こたえ:約40億年前に深海で生まれたと考えられています。
わたしたちヒトはチンパンジーなどの類人猿と同じ祖先から進化したと考えられています(関連記事「人間はいつ、サルから分かれたの?」)。もっと昔までさかのぼると、500万~3000万種ともいわれる地球上の生き物すべてが1つの祖先にたどりつきます。これが、地球で最初の生き物です。
この「最初の生き物」は、約38億年前に海で生まれたとされていました。けれども、2017年に東京大学などの研究グループは、「約40億年前には生命がいたのではないか」という研究成果を発表しました1)。最初の生き物が生まれた年代は、今後の研究でさらに変わるかもしれません。
いずれにしても、最初の生き物は1つの細胞からできた「単細胞生物」でした。それが10億年以上の時間をかけて少しずつ進化し、やがて「多細胞生物」があらわれます2)。さらに約5億4000年前「カンブリア紀」になり、今いる動物の祖先となる動物も誕生しました。
残念ながら、最初の生き物がどのように生まれ、どのような姿で、どのように暮らしていたのかは分かっていません。というのも、最初の生き物は化石が残っていないのです。そこで、遺伝子の解析や海底の土の分析などから生き物の起源にせまろうと、たくさんの研究者が調査や実験、分析に取り組んでいます。
たとえば日本の海洋研究開発機構は、6500mの深さまでもぐれる船「しんかい6500」を使った調査や、さまざまな実験をくり返しました。2015年の発表によると、研究の結果「地球の生命は、地球の有機物を使って、深海の熱水噴出孔(地下のマグマで温められて高温になった海水がふき出す場所)のまわりで生まれた」という説が確認できたそうです3)。
さて、最初の生き物の材料になった有機物。もしかしたら、地球にあったものだけではなく、宇宙からやって来たものもふくまれていたかもしれません。隕石が海に落ちたことが最初の生き物の誕生にどうかかわったか、などのテーマでも研究が進んでいます。隕石がきっかけになって、わたしたちの祖先が生まれた…と想像すると、宇宙が身近に感じられますね。
生命の起源についての疑問は、古くから人々をなやませてきました。宇宙探査や地球深部の研究のような科学が発展する以前は、その答えとして、世界中で神話が生まれました。鳥のたまごから世界が生まれた、神が海底のどろから人間をつくり出したなど、さまざまな物語が伝わっています。
古代ギリシャの哲学者たちも、この問題に取り組みました。アリストテレス(紀元前384-322年)は、生物が親からではなく“無生物”(生き物以外)から発生することもある、という「自然発生説」を提唱しました。それによると、ミツバチやホタルは草の露から、ウナギやエビは海底のどろから生まれることもあるそうです。
それらが正しくないことをわたしたちは知っていますが、1860年代にルイ・パスツール(Louis Pasteur、1822-1895年)の実験によって完全に否定されるまで、自然発生説は長く信じられていました4)。
記事公開:2022年1月
参考資料
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。