ふちゃく)してさびを発生(はっせい)させたり、(まわ)りの植物(しょくぶつ)をからしたりするおそれがあるため、(しお)をふくまない融雪剤(ゆうせつざい)もあります。

記事更新(きじこうしん):2023(ねん)8(がつ)

参考資料(さんこうしりょう)

1)伯方(はかた)塩業(えんぎょう)氷水(こおりみず)(しお)をいれて温度(おんど)をはかってみましょう!」『(しお)』:

https://www.hakatanoshio.co.jp/encyclopedia/experiment/e_03/e_03.html

2)塩百科(しおひゃっか)事業(じぎょう)センター「(しお)基本(きほん) 氷点(ひょうてん)降下(こうか)」『塩百科(しおひゃっか)』:
https://www.shiojigyo.com/siohyakka/about/data/freeze.html

3)長谷川(はせがわ)(たかし)国土交通省(こくどこうつうしょう) 北陸(ほくりく)地方(ちほう)整備(せいび)(きょく) 北陸(ほくりく)技術(ぎじゅつ)事務所(じむしょ))「凍結(とうけつ)防止剤(ぼうしざい)性能(せいのう)(など)()りまとめ調査(ちょうさ)について」:http://www.hrr.mlit.go.jp/library/happyoukai/h27/E/E18.pdf

4)前野(まえの)紀一(のりかず)/監修(かんしゅう)『ひんやり(こおり)(ほん) 』.2013(ねん).池田(いけだ)書店(しょてん)

監修者(かんしゅうしゃ)大山(おおやま)光晴(みつはる)

1957(ねん)東京都(とうきょうと)()まれ。東京(とうきょう)工業(こうぎょう)大学(だいがく)大学院(だいがくいん)修士(しゅうし)課程(かてい)修了(しゅうりょう)高等(こうとう)学校(がっこう)物理(ぶつり)教諭(きょうゆ)千葉県(ちばけん)教育(きょういく)委員会(いいんかい)指導(しどう)主事(しゅじ)千葉(ちば)県立(けんりつ)長生(ちょうせい)高等(こうとう)学校(がっこう)校長(こうちょう)(など)()て、現在(げんざい)秀明大学(しゅうめいだいがく)学校(がっこう)教師(きょうし)学部(がくぶ)教授(きょうじゅ)として「理数(りすう)探究(たんきゅう)」や「総合的(そうごうてき)学習(がくしゅう)時間(じかん)」の指導(しどう)方法(ほうほう)について講義(こうぎ)演習(えんしゅう)担当(たんとう)している。科学(かがく)実験(じっけん)教室(きょうしつ)やテレビの実験(じっけん)番組等(ばんぐみなど)への出演(しゅつえん)多数(たすう)千葉市(ちばし)科学館(かがくかん)プロジェクト・アドバイザー、日本(にほん)物理(ぶつり)教育(きょういく)学会(がっかい)常務(じょうむ)理事(りじ)日本(にほん)科学(かがく)教育(きょういく)学会(がっかい)(およ)日本(にほん)理科(りか)教育(きょういく)学会(がっかい)会員(かいいん)月刊(げっかん)理科(りか)教育(きょういく)編集(へんしゅう)委員(いいん)(など)(つと)める。

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