雪はどうして降るの?
こたえ:
雪は、雨と同じように雲の中で生まれて、地上へ降ってきます。つまり、雪も雨も、その“もと”となるものは雲の中にあるということです。雪は、どのように生まれるのでしょうか。そして、雪と雨は何がちがうのでしょうか。
雲は、「雲つぶ」とよばれる水てきや、「氷晶」とよばれる氷のつぶがたくさん集まってできています(関連記事「雲は何からどうやってできるの」)。それらは同時に、雪や雨の“もと”でもあります。雲つぶや氷晶が大きく成長して重くなり、やがて地上へ落ちてくるのです1)。その過程を追いかけてみましょう。
まず、雲つぶは、はじめ半径が約0.001~0.01mm(1μ~10μm、人間の髪の太さの5分の1程度)しかありません。雲のできる場所では上空へとのぼる空気の流れ「上昇気流」が起きているため、小さくて軽い雲つぶは上昇気流に乗ってのぼっていきます。やがて、気温が-40℃以下となる地上1万m(10km)ほどの高さまで達した雲つぶは、こおって「氷晶」をつくります※。
氷晶は周りの水蒸気を取り込みながら大きくなり、上昇気流に逆らって落下できるくらいの大きになると、今度は雲の中を落ちながら周りの雲つぶとぶつかります。ぶつかった雲つぶは、その瞬間に氷晶の表面でこおり、さらに周りの雲つぶを合体させながら成長していきます(関連記事「どうして雪の結晶は6角形になるの」)。こうしてできた雪の結晶は、回転して落下しながら成長を続けて、地面へと落ちてきます。
せっかく大きく成長した雪の結晶ですが、落ちるとちゅうの気温は雲の浮かぶ上空よりも高いので、たいていは溶けて雨つぶになってしまいます。日本付近で降る雨のほとんどが、このように氷のつぶや雪が落ちてくる間に溶けたものです。地面に近い場所の気温が雪がとけないくらい低いときだけ、氷のつぶは雪となって降ってくるのです(関連記事「雪はどうして冬にしかふらないの」)。日本海側では地上の気温が2~3℃以下、太平洋側では1~2℃以下で雪が降るといわれます2)。
ただし、雪か雨かを決めるのは地上付近の気温だけではなく、じっさい、気温が10℃前後でも雪が降ったという記録があります。雪か雨かを決める条件の1つは、雪が降ってくるとちゅうの湿度(相対湿度)です3)。とちゅうの湿度が低いと、降ってくる雪が溶けてできた水が蒸発しやすくなります。この水が蒸発するときに、その周りの空気を冷やしてしまうため、後から降ってくる雪のつぶが溶けないままで地表に到達しやすくなるというわけです。
雪と似たものに、ひょうやあられがあります。どちらも雪の結晶が雲の中を落下しながら成長を続けてできた氷のつぶで、気象観測では、直径5mm以上のものを「ひょう」、直径5mm未満のものを「あられ」とよびます4)。ひょうは気温の高い夏から秋にかけて、あられは気温の下がる冬に見られます5)。
ひょうやあられは、積乱雲の中で上昇と下降をくり返すうちに表面が溶けたりこおったりしながら大きくなっていきます(関連記事『「ひょう」はどんなふうに降ってくるの?』)。ある程度の大きさになると、落ちる速度が速いため上昇気流では上へ運べなくなって、氷のつぶのまま降ってきます。直径50mmのひょうになると時速100km以上の速度で落ちてくるので、注意が必要です。
※ 通常、水は0℃でこおりますが、雲の中では0℃より低い気温の中でも水の状態で雲つぶが存在しています。このような水てきを「過冷却雲粒」と呼びます。過冷却雲粒は、-20℃の雲の中でも観測されます。
参考 資料
1)荒木健太郎(気象庁気象研究所 第二研究室).「雲の微物理過程の研究」:
https://www.mri-jma.go.jp/Dep/typ/araki/cloud_microphysics.html
2)松尾敬世.「雪と雨をわけるもの」.日本気象学会:
https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2001/2001_01_0033.pdf
3)武田喬男.『気象ブックス015 雨の科学』.2005年.山堂書店
4)ウェザーニューズ「霰と雹その違いと危険性」『ウェザーニュース』:
https://weathernews.jp/s/topics/202004/160165/
5)菊地勝弘『気象ブックス028 雪と雷の世界』.2009年.成山堂書店
監修者 :大山 光晴
1957