イヌの鼻はなぜ、ぬれているの?
こたえ:においを
イヌの鼻をさわると、ぬれて「ひやっ」と冷たく感じることがあります。わたしたちヒトの鼻はかわいていますから、ふしぎに感じますね。「鼻水かな」と心配になる人もいるかもしれません。
イヌの鼻をぬらしているのは、もちろん、鼻水ではありません。水分の正体は、涙と、鼻のおくの方でつくられる分泌液です1)。「涙腺」とよばれる器官でつくられた涙が鼻へと流れ、「外側鼻腺」から出てくる分泌液と混ざります。それが、鼻の表面の溝「鼻鏡」にたまっているのです。
では、鼻がぬれていると、どんな良いことがあるのでしょうか。鼻ぬれていることの利点は、大きく分けて2つです2)。
まず1つ目は、においを確実にキャッチできること。よく知られているように、イヌは“鼻のよい”動物です。イヌの種類やにおいの種類などによって異なりますが、「嗅覚」(においの感覚)は、ヒトの1億倍ともいわれています。
このすぐれた嗅覚を実現する仕組みの1つが、鼻鏡です。鼻鏡にたくわえられた水分が空中にただよっているにおいの分子を吸着すると、感度が高まるのです(関連記事「どうしてイヌの鼻はいいの」)。水分が足りなくなると、とらえられるにおいの分子が少なくなって感度が下がるため、「ぺろり」と自分の鼻をなめて、だ液で水分をおぎなうこともあります※1。
2つ目の利点は、体温調節。鼻鏡から水分が蒸発するときの気化熱を利用して、よぶんな熱を外に出し、体温を下げています※2。
「イヌの鼻がぬれているのは、元気なしょうこ」とか、「イヌの鼻がかわいていたら、病気かもしれない」と聞いたことがあるかもしれません。毎日、愛犬の鼻をさわって健康かどうかをチェックしている、という人もいるでしょう。じっさい、体調が悪いときは鼻がかわいたり、ひびわれができたりする場合があるため、鼻がぬれているかどうかは、イヌの健康状態を知る目安になります3)。
ただし、健康なイヌでも、寝ているときやはげしい運動の後などには、体温が上がって鼻がかわくこともありますし、年をとったイヌは鼻がかわきやすくなります。イヌを飼っている人は、鼻がぬれているか、だけではなく、鼻のまわりの皮ふの状態はどうか、出血はないか、痛がっていないかなど、よく観察して健康状態をチェックしてあげましょう。
※1 イヌが鼻をなめるのには、水分をおぎなうほか、鼻を清潔にたもつ、自分の気持ちを落ち着かせる、といった意味もあります。
※2 鼻だけではなく、舌からも放熱しています。
参考 資料
1)「犬の鼻がいつも濡れている理由とは?乾いているときの注意点まで」『わんちゃんホンポ』.ピーネストジャパン:https://wanchan.jp/living/detail/6238
2)「なぜ犬の鼻は濡れているのか」『the WOOF』.WOOFOO:https://woofoo.jp/editors_desk/why-do-dogs-have-wet-noses/
3)「【獣医監修】犬の鼻は湿っている方が健康というのは本当か」『いぬのきもち WEB MAGAZINE』.ベネッセコーポレーション:https://dog.benesse.ne.jp/withdog/content/?id=32692
監修者 :大山 光晴
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