メニュー閉じる

何のためにあくびは出るの?

何のためにあくびは出るの?

こたえ:()()ましたりリフレッシュさせたりと、(のう)状態(じょうたい)()りかえるのに役立(やくだ)っています。

あなたのあくびを文字(もじ)にしたら、どんな表現(ひょうげん)になりますか?「あ~あ」「ふぁ~」「はーぁあ」…。多くの人が「ア(ぎょう)」の文字(もじ)音引(おんび)き(「~」「ー」)を使(つか)うのではないでしょうか。こうした表現(ひょうげん)でも()かるように、あくびは、(くち)(おお)きくあけながら、数秒(すうびょう)から10(びょう)ほどかけて(ふか)呼吸(こきゅう)する運動(うんどう)です。意図(いと)したわではないのに()るし、(かな)しくもないのに(なみだ)()てくる、ふしぎな現象(げんしょう)ですね(関連記事「なぜ、あくびをすると(なみだ)()るの?」、「なぜ、友だちのあくびは、なぜわたしにうつるの?」)。

あくびを()()こすのは、(のう)視床下部(ししょうかぶ)自律(じりつ)神経(しんけい)調節(ちょうせつ)などを担当(たんとう)する部位(ぶい))の(なか)にある「(しつ)(ぼう)(かく)」という場所(ばしょ)()指令(しれい)だと(かんが)えられています1)。そこから()(のう)のほかの部位(ぶい)にとどいた指令(しれい)は、(くち)(おお)きく(ひら)いたり(した)をおし()げたり、()()じたり、うでを()ばしたりといったさまざまな反応(はんのう)()こします。あくびは(からだ)のいろいろな部位(ぶい)(うご)きが()()わさった、複雑(ふくざつ)運動(うんどう)なのです。では、このように(からだ)(うご)くと、どんな効果(こうか)があるのでしょうか。

あくびが()やすいのは、まず(ねむ)いとき。ほかには、(あさ)目覚(めざ)めたときやつかれたとき、退屈(たいくつ)したとき、ものすごく緊張(きんちょう)しているときなど。ここからわかる効果(こうか)の1つは「覚醒(かくせい)」、つまり、()()ましたり意識(いしき)をはっきりさせたりすることです。研究者(けんきゅうしゃ)(あいだ)では、あくびの動作(どうさ)によって(のう)への血流(けつりゅう)()やしたり、(のう)(なか)血液(けつえき)新鮮(しんせん)なものに()()えたりする役割(やくわり)がある、という意見(いけん)支持(しじ)されています。たしかに、あくびをしながら手足(てあし)をぐぐっと()ばすと、全身(ぜんしん)がすっきりしますね。

それとは(ぎゃく)に、覚醒(かくせい)から睡眠(すいみん)変化(へんか)させるときにもあくびは()ますし、緊張(きんちょう)から開放(かいほう)されてリラックスする効果(こうか)もあるといわれています。あくびの役割(やくわり)についてはまだ解明(かいめい)されていないことが(おお)いのですが、睡眠(すいみん)から覚醒(かくせい)へ、覚醒(かくせい)から睡眠(すいみん)へ、緊張(きんちょう)からリラックスへ、と(のう)状態(じょうたい)変化(へんか)させるスイッチの役割(やくわり)()たしているようです

あくびの(おお)くは、その(ひと)意思(いし)とは関係(かんけい)なく()る「不随意(ふずいい)運動(うんどう)」ですが、(なか)には意図(いと)してあくびをする(ひと)もいます。たとえば将棋(しょうぎ)升田幸三(ますだこうぞう)名人(めいじん)(1918-1991)は、対局(たいきょく)大事(だいじ)な一()()(まえ)にあくびをすることで有名(ゆうめい)でした2)。これは、緊張(きんちょう)()いて(のう)をリフレッシュさせる、というあくびの効果(こうか)利用(りよう)した行動(こうどう)だそうです。みなさんも、頑張(がんば)りが必要(ひつよう)なとき、集中(しゅうちゅう)したいときには、あくびを利用(りよう)して気分(きぶん)()りかえてみませんか?

※ あくびの中には、体調が悪いときにひんぱんに出る「生あくび」あります。これは、体が危険にさらされているというサイン。脳の病気の前兆の場合もあるので、注意が必要です3)

記事公開:2022年12月

参考資料

1)北村昌陽『スゴイカラダ』2014年.日経BP

2)日本将棋連盟「正しい呼吸で将棋が強くなる? 集中力とヒラメキが身につくあいうべ体操とは」:https://www.shogi.or.jp/column/2017/06/health_de.html

3)菅原道仁「あくびはシグナル!?謎多き生理現象が教えてくれること」『眠りのレシピ』.西川.2020年3月2日:https://www.nishikawa1566.com/column/sleep/20200228160417/

監修者:大山光晴

1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。

PAGETOP