蚊はなぜ人の血を吸うの?
こたえ:メスが、
「なんだかかゆいなと思ったら、知らないうちに刺されていた!」「バチンと退治しようとしても逃げられて、イライラする!」「ブ~ンという羽音を聞いただけでも、なんだかかゆくなってくる…」——蚊は、人にとってなかなかやっかいな存在ですね。いったいなぜ、蚊は人の血を吸うのでしょうか。
まず、日本には約100種類の蚊がいますが、そのうち動物の血を吸うのは、アカイエカやヒトスジシマカなどの約20種類です1)。そして、それらの蚊も、ふだんから人などの動物の血を吸っているわけではありません。血を吸うのは、卵を産む前のメスだけです※。オスやふだんのメスの主食は、花のみつや草の汁2)。蚊は、その糖分を栄養源にして生活しています。けれども、メスが卵を産むには、主食にはあまりふくまれない、たんぱく質などの栄養が必要です3)。そこでメスの蚊は、交尾後に動物の血を吸って、たんぱく質などを体内に取り入れるのです。
蚊がいちどに吸える血の量は、自分の体重と同じくらい。つまり、血を吸った後の蚊は体重が2倍になりますから、飛ぶのがおそくなってつかまえやすくなるでしょう。とはいえ、わたしたちが困るのは、刺されてかゆくなることですから、刺される前になんとかしたいですよね。蚊に刺されないためには、どうすればよいのでしょうか。
蚊は、人が吐き出す二酸化炭素や汗のにおい、体温を感知して、人を見つけます。周りとはっきり区別できる黒っぽい色に寄ってくる傾向もあるそうです。ですから、虫よけ剤を使うほか、汗をかいたらこまめに拭いてにおいを抑える、外出するときは白色やベージュなどの淡い色の服を選ぶ、袖の長い服を着る、といった対策が有効だといわれています。
最近は、足の常在菌(人の体に日常的に存在している微生物)に注目した研究が話題になりました3)。この研究では、さまざまな実験から、蚊に刺されやすい人は足の常在菌の種類が多いことや、蚊には好きな菌とそうでもない菌があり、刺されやすい人には蚊が好む常在菌が多いことなどが分かりました。たとえ蚊が好きな菌が多くても、アルコールで足を拭けば蚊に刺されにくくなります4)。石けんで洗ったり、くつしたをはき替えたりするのも効果があるそうです。
参考 資料
1)フマキラー『「蚊」対策 豆知識①蚊の種類・生態を知る』:https://fumakilla.jp/column/ka/1/
2)大日本除虫菊「蚊 生体と種類を知る」『ウルトラがいちゅう大百科』:https://www.kincho.co.jp/gaichu/seitai/ka.html
3)フマキラー『「蚊」対策 豆知識⑤蚊に刺されないための虫よけ対策』:https://fumakilla.jp/column/ka/5/
4)田上大喜「蚊が何故人間の血を吸いたくなるのかを、ヒトスジシマカの雌の交尾数で検証する」『第11回「科学の芽」賞 応募作品』:https://www.tsukuba.ac.jp/community/students-kagakunome/shyo_list/2016/hgs2.pdf
5)NHK『人類最強の敵! 「蚊」」撃退大作戦!』〔ガッテン!〕:https://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20160831/index.html
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監修者 :大山 光晴
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