こたえ:40億年前、酸性の海が陸地のナトリウムを溶かしたからです。
海の水がしょっぱいのは、食塩の主な成分である塩化ナトリウムが溶けているから。これは、ほとんどの人が知っていることでしょう。では、塩化ナトリウムが海水に溶けている理由は分かりますか? 海の塩は一体、どこからやって来たのでしょうか。
その答えは、地球が生まれた約46億年前までさかのぼります1)。できたての地球には直径が数km~10kmほどの「微惑星」が次々としょうとつし、表面はどろどろのマグマにおおわれていました。微惑星の中には水素や水蒸気、二酸化炭素、窒素、塩素ガス、塩酸、硫黄などのガスがとじこめられていて、そのガスが上空に少しずつたまることで、やがて地球には大気がつくられます2)。
その後、数百万年をかけて地球の表面の温度が100℃くらいまで冷えてくると、大気中の水蒸気は大量の雨となって降り注ぎ、地球の表面にたまります。これが、海のはじまり。このとき降った雨には大気中の塩素ガスが溶けこんでいたので、海水は酸性でした。その海水が、先に冷えて固まっていた岩石にふくまれるナトリウムを溶かして結びつき、塩化ナトリウムができたというわけです。
今、わたしたちが住む地球の海の塩分濃度は約3.4%ですが、海域や深さによってばらつきがあります(関連記事「海水の塩の濃さは?」)。ところが、海水中の塩分の組成(ふくまれる成分の比率)は、ほとんど変わりません。そのことが分かったのは19世紀の後半。イギリスの軍艦「チャレンジャー」が世界各地で海水を採取し、それをエジンバラ大学のディットマー教授が分析しました。その結果、海水の濃度は海域ごとに異なる一方で、塩分の組成は一定であると分かったのです(「ディットマーの原理」)。海水中の塩化ナトリウムの割合は77.9%。そのほかには、豆腐を固める「にがり」の成分である塩化マグネシウムが9.6%、硫酸マグネシウムが6.1%、硫酸カルシウムが4.0%、塩化カリウムが2.1%ふくまれています3)。
記事公開:2022年3月
参考資料
1)田近英一/監修『地学大辞典』.2021年.ニュートンプレス
2)藤岡換太郎『海はどうしてできたのか 壮大なスケールの地球進化史』.2013年.講談社
3)たばこと塩の博物館「世界の塩・日本の塩 世界の塩資源(海水の成分、世界の塩資源の分布)」『たばこと塩あれこれ』:https://www.tabashio.jp/collection/salt/s4/index.html
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。