なぜ、寒い日は息が白くなるの?
こたえ:
冬の朝、「はーっ」とはいた息が白くなるのを見ると「今日も寒いな」と感じますね。ふだん話しているときは見えないのに、寒い日に息が白く見えるのは、なぜでしょうか。
そのしくみは、雲ができるのと似ています(関連記事「雲は何からどのようにできるの?」)。息にふくまれる水蒸気(気体)が周りの空気に冷やされて水てき(液体)になり、白く見えるのです。
もう少しくわしく見てみましょう。まず、わたしたちの体は常に水分を入れかえていて、尿や便だけでなく、皮膚やはく息(呼気)でも水分を体の外に出します。呼気の場合、1日に約400mLの水分を水蒸気として排出しています1)。
呼気の温度は、体温に近い35~37℃。それに対して、冬の気温は10℃以下になることもめずらしくありません。そのため、呼気は周りの空気によって急激に温度が下げられることになります。
空気がふくむことのできる水蒸気の量は空気の温度によって変わり、温度が低ければその量は減ります※。温度が下がって呼気がふくみきれなくなった水蒸気は、水てきに変わります(凝結)。
ただし、水蒸気が凝結するには、何かにくっつかなければなりません。それは、「エアロゾル」とよばれる小さなちりやほこり。空気中をただようエアロゾルの周りに水蒸気の小さなつぶがいくつもぶつかることで、水てきがつくられます。この水てきが集まったものが、白く見えるわけです。
※1 1m3の空気がふくむことのできる水蒸気の量を「飽和水蒸気量」といいます。
地球上には、とても寒いのに呼気が白くならない場所があります。その場所とは、南極。理由は「空気がきれいだから」です。
上で、水蒸気が凝結して水てきになるにはエアロゾルが必要と書きました。では、このエアロゾルの正体は何かというと、風がまきあげた土ぼこりや、火山活動で出た火山ガス、海にふくまれる塩の結晶、植物の花粉、工場や自動車から出る排ガスなどです2)。氷におおわれ、人間の活動が少ない南極では、土ぼこりや花粉、排ガスが元になったエアロゾルも少ないはずですね。
日本の都市の大気には、1cm3当たり数万個以上のエアロゾルがただよっているといわれます。一方、南極にある昭和基地の周辺で観測したエアロゾルの量は、その1000分の1から100分の13)。水蒸気が凝結するのに必要なエアロゾルが少ないため、呼気が白くなりにくいそうです。
参考 資料
1)サントリー「水の科学 出ていく水ととりこむ水」『水大辞典』:https://www.suntory.co.jp/eco/teigen/jiten/science/10/
2)岩槻秀明『最新 気象学のキホンがよ~くわかる本[第3版]』.2017年.秀和システム
3)国立局地研究所「第47次隊の記録 大気エアロゾル観測」『昭和基地NOW!!』.2006年5月7日:https://www.nipr.ac.jp/jare-backnumber/now/back47/20060507.html
監修者 :大山 光晴
1957