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山の上は太陽に近いのに、なぜ寒いの?

山の上は太陽に近いのに、なぜ寒いの?

こたえ:(たか)場所(ばしょ)ほど気圧(きあつ)(ひく)くなるからです。

地球(ちきゅう)平均(へいきん)気温(きおん)(やく)14℃1)一方(いっぽう)宇宙(うちゅう)温度(おんど)は-170℃ほどです。(つめ)たい宇宙(うちゅう)空間(くうかん)()かぶ地球(ちきゅう)(あたた)かいのは、(おも)に、太陽(たいよう)からエネルギーをもらっているおかげです。そのため、太陽(たいよう)(ちか)(やま)(うえ)が、ふもとより(さむ)いのは、不思議(ふしぎ)(おも)えるかもしれません。

けれども、日本(にほん)でもっとも(たか)富士(ふじ)(さん)頂上(ちょうじょう)でも、標高(ひょうこう)(やく)3776m。地球(ちきゅう)太陽(たいよう)距離(きょり)(やく)1(おく)5000(まん)kmですから、(やく)4km(ちか)づいたところで(おお)きなちがいにはなりません。つまり、(やま)(うえ)(さむ)いのは、太陽(たいよう)との距離(きょり)とは関係(かんけい)がないのです。

では、(やま)(たか)場所(ばしょ)ほど(さむ)くなるのは、なぜでしょうか。それは、圧力(あつりょく)気圧(きあつ))が()がるからです。

地球(ちきゅう)(まわ)りは空気(くうき)大気(たいき))におおわれていますが、上空(じょうくう)()くほど、それより(うえ)存在(そんざい)する空気(くうき)(りょう)(すく)ないため、気圧(きあつ)(ひく)くなります(関連(かんれん)記事(きじ)(やま)(のぼ)るとどうして空気(くうき)がうすくなるの?」)。空気(くうき)には、圧力(あつりょく)()がると温度(おんど)低下(ていか)する性質(せいしつ)があるので、地球(ちきゅう)全体(ぜんたい)()ると標高(ひょうこう)(たか)場所(ばしょ)ほど気温(きおん)(ひく)くなるというわけです。一般(いっぱん)に、標高(ひょうこう)が100m()がるにつれて気温(きおん)は0.6℃()がる、とされています※1

ここで、太陽(たいよう)のエネルギーによって空気(くうき)温度(おんど)がどう変化(へんか)するか、()いかけてみましょう。

太陽(たいよう)から地球(ちきゅう)へやってきたエネルギーのうち(やく)30%は反射(はんしゃ)され、(のこ)りの(やく)70%が地表(ちひょう)へたどり()きます2)地表(ちひょう)まで(とど)いたエネルギーを吸収(きゅうしゅう)すると、その場所(ばしょ)地面(じめん)(あたた)まり、さらに地面(じめん)(せっ)している空気(くうき)温度(おんど)()がります。(あたた)められた空気(くうき)膨張(ぼうちょう)して比重(ひじゅう)(ちい)さくなるので、上昇(じょうしょう)していきます。上昇(じょうしょう)するにつれ気圧(きあつ)(ひく)くなるため、こんどは空気(くうき)体積(たいせき)(おお)きくなり、温度(おんど)()がるのです。

※1 ただし、この法則(ほうそく)標高(ひょうこう)(やく)10kmまでの「対流圏(たいりゅうけん)」でしか()()ちません。それより(たか)い「成層圏(せいそうけん)」には、太陽(たいよう)(ひかり)直接(ちょくせつ)吸収(きゅうしゅう)してエネルギーを()ている「オゾン(そう)」があるため、(ひく)場所(ばしょ)より温度(おんど)上昇(じょうしょう)することもあります。

※2 地球(ちきゅう)表面(ひょうめん)状態(じょうたい)はさまざまで、太陽(たいよう)のエネルギーを反射(はんしゃ)する割合(わりあい)(アルベド)も場所(ばしょ)季節(きせつ)によって()わります。たとえば、太陽(たいよう)高度(こうど)(たか)いときの海面(かいめん)は8~10%、草地(くさち)は15~25%、砂漠(さばく)は20~45%が宇宙(うちゅう)反射(はんしゃ)されます。雪氷(せっぴょう)(いき)でも、(あたら)しい(ゆき)()もったときは75~90%、湿(しめ)った(ゆき)()もっているときは40~60%と変化(へんか)します。

空気(くうき)圧力(あつりょく)()がると温度(おんど)低下(ていか)するのは、お菓子(かし)(ふくろ)(れい)(かんが)えると()かりやすいでしょう。袋入(ふくろい)りのお菓子(かし)()って(やま)(のぼ)ると、頂上(ちょうじょう)では(ふくろ)がぱんぱんにふくらみます。このように、空気(くうき)上昇(じょうしょう)して気圧(きあつ)(ひく)(ところ)(うご)くと、空気(くうき)膨張(ぼうちょう)します。膨張(ぼうちょう)するということは、空気(くうき)()っていたエネルギーを使(つか)った結果(けっか)なので、()などで空気(くうき)(あたた)めるしかけがない(かぎ)り、空気(くうき)温度(おんど)()がってしまうのです。

記事(きじ)公開(こうかい):2022(ねん)1(がつ)

参考(さんこう)資料(しりょう)

1)環境省(かんきょうしょう)温室(おんしつ)効果(こうか)のメカニズム」:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/stop2008/06-07.pdf

2)日本財団(にっぽんざいだん)図書館(としょかん)「アルベドの季節(きせつ)変化(へんか)」:
https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1999/00862/contents/029.htm

監修者(かんしゅうしゃ)大山(おおやま)光晴(みつはる)

1957(ねん)東京都(とうきょうと)()まれ。東京(とうきょう)工業(こうぎょう)大学(だいがく)大学院(だいがくいん)修士(しゅうし)課程(かてい)修了(しゅうりょう)高等(こうとう)学校(がっこう)物理(ぶつり)教諭(きょうゆ)千葉県(ちばけん)教育(きょういく)委員会(いいんかい)指導(しどう)主事(しゅじ)千葉(ちば)県立(けんりつ)長生(ちょうせい)高等(こうとう)学校(がっこう)校長(こうちょう)(など)()て、現在(げんざい)秀明大学(しゅうめいだいがく)学校(がっこう)教師(きょうし)学部(がくぶ)教授(きょうじゅ)として「理数(りすう)探究(たんきゅう)」や「総合的(そうごうてき)学習(がくしゅう)時間(じかん)」の指導(しどう)方法(ほうほう)について講義(こうぎ)演習(えんしゅう)担当(たんとう)している。科学(かがく)実験(じっけん)教室(きょうしつ)やテレビの実験(じっけん)番組等(ばんぐみとう)への出演(しゅつえん)多数(たすう)千葉市(ちばし)科学館(かがくかん)プロジェクト・アドバイザー、日本(にほん)物理(ぶつり)教育(きょういく)学会(がっかい)常務(じょうむ)理事(りじ)日本(にほん)科学(かがく)教育(きょういく)学会(がっかい)(およ)日本(にほん)理科(りか)教育(きょういく)学会(がっかい)会員(かいいん)月刊(げっかん)理科(りか)教育(きょういく)編集(へんしゅう)委員(いいん)(など)(つと)める。

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