朝起きたら、まずカーテンを開けて「いい天気だな」「曇ってるな」と空模様を確認する人も多いのではないでしょうか。ニュースの天気予報では「晴れのち曇り」「曇り一時雨」などという、もう少しくわしそうな表現もされますね。ほかにも、雨について「降水確率○%」や、気温について「平年よりも暑い」などといった表現も耳にします。でも例えば、どこまでが「晴れ」でどこからが「曇り」?「一時雨」っていつ、どのくらいの時間で雨が降るの?といった質問に、みなさんは答えられますか? ここでは、なんとなくわかるけど、実はちょっとあいまいになりがちな、天気予報でよく使われる言葉の正しい意味について説明します。
空の半分が雲。これは晴れ? 曇り?
青空がのぞいていれば晴れ、雲がたくさん出ていれば曇りというのは頭でわかるのですが、空の大部分が雲で覆われていて、青空がちらっとのぞいているのは晴れでしょうか、曇りでしょうか。空の半分が雲で覆われているときは、どちらでしょうか。
気象庁では、空全体に対する雲の量の割合から天気を区別しています。空全体のうち雲がおおっている割合(雲量)が0~8割のときが「晴れ」、9~10割のときが「曇り」です。雲が空全体の8割をおおっていても「晴れ」なのは不思議に感じるかもしれませんが、曇りは本当に空が雲だらけのときだけなのです。
これまで気象庁では晴れか曇りかを、職員が目で見て判断する「目視観測」で行ってきました。しかし、観測技術の発展に伴い、職員の目視観測は機械での観測に置き換わられつつあります。今では目視観測が行われているのは全国でも東京と大阪の2か所だけです。それまでは、雲量が0~1割のときは「快晴」と発表していましたが、快晴は目視でないと判別が難しいので、「晴れ」に含まれることになりました。同様に、雲量9以上で巻雲・巻層雲・巻積雲(関連記事「雲の種類っていくつあるの?」)が多い場合は「薄曇」と発表されていましたが、こちらも目視でないと判別が難しいので、「曇り」に含まれることになりました。
ポツポツ雨や、霧雨はノーカウント?
気象情報では「50mmの非常に激しい雨」などという言葉が使われます。例えば、この50mmというのは、降った雨が地面から50mmの深さにまでたまることを意味しています。といってもピンとこないと思うのですが、だいたい1mm以上の雨であれば、傘が必要になるくらいの雨だと覚えておくとよいでしょう。1mm以上の雨が降る場合に天気予報では雨マークが表示されます。
ただし、雨マークが表示されていないときも雨が降ることがあります。それは1mm未満の雨が降るときです。1mm未満の雨というのは、たとえば、ポツポツと降る雨や、霧雨のような雨などが当てはまります。「曇りマークなのに、降ってるよ!」というときは、1mm未満の雨が降っているのかもしれません。長時間、外に出ているときは、こんな雨でも濡れてしまいます。もし、どんよりとした重い曇り空のときは念のためレインコートを着たり、折り畳み傘を持ち歩いたりすると安心です。なお、天気予報アプリによっては1mm未満の雨が降るときに閉じた傘のマークで表示していることもあります。雨の強さと降り方については、気象庁ホームページに次のような表でまとめられています。
降水確率と、雨の強さや範囲は関係ない
降水確率というのは雨や雪の降りやすさを確率で表したものです。たとえば「降水確率40%」は、過去に同じような気圧配置やその他の気象条件が10回現れたときに、雨が4回降った、という意味です。なお、この降水確率の数字は、10%のときより80%のほうが大雨になるとか、広い範囲で降るとかいう意味ではありません。あくまで「雨の降りやすさ」の数字であり、量や範囲を示すわけではないので、降水確率10%でも夕立のように強く降ることもあります。
例えば「東京地方で正午から午後6時までに雨の降る確率が40%」という予報は、東京地方のなかでは正午から午後6時までの間に、どこの地点でも同じ40%の確率で1mm以上の雨や雪が降る可能性があるということです。
「のち」と「一時」と「ときどき」のちがいは?
天気予報で、同じように感じる言葉の「のち」「ときとぎ」「一時」ですが、少しずつ意味が違います。
「曇りのち晴れ」の「のち」は、予報されている期間(例えば翌日の0時から24時まで)の前半が曇り、後半が晴れとなる場合に使います。
「曇り一時雨」「曇りときどき雨」」は、どちらも雨が降ったり止んだりするときに使います。ただ、雨が降る合計時間などが違います。
「曇り一時雨」の場合は、雨が連続的に降り続いている時間が24時間のうち1/4(6時間)より短いときに使います。
「曇りときどき雨」の場合、雨の時間と雨の時間の間に、雨が止んでいる時間(約1時間以上)をはさむような断続的な降り方をして、雨が降っている時間の合計が24時間のうち1/2(12時間)より短いときに使うのです。
「ときどき晴れ」や「一時曇り」でも同じ条件で、晴れたり曇ったりしているか、その天気の状態がどれくらいの時間続いているかで決まります。
さて、「ところにより雨」という言葉もよく耳にしますよね。こちらは、予報発表区域の半分より狭い範囲で雨が降ることを表します。たとえば東京地方の場合、八王子市だけ夕立に見舞われるなど、狭い範囲で雨が降る場合は「ところにより」を使うのです。
風速は10分間の平均値
自然の風というのは、扇風機からの風のように常に同じ強さで吹いているわけではなく、フーッフーッと息を吐くように強くなったり弱くなったりします。ですから、風速をはかるとき、気象庁では10分間の平均値を出して発表しています。そして、瞬間風速は3秒間の平均値です。瞬間風速は風速の1.5~3倍程度になることがあります。風の強さと吹き方については、気象庁ホームページに次のような表でまとめられています。
「平年」と「異常気象」のポイントは「30年」
「平年よりも気温が高い」などという言葉を気象情報でよく聞きますよね。「平年」の値は、過去30年間の観測値の平均から計算しており、気温のほかにも降水量や積雪深などさまざまなものに使われます。平年値は10年ごとに更新されることになっていて、現在の平年値は1991年~2020年までの30年間の観測値の平均です。最近では2021年に更新されましたが、近年の地球温暖化の影響からか、更新前の平年値よりも平均気温の値が高くなる傾向にありました。次の更新は2031年ですが、平年値がどのように変わるのか気になるところです。
異常気象とは、一般的には過去に経験した現象から大きく外れた気象の現象のことをいいます。気象庁は、原則として「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」を異常気象としています。異常気象の原因は、偏西風の蛇行やエルニーニョ現象など、さまざまなものがありますが、多くは昔から地球が繰り返してきた営みによるものです。ただし、近年では地球温暖化も異常気象を招く原因のひとつだと考えられています。