5月3日は憲法記念日です。憲法は日本だけでなく世界各国にありますが、じつはその内容は国によってさまざまです。なかには、びっくりするような内容も!? どうやら日本の憲法が「当たり前」というわけでもないようです。ここでは、日本と世界の憲法の違いや、そもそも憲法とはどんなもので、同じようにルールを決めた「法律」とはどう違うのかも紹介します。これを機に、憲法に注目してみませんか?
憲法って何?
憲法とは、国民の権利と自由を守るために、国がやってはいけないこと、国がやるべきことについて、国民が定めた、その国でもっとも力の強い決まり(最高法規)です。
現在の日本国憲法は、第二次世界大戦に敗れ、アメリカを中心とした連合国軍の占領下において、それまでの大日本帝国憲法が改正されてできたものです。1947年5月3日に施行されたことから、毎年5月3日が憲法記念日と定められています。
日本国憲法の「三原則」とは?
法律との違いは?
みなさんに身近なルールに「法律」がありますね。同じルールでも、憲法と法律はどう違うのでしょうか。
法律は、社会生活を送る上で、みなさんが守らなければいけないルールです。もし法律を守らなければ、罰金を支払ったり、刑務所に入ったりしなければいけません。その一方で、憲法は、国家権力がみなさんたち国民の権利や自由を奪うことのないように、国が守らなければならないルールです。
つまり、「誰が」守らなければならないルールかの違いということになります。
日本の憲法が「常識」ではない?
憲法は世界各国で定められていて、それぞれの国によって内容も違います。日本では当たり前だと思っていることも、世界から見ると珍しいということもあります。ここで、日本の憲法と世界の憲法を比べてみましょう。
宗教を信じてもいい?信じなくてもいい?
日本国憲法には「信教の自由」(第20条1項)が定められています。つまり、どんな宗教を信じてもいいし、信じなくてもいいというものです。日本のほかにも、中国や韓国、アメリカなども同じように憲法に定められていますが、これは世界で見ると当たり前ではありません。
多くの国ではイスラム教やローマ・カトリックなど、国民に信仰させるために法律などで認めたり保護したりする宗教を「国教」として憲法で定めているのです。
もちろん信教の自由が認められている国でも、人を殺したり、信者の財産を取り上げたりするような社会秩序を乱す宗教は認められていません。
選挙に行かないと罰がある?ない?
日本では憲法に「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」(第15条3項)とあり、18歳以上になると選挙権が与えられます。しかし「特に票を入れたい政党がない」「投票にいくのは面倒くさい」ということで選挙に行かない人も多く、投票率は低い水準です。2021年の衆議院議員選挙の投票率は55.93%で、地方自治体の選挙では40%台も珍しくない状況です。
世界を見渡してみると、投票を「義務」として憲法や法律で定めている国がたくさんあります。たとえばたとえばアルゼンチン、ウルグアイ、ギリシャ、ベルギー、オーストラリア、シンガポール、フィジーなどが該当します。これらの国々では、選挙に行かないと罰金などのペナルティが課されます。ベルギーやオーストラリアでは投票率が90%にのぼることもあり、日本の低い投票率とは対照的です。
税金がある?ない?
日本国憲法では「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」(第30条)と定められています。しかし、世界には税金のない国があります。たとえばボルネオ島の北西部にあるブルネイ王国では、天然ガスなどのエネルギー資源が豊富で、個人の所得税や消費税はなく、医療費や教育費も無料です。ヨーロッパの小さな国も税金のない国がいくつかみられます。南ヨーロッパにあるモナコ公国は、海外から富豪の定住者を増やすため、所得税や住民税、相続税がありません。スイスとオーストリアの間にあるリヒテンシュタインにも個人が納める税金がありません。
そもそも憲法がある?ない?
日本には日本国憲法があるので、憲法というのは、どの国にも必ずあるものだと思いがちです。しかし、世界には憲法のない国がたくさんあります。ただし、国の決まりがないというわけではなく、憲法の内容を文書の形で示した「憲法典」がなかったり、憲法にかわる別のものを決まりにしていたりします。
たとえば、イギリスでは憲法典がなく、6つの制定法(議会の手続きを経て定められた法)と憲法習律(国王や大臣などの公権力の担い手が守るべき規律)、判例法(裁判所の判決の積み重ねでできた法)、学説(著名な憲法学者の学問的見解)から「憲法」を構成しています。またサウジアラビアは、イスラム教の聖典を憲法として定めています。ほかにも、リビアやイスラエル、ニュージーランド、サンマリノ、オマーン、バチカンなどは憲法がありません。
世界のビックリ憲法
世界の憲法には、日本ではちょっと思いつかないような、変わった内容のものが盛り込まれていることがあります。その国の事情を反映しているようですが、いくつか紹介します。
家畜は国が守る?(モンゴル)
1992年に制定されたモンゴルの憲法には「家畜は、国の富であり、国の保護の下におかれる」(第5条5項)とあります。移住しながら牧畜を行う遊牧民の国ならではの内容です。そして、移動する家畜が困らないように、牧草地は国のもので、個人の私有化はできません。
子どもは計画的に産んでね?(中国)
中国の憲法には「夫婦双方は、計画出産を実行する義務を有する」(第49条)と定められています。憲法で国民の家族計画にまで踏み込んでいるのは、2023年にインドに抜かれるまでは世界でもっとも人口が多かった国ならではです。2015年までは「夫婦1組につき子どもは1人」という「一人っ子政策」もとっていました。
生きている人の肖像画はNG?(ハイチ)
カリブ海の島国であるハイチの憲法には「生存している個人の肖像および名前を、通貨、切手、印象、公的建造物、街路または芸術作品に表現してはならない」(第7条)と定められています。生きている人の人格を、きわめて良いものだと尊敬させるようなこと(個人崇拝)を禁止しています。ハイチでは1957~1986年にデュバリエ親子による独裁政権が続いたため、その歴史を繰り返さないように盛り込まれたものです。この憲法は独裁政権が倒れた直後の1987年に制定されました。
ガムが禁止!? 世界のオモシロ法律
また世界には「どうしてそれがダメなの!?」と首をひねってしまいそうな面白い法律もあります。もしその国を訪れたときに、日本の常識で行動するとうっかり法律に違反してしまうかもしれないので、要注意ですね。
ガムは持ち込みも違法(シンガポール)
眠気覚ましのために、かんでいたら大変なことに? シンガポールでは、ガムの製造、販売が禁止されています。日本から持ち込むのも禁止です。もし違反すると多額の罰金を取られる可能性もあります。この法律が制定されたのは、電車のドアにガムが大量に付けられて開かなくなったことが原因だそうです。
庭の水まきは日時指定?(オーストラリア)
オーストラリアでは水が不足しがちなため、庭に水まきしていい曜日や時間が限られています。それを守らないと罰金を支払わなければいけません。日本では夏の暑さを和らげるため、国や自治体が打ち水を勧めていますが、それも水が豊かな国だからこそなのでしょう。
イヌも税金を払うべし(オランダ)
税金のない国があれば、思いもよらないものに税金がかかる国もあります。オランダでは、イヌに税金がかかります。もちろん飼い主が払います。イヌの税金は、自治体による道路のイヌのフン掃除に使われます。ただ、自治体によって税金の金額が違ううえ、イヌ税のない自治体もあり、廃止する自治体が増えているようです。
世界の憲法や法律を見比べてみると、国によって常識が違い、日本の個性も見えてきます。予想もつかない内容の憲法や法律は世界にまだまだあるはずなので、憲法記念日を機会に、各国の憲法や法律にもぜひ注目してみてください。
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